Pentagon Eyes Consortium To Spur Rotorcraft
aviationweek.com Dec 3, 2009
1. 米国の回転翼機メーカーが非難の表に立たされている。ペンタゴンからの要求に対し、部分的改良や再製作で対応する一方、十分利益が上がる契約を維持してきたため。ペンタゴンは各メーカーには新技術を迅速に実用化する能力がないと見ている。
2. 逆にメーカーの立場から見ると国防総省からの研究開発予算の不足で、現行機種の生産が終了する2018年から2020年以降も実用に耐える次世代回転翼機の設計能力が低下すると警鐘を鳴らしてきており、同省からの指弾にも動じるところはない。
3. ところがイラク、アフガニスタンでの作戦でヘリコプターへの依存度が高まったことで状況は変化し、苛酷環境下で現行機種に性能、安全性および生存性の問題が浮上した。ペンタゴンの最大の懸念はヘリの事故率で2001年10月から2008年12月の間に327機を損失し、このうち80%以上が戦闘行動とは無関係の損失。
4. そこで国防総省は各メーカーに対し、学術機関および技術的に革新的な新興企業とともに、垂直離着陸機開発のコンソーシアムを創設し、現行機の性能を大幅に上回る新技術を迅速に開発し、次世代機の基礎の確保を求める。メーカー側はこの構想には賛同するものの技術開発予算の増額が実現するかは半信半疑だ。
5. 「この業界は国防総省の調達方針により形成されてきたものだ。今作ろうとしているのはいままでとはちがう方向性でこれまでにない機体をつくろうというもの。コンソーシアム向け契約で議論を進めたい」(トニー・メリタ 国防総省地上戦・武器弾薬部長兼将来型垂直離着陸機計画主任)
6. 「現状は決して誇れるものではない。何かこれまでとは違う努力が必要で今回のコンソーシアムが出てきた。これで現状あるいは将来の問題を全部解決はできないが、意見交換や業界に新しい視野を与え、低リスクで研究開発ができるようになる」(メリタ)
7. 10月26日付けのアシュトン・カーター(調達担当国防次官補)のメモにより、この開発計画は議会から2010年7月を期限を与えられた垂直離着陸機の技術評価の一部となる。目標は技術ロードマップの作成であり、詳細な内容の科学技術(S&T)投資および実行案の作成も含まれ、次世代の各軍共用回転翼機開発の戦略計画が出てくるだろう。
8. 「手始めにこのコンソーシアムで今後10年15年25年の技術および生産のあるべき姿を意見を集約して想定し、そこに到達するための計画を練ることになる。その後、資金とくに基礎技術の実現に必要な投資をいかに集めるかを議論することになるでしょう」(メリタ)
9. このコンソーシアムではこれまでとは異なるサプライヤーの参加が必須で、国防総省とは「その他取引契約」(OTA)により仕事をすることで迅速かつ柔軟な研究開発が可能となる。OTAでは業界側に三分の一の費用負担が必要となるが、新規企業が実作業の大半を実施する場合はこの負担は免除となる。これにより主契約企業が小規模だが技術革新力のある企業とチームを組むことを促進できる。
10. コンソーシアムでは2025年以降の次世代機向けの技術を準備することに主眼が置かれる。その時点までにはAH-64, OH-58 ,UH-60 nの各基本設計は50年以上前のものとなっており、CH-47については70年前の設計となる。
11. かなり先の話のように聞こえるが、現行機種の耐用年数を延長するか新型機種の開発の決定はずっと前に決断する必要があり、S&T予算が2012年度から17年度に必要となる。
12. メリタがコンソーシアム形式を好むのはすでに同じ方式が弾薬およびロボット業界で成功しているため。2002年に弾薬開発コンソーシアムがペンタゴンにより形成されており、生産施設の閉鎖により基礎技術力が衰退していたのに歯止めをかけた経緯がある。地上用ロボットのコンソーシアムは2008年に創設され、異業種メーカーが多く参加している。これによりペンタゴンに新しい解決手段ができた。
13. この考え方をメリタは回転翼機産業に応用しようとしている。1990年代以降に立ち上がったヘリコプター開発計画が全部で10あり、そのうち5つで予算上限を突破し、3つは途中で頓挫している。1980年代から開始の新型機開発は2つのみで、RAH-88コマンチは24年経過して中止となり、 MV-22オスプレイは概念設計から部隊投入まで27年間を要した。
14. 一方でペンタゴンの回転翼機向けS&T予算はわずか110百万ドル(2009年度)と言うのが実情でそのうち75%が陸軍予算からの支出。国防予算の削減でこれ以上の予算を計上できる見込みはない。
15. カーター・メモでは2010年8月が垂直離着陸機計画で民間産業との連携、戦略計画、S&T投資戦略また2012年から17年度予算サイクルに合わせた財源確保の提案の締め切りとなっている。
16. 戦略の中には政府高レベルの委員会を創設し、垂直離着陸機開発全体を管理する構想があり、民間企業代表者も組み入れる。この委員会はOTA契約成立後に立ち上げるが、まず「要求内容を明示し業界のインプットを順次取り入れる」(メリタ)としている。
17. OTA契約の締結は2010年1月15日の予定で、その直後にメリタが退官する。短期間の通知にもかかわらず86団体の後援のもと業界からコンソーシアム結成の趣意書がペンタゴンに納付されている。
18. 同コンソーシアムの事務局には回転翼機メーカーのすべてが加わっており、アグスタウェストランドおよびEADSの在米法人も含む。
aviationweek.com Dec 3, 2009
1. 米国の回転翼機メーカーが非難の表に立たされている。ペンタゴンからの要求に対し、部分的改良や再製作で対応する一方、十分利益が上がる契約を維持してきたため。ペンタゴンは各メーカーには新技術を迅速に実用化する能力がないと見ている。
2. 逆にメーカーの立場から見ると国防総省からの研究開発予算の不足で、現行機種の生産が終了する2018年から2020年以降も実用に耐える次世代回転翼機の設計能力が低下すると警鐘を鳴らしてきており、同省からの指弾にも動じるところはない。
3. ところがイラク、アフガニスタンでの作戦でヘリコプターへの依存度が高まったことで状況は変化し、苛酷環境下で現行機種に性能、安全性および生存性の問題が浮上した。ペンタゴンの最大の懸念はヘリの事故率で2001年10月から2008年12月の間に327機を損失し、このうち80%以上が戦闘行動とは無関係の損失。
4. そこで国防総省は各メーカーに対し、学術機関および技術的に革新的な新興企業とともに、垂直離着陸機開発のコンソーシアムを創設し、現行機の性能を大幅に上回る新技術を迅速に開発し、次世代機の基礎の確保を求める。メーカー側はこの構想には賛同するものの技術開発予算の増額が実現するかは半信半疑だ。
5. 「この業界は国防総省の調達方針により形成されてきたものだ。今作ろうとしているのはいままでとはちがう方向性でこれまでにない機体をつくろうというもの。コンソーシアム向け契約で議論を進めたい」(トニー・メリタ 国防総省地上戦・武器弾薬部長兼将来型垂直離着陸機計画主任)
6. 「現状は決して誇れるものではない。何かこれまでとは違う努力が必要で今回のコンソーシアムが出てきた。これで現状あるいは将来の問題を全部解決はできないが、意見交換や業界に新しい視野を与え、低リスクで研究開発ができるようになる」(メリタ)
7. 10月26日付けのアシュトン・カーター(調達担当国防次官補)のメモにより、この開発計画は議会から2010年7月を期限を与えられた垂直離着陸機の技術評価の一部となる。目標は技術ロードマップの作成であり、詳細な内容の科学技術(S&T)投資および実行案の作成も含まれ、次世代の各軍共用回転翼機開発の戦略計画が出てくるだろう。
8. 「手始めにこのコンソーシアムで今後10年15年25年の技術および生産のあるべき姿を意見を集約して想定し、そこに到達するための計画を練ることになる。その後、資金とくに基礎技術の実現に必要な投資をいかに集めるかを議論することになるでしょう」(メリタ)
9. このコンソーシアムではこれまでとは異なるサプライヤーの参加が必須で、国防総省とは「その他取引契約」(OTA)により仕事をすることで迅速かつ柔軟な研究開発が可能となる。OTAでは業界側に三分の一の費用負担が必要となるが、新規企業が実作業の大半を実施する場合はこの負担は免除となる。これにより主契約企業が小規模だが技術革新力のある企業とチームを組むことを促進できる。
10. コンソーシアムでは2025年以降の次世代機向けの技術を準備することに主眼が置かれる。その時点までにはAH-64, OH-58 ,UH-60 nの各基本設計は50年以上前のものとなっており、CH-47については70年前の設計となる。
11. かなり先の話のように聞こえるが、現行機種の耐用年数を延長するか新型機種の開発の決定はずっと前に決断する必要があり、S&T予算が2012年度から17年度に必要となる。
12. メリタがコンソーシアム形式を好むのはすでに同じ方式が弾薬およびロボット業界で成功しているため。2002年に弾薬開発コンソーシアムがペンタゴンにより形成されており、生産施設の閉鎖により基礎技術力が衰退していたのに歯止めをかけた経緯がある。地上用ロボットのコンソーシアムは2008年に創設され、異業種メーカーが多く参加している。これによりペンタゴンに新しい解決手段ができた。
13. この考え方をメリタは回転翼機産業に応用しようとしている。1990年代以降に立ち上がったヘリコプター開発計画が全部で10あり、そのうち5つで予算上限を突破し、3つは途中で頓挫している。1980年代から開始の新型機開発は2つのみで、RAH-88コマンチは24年経過して中止となり、 MV-22オスプレイは概念設計から部隊投入まで27年間を要した。
14. 一方でペンタゴンの回転翼機向けS&T予算はわずか110百万ドル(2009年度)と言うのが実情でそのうち75%が陸軍予算からの支出。国防予算の削減でこれ以上の予算を計上できる見込みはない。
15. カーター・メモでは2010年8月が垂直離着陸機計画で民間産業との連携、戦略計画、S&T投資戦略また2012年から17年度予算サイクルに合わせた財源確保の提案の締め切りとなっている。
16. 戦略の中には政府高レベルの委員会を創設し、垂直離着陸機開発全体を管理する構想があり、民間企業代表者も組み入れる。この委員会はOTA契約成立後に立ち上げるが、まず「要求内容を明示し業界のインプットを順次取り入れる」(メリタ)としている。
17. OTA契約の締結は2010年1月15日の予定で、その直後にメリタが退官する。短期間の通知にもかかわらず86団体の後援のもと業界からコンソーシアム結成の趣意書がペンタゴンに納付されている。
18. 同コンソーシアムの事務局には回転翼機メーカーのすべてが加わっており、アグスタウェストランドおよびEADSの在米法人も含む。
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