5th-To-4th Gen Fighter Comms Competition Eyed In Fiscal 2015
米空軍は第五世代機と第四世代機間の通信接続手段の提案を業界に求める模様。
- 空軍は「第5から第4へ」と通称する通信能力が必要だとしてきたが、F-35の配備が近づく中、技術的な課題と予算制約で先送りにしていた。またF-22の調達規模が縮小して各機を空軍のネットワークに接続させ作戦の協調が実施上の課題となっていた。
- 「第5から第4へ」と言う名称だが、F-22とF-35でLink 16を使わずに通信させる方法の確立が課題だ。Link 16を使うとステルス性に支障が出るためだ。両機種はロッキード・マーティン製だが、設計年代が違っており、F-22は基本的に僚機のF-22に「話す」ことを専用の低探知性・低妨害可能性のシステムを通じて行うことしかできない。これに対し、F-35は多機能高性能データリンク Multi-function Advanced Datalink (MADL) を使用しており、波形を変えつつ通信が可能だ。F-35の空軍での実戦化は2016年8月予定。
- 空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が2月の空軍協会主催会合で第5から第4戦闘機への交信能力の必要性を訴えていた。しかし、航空戦闘軍団Air Combat Command は具体的な必要条件を明確に示しておらず、同軍団は本件について取材に応じていない。
- 特にF-22を実戦投入する際に通信が制約条件になっている。同機をリビア作戦(2011年)に投入する案があったが、F-22が集めたデータを友軍に送信する手段がないことがわかり企画はとん挫してしまった、と業界筋が明らかにしている。
- そこで空軍が提案しているのは多分野適応性処理システムMulti-Domain Adaptable Processing System (MAPS) といい、ステルス戦闘機間の通信のゲートウェイとなるポッドをつくることだ。これをF-16はF-15と言った第四世代戦闘機に搭載すれば、旧型機でも通信のやり取りが可能となる。
- 作戦概念ではステルス戦闘機を敵防空網の脅威がある「バブル」の背面から侵入させ、MAPSシステムでデータをそれぞれ送受信させる。
- これで戦闘航空機間の通信は楽になるが、作戦概念はステルス機が侵入するだけでなく、第四世代機が周囲を旋回飛行し、通信を支援することが必要条件となる。これは作戦実施のコストを増加させる要因だ。
- このMAPSの提案仕様は空軍が2015年第二四半期までに完成させることにあっているとアンソニー・ジェネテンポ大佐 Col. Anthony Genatempo (空軍電子システムズセンターElectronic Systems Center)が語る。同センターはMAPS調達を担当する。2015年度末までに競争入札を実施したいという。
- 通信ゲートウェーに加え、空軍は赤外線探索追跡センサーinfrared search and track sensor (IRST) をMAPSのハードウェアの最終仕様に追加する予定だという。空軍の目論見はMAPS開発を100百万ドル以下で完了することだが、最終的な金額は変更の可能性がある。
- MAPSはタロン・ヘイトTalon Hate の知見をもとにしている。タロン・ヘイトは飛行中のF-22からデータリンクを第四世代戦闘機に提供するのが目的で、2015年度内に専用ポッド四つを作ることになっている。航空作戦で後方につく第四世代戦闘機のパイロットもF-22が収集した戦術情報が利用できるようになる。ボーイングがF-15C用のポッドを作成中だ。
- このタロン・ヘイトのポッドは各1,800 lb.の重量があり、長さは17 ft.で、IRST(多機能情報提供システムMultifunctional Information Distribution System (Link 16に類似))、衛星通信能力、空対地通信リンクを内蔵する。
- タロンヘイト開発を担当するのは空軍の戦術能力開発室Tactical Exploitation of National Capabilities officeで議会から指定を受けて各軍に応用できる能力を開発する部署である。航空戦闘軍団はタロンヘイトについても取材を拒否してきたが、データ表は提供している。なお、ボーイングは本システムについて一切の質問に答えていない。
- 最終的には空軍がステルス戦闘機に相互通信能力を持たせ、外部ゲートウェイを経由することなく独立した能力とし、データリンクの高性能化を目指している。ただMAPSについては「同様の性能がタロンヘイトにありますが、重量及び部品の電力消費量が減ります」とジェネテンポ大佐は語る。「形状はポッドではなくなるかもしれなく、一部ポッドになっているかもしれない」
- F-22とF-35はともにLink 16で受信できるが、代わりに自機の位置をさらすことになる。そこで空軍はLPI/LPD で通信接続を実現する方法を模索しつつ、第五世代戦闘機を危険度が最高に高い地域に送るかを考えている。
- ジェネテンポ大佐によれば要求性能を一気に実現しなくても段階的変化で究極の目標たるF-22とF-35 間の直接リンクを実現すればよいと空軍は考えているという。ただコストが最大の関心事だという。生産規模は予算がいくら使えるか次第だという。
- 最終目標は第五世代戦闘機、第四世代戦闘機を情報収集監視偵察用や衛星などその他の国防関係の機材と連結するネットワークとして完成させることだという。
- ボーイング、ノースロップ・グラマン、ロッキード・マーティンの各社がMAPSの概念提案に参加する見込みで、このうちノースロップ・グラマンはジェットパックJetpack 共用能力として実証を行っている。ジェットパックはF-22とF-35 の出すメッセージを翻訳することが目的だという。
- これとは別にロッキード・マーティンはL-3コミュニケーションズが開発した新波形キャメレオンChameleon によりF-22とF-35間でゲートウェイ介さずに直接交信出来ることを昨年12月に実証している。その際の信号強度は接近拒否の環境下での探知範囲以下だったと関係者は語っており、波形はLバンドアンテナで送信されたという。Lバンドアンテナは両機種に取り付け済み。.
- ロッキードは自社資金でシステムを完成させようとしており、プロジェクトミゾウリProject Missouri と命名している。このシステムの特長はキャメレオン波形によりデータが行き来してもステルス機の位置が見えてしまうことがないので、高度に防空体制での作戦に有利に働くことだ。同社は空軍が予算交付に動き、同プロジェクト開発がさらに進むことを期待している。■
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