スキップしてメイン コンテンツに移動

移動式ミサイルを事前に攻撃可能にする技術開発は相殺戦略の要だ



A2AD含め米国にとって厄介な仮想敵国の戦略の前提を新技術で覆そうというのが第三相殺戦略(新技術開発運用で米国の優位性を維持、伸ばす)のポイントのようです。では、面倒な地上移動型ミサイルへどんな対応ができるのか、専門家の知見を見てましょう。


Stopping Mobile Missiles: Top Picks For Offset Strategy:

By ROBERT HADDICKon January 23, 2015 at 10:55 AM
発射台装備車両(TEL)に搭載された敵の移動式陸上ミサイル(地対地、地対空、対艦)への対処法は、米国の軍事戦略立案担当者に未解決のままだ。所在を隠せる各種兵器は敵にとって運用コンセプトに機動性を生むことになる。中国、ロシア、イランや米国の敵になる可能性のある多数の国で使用され、米軍の遠征作戦で追加コストとリスクを発生させる。
  1. 【なぜTELを狙うのか】 迎撃ミサイルは移動式ミサイルへの対応策にならない。ミサイル防衛では陸上発射型、海上運用型ともにある程度まで成功を収めているが、ペンタゴンがミサイル防衛に費やしている膨大な努力・費用を考えれば将来において今以上の実績が生まれると当然期待したいところだ。だが高度装備を備えた敵が多方面同時攻撃を実施した場合、一部の敵ミサイルが防衛網をすり抜ける可能性を覚悟しなければならない。
  2. その場合の被害は甚大だ。とくに艦艇で損害が大きいだろう。もっと重要なのは迎撃手段のコストはその対象目標の数倍も高くなり、攻撃側が絶えず有利な立場になることだ。これに対しTELを狩ることは「射手を攻撃する」ことになり大変な価値があり、敵の戦略の根底が崩れればその意味は大きい。
  3. 敵の移動式ミサイルへの対向技術と作戦構想の開発がペンタゴンが進める国防イノベーション構想Defense Innovation Initiative別名第三相殺戦略Third Offset Strategyでの最重要課題になっている。敵ミサイルの発射寸前での効果的な対応方法は実現手前に来ているので、ペンタゴンの作戦に織り込むことができそうだ。実現すれば移動式ミサイルに潜在的敵国が投入してきた莫大な投資は無駄に終わり、作戦構想が成立しなくなる。その結果、コストが妥当なら、「対抗戦略」の根底ができあがる。
  4. 【米海軍の苦悩】 移動式ミサイル問題は米海軍で特に顕著だ。陸上配備の移動式対艦ミサイルで制海権が脅かされ、有事の際に東アジア、アラビア海、ペルシア湾を結ぶ交通路の確保がむずかしくなる。米海軍の潜水艦と航空部隊にとって敵艦船を沈めるのは大して難しくない。ただし長距離射程の対艦ミサイルが移動式車両に搭載され内部聖域に残り、遠距離の海上交通を妨害できるとなると、米軍・同盟軍は重要な海上交通路の利用ができず、軍事作戦にも支障が出る。
  5. なかでも中国のDF-21D対艦弾道ミサイルは悪名高い存在で、誘導式極超音速弾頭を装着し1,500キロの射程があるといわれる。今までのところ中国は同ミサイルで移動標的への実地テストを行っていないが、同ミサイルの発射管制・目標捕捉施設は米軍の妨害に脆弱と思われる。中国側も弱点を当然認知しているはずで米海軍は中国が今後改善を図ることを前提にすべきだ。
  6. また海軍は中国等がゆくゆくは長距離ステルス・スマート対艦巡航ミサイルを配備すると覚悟しなければならない。同ミサイルは米海軍が今後配備する長距離対艦ミサイル Long Range Anti-Ship Missile (LRASM)と同様の装備となろう。LRASMは共用空対地スタンドオフミサイル長距離射程型Joint Air-to-Surface Standoff Missile-Extended Range (JASSM-ER)の派生型で、射程は900キロを超え、ステルス性があり、飛行中にデータアップデートが可能で目標を変えることも可能であり、妨害脅威を探知回避でき、目標を識別して攻撃できる
  1. 中国はすでにHN-3巡航ミサイルを配備しており、TELを使った移動式で射程は3,000キロといわれる。中国がTEL搭載式対艦ミサイルでLRASMと同等の性能・射程を有する兵器を2020年代に開発することは十分ありえる。米海軍部隊を一旦発見すれば、中国はミサイル多数を発射し組織的に捕捉するだろう。ミサイル間で探知情報を交換し、目標情報のアップデートも受信する。こうしてみると米海軍にとって陸上発射型の長距離対艦ミサイルの脅威は悪化する一方だとわかる。
  2. 【スカッド狩りの教訓】 歯がゆい思いをさせられた湾岸戦争での「スカッド狩り」はTELに搭載したミサイルへの対抗がいかに困難かを示している。イラクに対する航空作戦は1991年1月に開始されたが、サダム・フセインは移動式対地ミサイル部隊を西部砂漠地帯に展開し、テルアビブ他目標に発射し、イスラエルを参戦させてアラブ各国の連帯を崩そうとした。そこで有志連合軍は急遽数百回の爆撃出撃を振り向け移動式スカッド・ミサイルを探す不毛の努力を強いられた。その8年後にNATOはコソボからセルビア軍の撤退をさせるため航空作戦の実施中に、移動式地対空ミサイルが米空軍のステルス機F-117撃墜に成功している。
  3. 1990年代のスカッド狩りに懲りて米空軍は移動式ミサイル捕捉で別の作戦構想案を模索した。その一つの成果が低コスト自律型攻撃システムLow Cost Autonomous Attack System (LOCAAS)で全長1メートルで航空機から発射するミサイルでTELなど移動車両を捕捉・攻撃するプログラム変更可能な兵器だ。レーザーレーダーを搭載しており、(LIDARまたはLADARと呼ばれ実験中の自動運転車両にも使われている)車両を正確に区分できる点で人員操作よりも正確度がはるかに高い。識別できればLOCAASは降下開始し目標を破壊する。LOCAASには30分間の飛行が可能な燃料を搭載しており、LIDARは雲より下の低高度で60平方キロ範囲で目標を捜索する。量産に入れば単価は75千ドル程度になり、想定する目標車両よりも安価になるはずだった。
  4. 残念なことにLOCAASは開始数年で中止された。敵の電磁ジャミングを想定して開発陣はLOCAASに自律的攻撃機能を持たせて人的関与を不要にしたが、政策立案部門はあきらかに殺人無人機の概念におじけづき、中止に追い込んだ。
  5. ただしその後、移動式ミサイル問題は深刻さをまし、TEL狩りが一層重要になった。また政策立案の上層部も自律型装備に対する警戒心をゆるめてきた。米空軍の新戦略案では自律性能を技術上の最優先分野と位置づけている。また国防イノベーション構想(第三相殺)の発表でチャック・ヘイゲル国防長官も自律型装備を構想の中心に捉えていた。
  6. 【MALDを元に新ミサイルを開発】 空軍のミニチュア空中発射デコイ Miniature Air Launched Decoy (MALD) はLOCAAS直系とも言える。MALDは全長3メートルで重量300ポンドほどのジェット推進式無人機であり、敵防空網を混乱させるべく米軍機と同じ飛行特性やレーダー反射を発生させる。MALDは45分間飛行可能で900キロ飛ぶ。最新のMALD単価は322千ドルである。
  7. そこで新しい第三相殺戦略でMALDあるいは類似小型ジェット機をもとにミニチュア自律捜索攻撃ミサイルMiniature Autonomous Search and Strike Missile (MASSM)に改装し、LOCAASの後継機として大幅に性能を向上させることになろう。MASSMもステルス性があり、LIDARとミリ波レーダー、画像識別型赤外線センサーを搭載する。TELが搭載するミサイルが簡単に破壊できることもあり弾頭は強力である必要がなく、その分多くの電子装備や燃料を積める。衛星通信能力で管制官はMASSMの目標を途中変更でき、MASSMから捜索結果を報告できる。.
  8. MASSMはLOCAASよりさらに高高度からの探知が可能となり、センサー有効範囲が広がる。MASSMではステルス特性も必要に応じ変更可能でセンサーのとらえた情報と事前プログラムした目標情報を照合する。探知範囲が広がり、航続時間も長く、速度も増加するためMASSMの一回の出動で3,000平方キロ範囲を捜索できるはずだ。量産すれば単価はMALDの322千ドルを下回るはずで、DARPA(国防高等研究プロジェクト庁)からは妥当な目標を見つけられなかったMASSMを空中で回収し再利用する構想が出ている。.
  9. 空軍はB-2や長距離打撃爆撃機 (LRS-B) をMASSMの母機として敵防空網の内部で運用するだろう。B-2は500ポンドの共用直接攻撃爆弾なら80発、すなわち4万ポンドのペイロードがある。MASSMは重量300ポンド想定で、B-2ないしLRS-Bに100機搭載できる。一機の爆撃機で計300千平方キロを探知できることになる。
  10. 米海軍は敵の陸上配備弾道ミサイルの制圧を必要とし、DF-21Dあるいは将来の長距離対艦巡航ミサイルが発射されればTELの捜索攻撃を海岸線から1,500キロ内部まで行う必要が出てくる。米空軍によれば、中国のTEL搭載ミサイルは道路上の運行に制限されるという。しかし、DF-21Dを搭載するLETは道路外の運用も可能だ。
  11. そこで敵国の道路網や地形を慎重に分析すれば探知範囲を絞れるだろう。人口密集地の狭い道路はTELの運用には適さない。オフロード性能があるTELだと複雑になるが、どこにでも移動できるわけではない。大重量LETでは沼沢地、森林、急坂他移動できない地形を避ける必要があるからだ。
  12. また衛星画像等のその他情報源や偵察機によりMASSMの探知範囲を絞ることができる。
  13. 【対中国戦のシナリオ】 中国との軍事衝突を仮定すると、東シナ海・南シナ海での海上交通路確保のため、対艦ミサイルを搭載したTELを奥行き1,000キロ、幅2,000キロの範囲(2百万平方キロ)で捕捉する必要が出る。MSSM搭載機で30万平方キロの探索が可能なので、爆撃機は計7回出撃すれば十分だ。さらに道路状況、地形の事前解析で捜索範囲を最初から狭めることが可能。爆撃機から合計数百のMASSMが展開し、LETを捜索し、攻撃を加え、ミサイルの隠匿を無効にできる。その間に西太平洋で海軍部隊、空軍部隊の作戦を実施する。
  14. 【イランの場合】 MASSMでイランの移動式ミサイルを制圧するのははるかに容易だろう。CIAによるとイランの道路延長は198,866 キロで、一機の爆撃機でMASSM100機を展開し全国の道路上でTELを識別できる。イランの国土面積は1,531,595平方キロで、大部分はおオフロード式LETでも走行不能だ。最悪の場合でも爆撃機5ソーティでMASSSMを運用すれば国土すべてで移動式ミサイルの所在をあぶりだすことができる。
  15. 【敵への影響】 このような性能を有する装備を運用すれば、特にそのステルス性のため敵ミサイル部隊の作戦は混乱に陥るだろう。国内にもはや聖地はない。ミサイル部隊指揮官は攻撃されると覚悟しなければならない。そうなると更に多くの予算をかけて掩壕を準備し、戦術も変更せねばならない。敵国指導層もミサイル部隊の実効性を信頼できなくなり、抑止力の支えがなくなる。
  16. ただしこの構想では技術上の課題が多く、さらなる開発が必要だ。 例として1991年のスカッド狩りでイラクは囮装備を配置し、本物の所在をわかりにくくすることに成功している。そのためLIDAR他精密ミリ波レーダーが実用化され、探知センサーの実効性が上がった。また上で紹介した構想の前提はセンサー、期待、その他技術が実用化されていることだ。LRS-Bの就役は中期的将来になる。肝心なのは敵のミサイルTEL対応を手の届く費用で実施することだ。
  17. ただ今回ご紹介した構想は相殺戦略が目指す方向を示す好例で、米国の比較優位性を長距離攻撃、無人機、センサー、システム統合の各分野において個別具体的な軍事課題として利用を狙う。その結果、敵の大型投資を無効にする新しい作戦構想が生まれる。敵方に回る可能性のある各国は移動式ミサイル整備を重視しているが、新構想で敵の作戦前提条件が崩れてしまう。これこそ対抗戦略の効果だ。
  18. MASSMの実用化に成功してもミサイルを隠す側と見つける側のいたちごっこは終わらないだろう。敵が民生用40フィートコンテナーにミサイルを隠したらどうなるか。2010年にはロシアの対艦ミサイル「シズラー」がコンテナーに搭載され発射された前例がある。長距離ミサイルを民間に紛れ込ませることの政治、法的な側面、さらに軍事上の有効性は別途検討したい。とりあえずの結論はそのような対抗手段をとってもMASSM構想の開発には影響がないということ、MASSMの実現は費用対効果の面で有効な戦略手段となるということだ。■
著者ロバート・ハディックは元海兵隊将校で現在は米特殊作戦司令部から個人業務委託を受ける。上記論文は本人の責任において執筆したのもの。著書 “Fire on the Water: China, America, and the Future of the Pacific” は海軍協会出版部が刊行している。


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...