JF-17戦闘機は輸出用の機材。中国は同機の改良を行ってきた。そのJF-17に米F-16のDNAが入っているとはどういう意味か。
JF-17「サンダー」多任務戦闘機は中国の輸出用機材の成功例だ。最初から輸出想定で開発され、供用までの道は決して平坦ではなかったがし、開発期間は数十年に及び米国もその途中で関与している。設計面ではMiG-21とF-16ファイティングファルコンを融合させた。最新型JF-17では性能をさらに上げている。だがJF-17誕生に米国がどう関与したのか。古い設計の機体が十分に通用するのだろうか。
JF-17はパキスタン空軍が運用する成都航空機(CAC)製J-7戦闘機のアップグレード構想から生まれた。パキスタンはソ連に対抗するアフガニスタンのムジャヒディン支援で中継役を務めていた。米国はパキスタンへの防衛協力に前向きだったが、ソ連の次世代軽量戦闘機MiG-29配備を見たパキスタンは対抗可能な機種を求めてきた。
ここから生まれたプロジェクトセイバーIIでJ-7近代化改修をCACとグラマンが共同実施した。セイバーIIはJ-7の機体延長、空気取り入れ口の変更を主にした。ただしセイバーIIでは米戦闘機はおろかMiG-29の水準にも到達できず、セイバーIIは打ち切りとなった。
だがこの3国は1980年代末にと「スーパー7」事業を立ち上げた。今回は翼幅を延長し、F-16に近くしたほか、以前の空力学的改良も採用した。グラマンは1989年に天安門事件を理由に事業から抜け、事業はその後10年を中国とパキスタンの交渉を横目に薄氷を踏む展開となった。1992年には事業採算の事前評価が行われ、結果が良好だったため開発合意書が締結された。
1998年、中国とパキスタンはスーパー7事業を再開した。費用はパキスタン政府とCACの折半とし、機体名称はJF-17に変更された。グラマンが抜け、新しいエンジンが必要だった。ロシアのミコヤン設計局から解決策としてクリモフRD-93エンジンが提示された。これはMiG-33用のエンジンだったが同機開発は中止となっていた。
もうひとつ革新的な技術が開発中に加わった。境界層隔壁なしの超音速空気取入口(DSI)で、その後改良を加え現行のJF-17に採用されている。試作一号機が2003年に初飛行した。2006年には機体は完成度を高め量産に入ろうとしていた。
パキスタン向け第一陣はブロックIと呼ばれ、ブロックIIのJF-17は改良が加わり、複合素材で軽量化した他、空中給油機能、フライ・バイ・ワイヤの全面的採用し、レーダーも変更した。中国からRD-93の代わりに自国開発のWS-13の提示があったが、パキスタンはロシア製エンジンに固執した。
ブロックIIIで中国はAESAレーダー搭載をめざし、エイビオニクスや兵装互換性も改良したいとする。標準型JF-17ではMIL-STD-1760標準のデータバスが一部で使え、西側や東側兵装と互換性がある。ただし、JF-17の弱みは搭載機関砲で、MiG-21以来の銃身二本のGSh-23のままだ。同機関砲は他機種の兵装より劣る。ただし、近代戦での機関砲の使用頻度を考えると、さしたる問題ではないかもしれない。
JF-17最大の利点は価格だ。わずか15百万ドルという基本価格にかなう機体は中古機材も含め存在しない。ブロックIIもほぼ同額で、ミャンマーは単価16百万ドルで導入している。貧乏国でもこれだけの低価格で比較的新型の機材を入手できる。その価格で本当に戦闘に対応できるかは未実証だが、パキスタンは同機の性能に満足しているようだ。中国は旧世代の格安戦闘機MiG-21を改良してF-16の設計要素を盛り込むことで現代の要望にあう機体を完成させたのである。■
Charlie Gao studied political and computer science at Grinnell College and is a frequent commentator on defense and national-security issues. This first appeared in 2020 and is being reposted due to reader interest.
Image: Reuters
この記事は以下を再構成したものです。
Why China's Jf-17 Fighter Has American F-16 "DNA"
A complicated history.
by Charlie Gao
March 26, 2020 Topic: History Region: Asia Blog Brand: The Buzz Tags: ChinaAir ForceMilitaryTechnologyJetFighterJF-17Pakistan
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