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☆ 今年の軍事航空はこうなる 注目すべき機体・動向をご紹介



今年注目すべきトピックスを以下紹介しています。今年だけでは完結しない話題もあるようですが。F-35が本当に実戦化になるのかが一番の注目ですね。大穴として次世代長距離打撃爆撃機の構想が水面下で進んでいることでしょうか。アメリカでは予算をめぐりコンセンサスが出来ず、ロシア経済が後退し、中国も怪しい中で軍事航空も減速が避けられない感じです。日本の防衛予算はその意味では難易度が低いようですね。

J-10B, F-35 Nearing In-Service Debuts

With a handful of fighters nearing operations, F-35 is still the one to beat
Jan 6, 2015 Amy Butler | Aviation Week & Space Technology


ロッキード・マーティンF-35は2015年も戦闘機分野の中心だが、今年は大きな転換点を迎える予定だ。中国、ロシアでもそれぞれ新型機の実戦化が近づいており、米国だけに依存したくない諸国には選択肢となるだろう。

【F-35B】 一番の注目は米海兵隊のF-35Bで初期作戦能力(IOC)獲得がいつになるかで、2001年から始まった開発もやっと実戦部隊が編成されるところまできた。通常型のF-35Aを選択する向きが多い中でF-35Bが先導する形になり、有償海外軍事援助(FMS)の対象にもなろう。
 FMSの利用国はF-35がスムーズに実戦化するか見ているはずで、とくに信頼性、運用上の問題の有無、予備部品含むロジスティクスに注目するだろう。その成果いかんでF-35全体が評価されそうだ。なお、B型はすでに英国が導入を決めており、イタリアも少数機を調達するとみられる。

【F-35A】 米空軍もルーク空軍基地(アリゾナ州)で各国向け訓練体制の整備を進めている。また自国のF-35Aはヒル空軍基地(ユタ州)でIOCを獲得する予定だ。またイスラエル、オーストラリア、英国でそれぞれ配備先の検討に入っている。これまで開発が遅れ、予算も十億ドル単位で超過してきた同機だがようやく世界規模で足場を固める段階に入ったことを意味する。
 しかし当初の協力国のうち二か国がまだ正式に調達の意思を示していない。カナダとデンマークでこのうち後者は来年に機種選定を発表する見込みだ。もし、デンマークがF-35不採用とすれば協力国で初めて開発に投じた費用の弁済を求めることになる。反対に採用すれば各国向けの発注機数が増えることとなり、ロッキード・マーティンや開発室が想定する2019年時点でのF-35Aの単価85百万ドル(エンジン含む)の実現に近づく。


 海外の協力国、購入国は一様にF-35の「国際まとめ買い」“international block buy” を進める格好だ。定率初期生産の第11から13ロット分で購入意思を明示した場合にどこまで価格割引が可能か開発室からは今夏にもロッキード・マーティンに企画提案を求める予定だ。各ロット50機を想定し、合計150機になる。これは各国に早期導入を促して生産を安定化させ、なるべく早期に機体価格を引き下げることをねらうものだ。
 この提案が実現するかがF-35の野心的ともいえる価格引き下げの可否を握る。半分近くの年間営業収入は海外各国が支払うもので、海外顧客の意向次第で価格水準が高止まりとなれば今後にも悪影響が出てくる。
 各国としては今年のロイヤルインターナショナルエアタトゥー(7月)に同機が出展されるのか気になるところだ。昨年は直前に発生したプラット&ホイットニーF135エンジン火災により出展を取り消している。完成済み機体では解決策を実施中で、想定外の摩擦が第三段ローターで発生しないよう改良しているが、生産段階での解決策はまだ完成していない。

【イタリア・日本...】 イタリアは米国以外では初の最終組み立て点検施設を完成させたが、カメリ施設から一号機が今春にもラインアウトする見込みだ。日本も名古屋に類似施設を準備中だ。日本は2015年末に電子装備組み立てシステムを稼働させる。日本向けF-35Aの五号機から名古屋工場からロールオフするのは2016年の予定。さらに航空自衛隊への納入開始は2018年春を想定している。なお、日本には有償海外軍事援助制度が適用されるのはイスラエル、韓国と同様である。
 これとは別に機体、エンジンの重点検個所に選択された各国でも弾みがついてきた。2014年末にペンタゴンからヨーロッパ向け機体の点検修理オーバーホールならびに改修 (MRO&U)はイタリアとトルコで行うと発表があった。オランダとノルウェーはエンジン施設を2021年に立ち上げる。日本とオーストラリアはそれぞれ重点検施設を2018年までに完成し、太平洋の南北で業務を分担する。その中でオーストラリア施設が先行し、日本はそれから5年以内にエンジン施設を稼働させる。
 米海兵隊の予定ではF-35Bのうちまず10機を対象に7月1日にIOC宣言をするとしているが、年末以前には可能性は少ない。この対象機は2B仕様となる。海兵隊の最初の機材は岩国海兵隊飛行基地に2017年に配備される。開発室長クリストファー・ボグデン中将によれば改修はうまくいくのだが、いわゆるミッションデータのロードのためIOC宣言が当初の7月1日より後になりそうだという。
 ミッションデータのファイルはF-35の高性能エイビオニクスが多様な条件で作動するため必要となる。例として地域により異なる脅威の識別に必要だという。
 ICOを正式に宣言すれば、次はF-35BによるUSSワスプ艦上での運用テストが始まる。海軍のF-35Cでは第二期開発テストが9月開始の予定だ。昨年の初回テストは成功との評価を受けた。多岐にわたるテスト項目を合格しただけでなく、予定外の夜間カタパルト発着艦も実施した。再設計の拘束フックは想定通りに作動している。開発テストの最終段階は2016年実施予定。

【F-35C】 この海上公試は米海軍には大きな意味がある。海軍だけが購入を保留扱いにしていたためだ。海軍は260機のF-35を調達する予定とはいえ、いつも海兵隊や空軍に先に調達枠を譲り、自身はボーイングF/A‑18E/Fの追加調達を優先させてきた。テスト結果が出たことで今後は海軍にもF-35調達を進める政治的な圧力がかかるだろう。.

【ボーイング】 ボーイングはF/A-18E/FスーパーホーネットやEA-18Gグラウラーを生産するセントルイス工場は2016年までの操業を確保している。しかし、受注の不確かさもあり、生産ライン維持のための最適解を検討している。その生産量変更の決定は2015年中にボーイング防衛宇宙安全保障部門のクリス・チャドウィック社長Chris Chadwick lが発表するだろう。

【韓国】 同社関係者は口を閉ざすが、スーパーホーネットをもとに大韓航空との提携、同時に韓国航空宇宙工業(KAI)と完全な新型機を作る案がある。ただし、韓国内の複数筋によればこれは検討中で結論は出ていないという。もし韓国が既存機種を原型にする案を採択すればロッキード・マーティンもF-16をもとに提案をし、エアバスグループもタイフーンを原型に参入するだろう。韓国の開発事業は8.5兆ウォン(77億ドル)規模とみられる。KF-Xは現行F-16の後に2025年までに整備する企画だ。インドネシアが開発予算の2割を負担する用意をしている。
 F-35が話題の中心になりがちだが、韓国が自国のF-16改修をどうするかが関心を呼んでいる。韓国は一度決まったペンタゴンのBAEによる実施案を廃案にしている。126機のコックピット、エイビオニクス改修でAESAレーダーも加えるものだ。この結果、ロッキード・マーティンが契約を獲得すると広くみられている。ロッキードはすでに台湾向けに同様の業務を実施している。契約規模は13億ドルとみられ、米空軍がF-16のエイビオニクス改修を2014年に取り消しているので、注目を集めそうだ。

【インド】 もう一つ注目すべきなのがインドで、ダッソー・ラファール126機導入で総額200億ドル規模になる。ダッソーは最初の18機は既存の生産ラインから供給し、ヒンドスタン・エアロノーティカルが最終組み立て施設を建設し残りの108機を生産する。ラファールは中型多用途戦闘機としてロシアのMiG-21およびMiG-27の代替機となる。
【スウェーデン】 JAS39Eグリペンは2015年下期に初飛行する予定。ブラジルにより複座F型開発が進んでおり、100機以上の導入を期待している。

【ロシア】 他方、ロシアのスホイはT-50の実戦デビューに向けて準備中で、PAK-FA事業として単座ステルス双発戦闘機となる。F-35の競争相手となる同機は2016年に第一線配備の予定だが、今年中にもデビューするかもしれない。米国製ハードウェアへの依存に躊躇する諸国には代替機材になるかもしれない。.
 ロシアは最低でも150機を調達することとしており、スホイはインドとも提携して同機を改修し自国仕様にする協力をしている。なお、同機の初飛行は2010年だった。

【中国】 中国のJ-10B多用途戦闘機もまもなく就役しそうだ。成都航空機製の同機を中国は単座J-10Aを256機、複座型は海軍用に24機調達する。.
 パキスタン向けの派生機種はFC-20の呼称がついている。レーダー吸収素材をより多く使い、AESAレーダーも搭載している。.
 中国のステルス機J-20には謎が多いが、ペンタゴン関係者は同機は2018年ごろに実戦化されるとみる。2014年には別の試作型J-20が現れたが、一部設計が変更になっている。
 さらに2014年にはステルス双発のFC-31が輸出用機材として珠海航空ショーで公開されている。こちらにも謎が多いが、もし中国が真剣に輸出を目指すのであれば、2015年中に機体の詳細が漏れ伝わってくるはずだ。

【次期戦略爆撃機】 ボーイング/ロッキード・マーティンかノースロップグラマンかどちらの新型爆撃機案を採択するかは来年早々になりそうだ。すでに提案要求は昨年秋に発出されているが、空軍は依然として同機の調達方針や詳細は極秘扱いとしている。発注規模は100機だが、採択の結果は米国の軍用機生産の地図を決定しかねない。ボーイングのF-15やF/A-18生産ラインは閉鎖に向かっており、ノースロップ・グラマンも完成機関連の業務は少なくなっている。.

【練習機の刷新】 一方でステルス機導入を決めた各国には訓練体系も刷新する動きがある。米空軍では長らく待たれたT-38Cの後継機種を決めるT-X調達事業を2015年に開始する。これをめぐっては厳しい競争が予想されている。350機調達という同事業は当面は最大規模の調達事業になる。
 ボーイングはSaabとの提携を公式に認めたが詳細は明かしていない。ノースロップ・グラマン/BAEチームはホー練習機を押してくるだろう。ジェネラルダイナミクスアレニアはイタリアのM346を、ロッキード・マーティン/韓国航空宇宙工業はT-50を提案している。.
 北アフリカやアジアの各軍はT-Xの選定結果を待って自国向け機材の調達に動く。

【無人機の動向】 無人機でも2015年は進展が期待できそうだ。ペンタゴンは二転三転してきた無人空母運用空中監視攻撃システム(UCLASS)の開発を続行すべきかを決定する必要がある。海軍は同機に長時間情報収集機能を期待し攻撃力は限定的でよいとする。大西洋の反対側ではダッソーがニューロン無人機の攻撃能力をスウェーデンで実証する。同機はMk82(500ポンド)汎用爆弾を投下する。■


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