今回のホテル占拠事件は日本から見るとあっという間に解決した感がありますが、背後には着実に能力を向上させているアフリカ各国の治安維持の体制があるのですね。さらにそれを支える西側の努力があるわけです。こうなると貧困、無秩序といったネガティブなアフリカ観を変えていかないといけませんね。
US Special Operators Helped Mali Hotel Rescue: AFRICOM
WASHINGTON: マリ共和国バマコでホテル利用客の人質奪回作戦が今朝実施されたが、米特殊作戦要員2名が参加していたと米アフリカ軍団司令部報道官マーク・チーディー大佐が明らかにした。両名はマリで軍事顧問として先に入国していたので迅速に現地部隊の支援に回れた。奪回作戦を実施したのはマリ部隊だが、上記米側要員は少なくとも六名のアメリカ市民をテロリストが占拠したホテルから安全地点まで誘導する際に体を張って支援をしている。
- 「両名はドアを蹴り開けたわけではない」とチーディー大佐は強調している。「アメリカ市民の搬送を助けているが、全員がホテル外に出た段階でマリの特殊作戦部隊に助言を与えている。今回の功績はマリ特殊作戦部隊に与えられるべきだ」
- 米軍関係者はテロリスト集団に発砲しておらず、逆に銃撃を受けたわけでもない。世界各地で米軍は現地同盟国側に実際の作戦実施を任せるのが通例で今回はマリがドアを破ったわけだ。米軍は戦術上の助言や支援を提供し、無人機を飛ばすこともある。この作業分担が崩れて米軍人が発砲すればジョシュア・ホイーラー曹長がイラクでクルド人救難中に命を落としたような悲劇が発生しかねない。
- ともすれば米軍による中東空爆や中国が一方的に主張する海域に艦船を派遣した事例が世間の関心を集めがちだが、オバマ政権は小規模かつ非暴力の支援を現地側に提供する策にこだわっている。この方法に先鞭をつけたのは陸軍特殊作戦部隊だが、いまや陸軍主力部隊も価値を認めている。陸軍は普通科部隊を一部国に現地部隊と組み合わせる「域内合同部隊」として派遣している。
- その最初の事例がアフリカ軍団で、マリ首都バマコにあったのは少人数の米軍支援部隊でおそらくフランスも同様に現地部隊を支援しただろう。
- 「自分で全部実施できる技術や知識のあるところはないし、その装備もない」とデイヴィッド・ロドリゲス大将(ARFICOM司令官)が国防関連記者集団との朝食会で語っている。「その例外で自国内で完結しているのはアフリカでも統治状態が最悪のリビアとソマリアだ」
- 「一方でもっと能力のあるパートナー国は多い。高い能力を身に着けると、自分でやってみたくなるのが普通で、そこでわれわれは相手側の能力を高めることに真剣になる」
- アフリカ各国の軍部隊が米国に期待するのは訓練に加え情報収集、指揮統制の運用技術だとロドリゲス大将は説明。つまり、各国の人的諜報活動(HUMINT)は現地情報網を活用し、米側より先を行っているわけだ。
- これに対し米側の補給支援能力は高く評価されている。フランスでさえ米軍の輸送機、給油機なしでは広大な作戦地域で活動できない。米軍は設営技術、即席爆発物(IED)の解除方法の訓練に加え特殊作戦として直接行動や対テロ戦の訓練も行っている。
- 米軍が訓練を与えた対テロ部隊はカメルーン、チャド、ニジェールにあり、それぞれボコハラム・テロ集団と共同して戦っている。ナイジェリアおよびベニンも戦いに加わっており、アフリカ各国の背後には米仏英の情報チームが控える。同様に西側が支援する多国籍アフリカ対テロ部隊がソマリアとマリにある。
- ただしアフリカ側は単に西側から知識だけを得ているわけではない。多数の国に特定分野の専門家があり、隣国にお手本を示しているとロドリゲスは述べた。ボツワナとナミビアは麻薬や人身売買、武器の密輸対策で一歩先を行っており、モーリタニアは米国の支援で強力な情報収集・監視・偵察機能を整備した。今回マリはこの利用を要請した。モロッコには「強力な訓練能力」がある。
- 「アフリカ各国は共同で動いている。今後拡充するだろう」とロドリゲス大将は述べている。「自国部隊を編成し、訓練をすれば、相互に訓練をする能力が生まれるだろう。これが次の段階の目標だ」
- これは時間がかかり忍耐力を試される工程だが、米軍のわずかな投入で大きな成果が生まれる可能性がある。その例が本日バマコで示された。■
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