スキップしてメイン コンテンツに移動

戦闘機像に大きな転機がやってくる:忠実なるウィングマンの導入時期を決めたACC

ローバー次官補提唱のiPhone方式の計画的陳腐化が一番実現しやすいのが無人機の分野でしょう。F-35のように40年供用を前提としたビジネスモデルではとても対応できません。いよいよ有人戦闘機が終焉を迎えるのか、スカイボーグが急発展するのか、それとも筆者が支持する大型戦闘航空機の登場につながるのか、2020年代は大きな転換点になりそうです。

aircraft
F-16ブロック25/30の後継機が低コスト消耗品扱いの無人機になる可能性がある。その例がクレイトスXQ-58ヴァルキリーだ。Credit: Kratos

空軍は最先端技術に明るい民間専門家を招き、パイロットや隊員向けに技術革新の最新知識を普及させている。だが2月28日の航空戦シンポジウム会場にやってきたイーロン・マスクには別の考えがあった
スペースX、テスラを立ち上げてきた本人が空軍協会の会場に到着すると空軍の戦術航空戦力の中心とされてきた戦闘機に対し、「ジェット戦闘機の時代は終わった」と述べ、聴衆を挑発した。進行役のジョン・トンプソン中将は即座に話題を切り替えた。
その後、マスクはAviation Weekにツイッターで返答し、真意は戦闘機は今後も残るが、パイロットが搭乗する必要はないと言いたかったのだとした。「競争相手は無人戦闘航空機で、人員で遠隔操縦されても、自律運航能力で操縦性が補強できる」。
マスクの航空戦力に関する意見は多少加減して聞くべきだろう。本人の企業群は宇宙空間への進出、自動車産業、鉱物採掘にあたっている。マスク自身に航空業界での経歴はない。
空軍上位関係者にはマスクと異なる見解がある。ウィル・ローパー空軍次官補(調達、技術、兵站)は将来の空軍力に自律運航機材を多数配備し、有人機を補完させるべきと主張している。航空戦闘軍団(ACC)司令のジェイムズ・ホームズ大将は無人戦闘機材の編入を2025年から27年とはじめて日程表で示した。
当面は旧式化進むF-15C/DをボーイングF-15EXやロッキード・マーティンF-35Aで更改することに空軍は集中する。一方で空軍研究本部(AFRL)は低価格「消耗品」扱いの新型機材で実験を開始した。
第一弾がクレイトスXQ-58Aヴァルキリーで、2019年3月に初飛行した。空軍はXQ-58Aまたは類似機材に人工知能の「頭脳」を搭載し、いわゆる「スカイボーグ」として飛行させる予定で、飛行を重ねるたびに機体制御を学習させる。こうした機能はマスクの描く将来機材と近いが、直ちにF-15Cの代替になるには技術が早熟なためF-15EX導入の決定に至った。
ホームズ大将は次段階の機材が5ないし8年で登場すると述べる。この年数はXQ-58Aやスカイボーグのような機材の技術成熟期間と一致する。空軍はF-16ブロック25、30数百機の更新が必要となる。
「新型機として低コストかつ忠実に行動するウィングマンとして従来と全く異なる機材が登場する」(ホームズ大将)  
ホームズ大将はローパー次官補と2月に会見し、導入可能な価格かつ高性能機を3から5年間隔で小ロットで連続生産する方法づくりを打ち合わせた。空軍は広大な太平洋地区を念頭に基本要求性能(航続距離やペイロード等)の明確化に取り組んでいる。 
「戦闘機開発に応用してきた計算式はヨーロッパ環境ならまだ有効だ」とホームズは述べる。「だが太平洋では機能しない。距離感が違いすぎる。そのためNGAD他新規企画では、従来の戦闘機形態と異なる機材が出てくるはずだ」
航空戦シンポジウムの展示コーナーにヒントがあった。従来型機材のF-35やF-15に混じり新規コンセプトが展示されていた。ジェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズ(GA-ASI)は「ディフェンダー」を公開し、プレデターCアヴェンジャーの改良型として空対空ミサイル、赤外線探査追尾センサーを搭載する。ディフェンダーの任務は支援機材の給油機や偵察機を敵から守ることで、爆撃機や戦闘機に敵地侵攻させることと同社は説明。 

aircraft
GA-ASIが提案するディフェンダーは空中給油機護衛用のジェット推進、ミサイル搭載の無人機。Credit: U.S. Air Force
クレイトスはXQ-58に引き続きとりくんでいる。AFRLは当初テストフライト用に5機分の予算を計上し、三回目の飛行で墜落したものの、テスト目標は三回目飛行で全数達成したと同社は述べている。AFRLはXQ-58の「任務遂行機材化」を加速中で、ペイロード増加で搭載兵装の強化を目指す。まず4月にF-35とF-22間の通信中継機能を実証する。
クレイトスはXQ-58の12機製造を開始しており、2021年第一四半期にラインオフする。各機は政府各機関の予算で各種実証に投入されるという。
XQ-58によりまったく新規の機種、「忠実なるウィングマン」が米国に生まれ、ヨーロッパでは「遠隔キャリア」となる。XQ-58やボーイングの空軍力チーム化システムAirpower Teaming System (ATS) で重要となるのが航続距離だ。両機種は無給油で3千カイリとF-35の約3倍の距離を飛べる。ATSと異なりXQ-58では着陸用の滑走路は不要で、パラシュートで回収する。
ACCが求めてきた次世代戦闘機の姿から見れば両機種は注目に足りない存在になるが、方法論そのものが変わりつつあるとホームズ大将は述べている。
「航空戦闘軍団は戦闘機ロードマップを作ってきた。30年後の戦闘機はどうあるべきか、と言った具合だ」「だが今は性能ロードマップで従来は戦闘機でこなしてきたミッションをどう実現するかを考えている」
空軍資材軍団(AFMC)も戦闘機の調達方法を抜本的に変えようとし、昨年10月に高性能機材事業実施室Advanced Aircraft Program Executive Officeを立ち上げた。次世代戦闘機の調達手順を再定義するのが目的だ。現代の戦闘機では開発に10年以上をかけ、数十年を要する事例もある。だが次世代戦闘機で空軍が望むのは数機種の少数生産で、開発サイクルも5年未満に抑えることだ。
配備期間も最小に抑える。供用期間が短く退役するからだ。この方法だと実施企業も開発段階で十分な利益を実現できる。現状では開発期間は赤字で配備中に利益を確保するのが通常だ。このため供用期間が短いと利益も十分出ない。
空軍はこの調達での契約形式を検討中とAFMC司令アーノルド・バンチ大将が述べている。
「業界はこの方式にどう対応するか検討中だ。各社経営陣がこの話題を口にしているが対応は各社別だ」とバンチ大将は言う。「各社が検討するのは、費用試算の方式であり、財務計画や、議会へどうはたらきかけるか だろう」■
この記事は以下から再構成しています。

U.S. Air Force Plots Fleet Insertion Path For ‘Loyal Wingman’

Steve Trimble Lee Hudson March 06, 2020

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...