予算もありますが米空軍の構造そのものが大変な危機にあることがわかります。戦闘機パイロットが幅を効かせてきた風土がもはや変更せざるを得ないところに来ているのに変革できなかったというとでしょうか。そういえば、最近は新技術や戦術構想などさっぱり米空軍から出てくるニュースが減っていますね。翻って我が航空自衛隊はどうなのでしょうか。将来の姿をUSAFが暗示している気がするのですがどうでしょうか。
Drones Need Humans, Badly
WASHINGTON: 無人機といえども飛行には人員が必要だ。空軍長官デボラ・リー・ジェイムズから過労気味な無人機飛行隊へのてこ入れ策が発表された。その記者会見の席上で空軍参謀総長もF-35整備要員の不足も認め、今回の対応策は「苦痛がともなう」と発言。一見、技術最先端の運用部隊でも人員不足という古くからの問題に悩んでいると露呈した格好だ。
- MQ-1プレデター、派生型MQ-9リーパーは無人機航空戦の象徴的存在だが、その裏でどれだけの人員が必要かは意外に知られていない。点検補修、情報解析、センサー操作に加え、遠隔操縦するパイロットが各機で常時必要だ。このため空軍では無人機を「遠隔操縦機」remotely piloted aircraft (RPA)と呼ぶ事が多い。なお、高性能機のグローバルホークやトライトンでは必要人員は減っている。人員すべてに高いストレスがかかるが、特にパイロットの負担が重い。
- 「昨年6月にクリーチ空軍基地(ネヴァダ州)を訪問し、遠隔操縦ISRミッションを間近に見ることができました」とジェイムス長官がペンタゴンで述べている。中東での無人機需要は予想に反し落ち込んでいない。対イスラム国戦が拡大しているためだ。そのため「この部隊は密度が高まる一方作戦のため相当のストレスを受けている。週6日、一日13から14時間勤務が普通」 平均でRPAパイロットは有人機パイロットの4倍の時間を操縦するという。
- 「RPA機材数の保持もあるが、目下の危機はパイロットだ」とウェルシュ参謀総長が補足した。養成には複雑かつ長時間の訓練が必要で、かつ作戦で必要とされることがふえているため酷使されがちな部隊から教官パイロットが引き抜かれる、と同大将は説明。しかも教官といえども実戦に従事することが多く、新人パイロットの養成がままならない。この悪循環がパイロット不足を生んでいる。その結果、空軍の試算では一年間でRPAパイロット300名必要なところ実際には180名しか誕生していない、しかも240名が第一線を退いている。
- さらに危機的状況に近づきつつあるのは雇用契約だ。「経験豊かな操縦要員の多くが現役期間の末期に達しようとしている。つまり、各自に選択の余地が生まれるということだ」とジェイムズ長官は指摘するが、多くは退役を選ぶだろう。
- 「そこで迅速に事態を軽減する案を作成した」と長官は発表。長期的解決策には議会の支援も必要となるという。
- まずは予算増額だ。ジェイムズ長官は自らの裁量でRPAパイロットの月額手当をこれまでの650ドルから1,500ドルにする。それでも総額はたいしたものではないが、関係者の家計には年1万ドルの増額となる。さらに長期的には追加手当が必要だとする。現役に残るパイロット向け「航空勤務継続手当」(最高年2万5千ドル)を現在は有人機パイロット限定だがRPAにも適用したいとする。
- 次は人員増だ。空軍は各州軍航空部隊や空軍予備役に呼びかけ、RPA部隊へ志願を求める。RPAパイロット有資格者で別任務につく予定のものも「志願」できるようにする。ウェルシュ大将によれば「隊に残るよう依頼中のものが33名」とのことだが、四つ星将官がここまで細かく気を配ることから、その33名が受けている圧力の大きさが想像できる。また有資格者にRPAパイロット復帰を求めている。
- 長期的には空軍は他軍からの有資格者を引き入れたいとする。規模縮小される陸軍などを想定。実施すれば100年近くの伝統を破り、無人機限定とはいえ下士官兵がパイロットになる。(空軍と海軍では飛行操縦は士官限定。陸軍ではヘリコプターで准尉に、無人機を下士官兵に操縦させている。) ウェルシュ大将も「下士官兵に道を開ける」と認め、「長官になるべく早い時期に提言を申し入れる」とする。
- 空軍の下士官兵ほぼ全員が地上勤務で保守点検業務などに従事しているが、この保守点検でF-35が問題になっている。
- 空軍の原案ではA-10ウォートホッグを全廃し、余剰予算と人員をF-35に振り向けるはずだった。だが、議会がA-10対地攻撃機に愛着を残し原案を拒否。そのため空軍はA-10用と新型F-35の両方で整備要員が必要となった。開発室長クリス・ボグデン中将も人員不足から空軍向けF-35Aの初期作戦能力獲得が遅れる可能性を警告していた。
- 「十分な数の整備員を確保する」とウェルシュ大将は発言。F-35AのIOC日程は2016年8月から12月の間だと念を押している。遅れることは受け入れがたいが、「可能な策をすべて実施するが苦痛をともなうものとなろう」
- その「苦痛」がどんなものかウェルシュ大将は言明していないが、一部は議会の承認が必要となるようだ。「提案が受け入れられないとIOC実現が危うくなる」とし、議会とはすでに密接に競技していることを伺わせる。
- ただし、空軍の人員不足はF-35やプレデターだけではない、とジェイムズ長官は明らかにしており、1,100名を他分野から転換したとするが、これまで軽視されてきた核運用部隊でも人員不足がある。「全体として各部門で人員は不足している」と長官は認め、「規模縮小はもう限界」と言う。■
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