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南シナ海の対立をエネルギー面から見るとこうなる


China’s South China Sea Activity Takes a Page from Early Communist Party Playbook

By TIM DAISS on June 01, 2015 at 12:30 PM

south china sea
  1. 中国が南シナ海(SCS)スプラトリー諸島の環礁、入江を埋め立て2,000エーカーの土地造成をしていることで言葉の応酬が四週間目に入った。米衛星写真で人工島の建設現場がフィリピンが領有を主張する部分であることも判明した。中国はSCSの約9割が自国領土だとし、九段線と呼称し、U字の形で領有権を主張している。フィリピン、台湾、ベトナム、マレーシア、ブルネイもそれぞれSCSで領有権を主張している。このうちスプラトリー諸島は中国最南端からおよそ800カイリの距離にあり、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内に位置する。
  2. 新しい衛星画像を公表した米国は改めて中国の埋め立て工事を中止させるとの立場を明確にしたが、中国は自国の主権の範囲として工事を続けており一歩も譲る気配がない。画像公表の一週間後に米海軍のP-8哨戒機にCNN取材陣が同乗し工事現場付近を飛行した。その際の中国軍からの無線交信は報道のとおりだが、同機は最終的に飛行を断念している。
  3. この米軍機飛行へ中国は素早くかつ強力に反応し無責任な行動を許したと米政府を非難する一方、自国権利を主張している。米国はメディアを利用し中国の大規模埋立へ関心を高めようとした。すると計算されたかのように中国国防省が白書を公表し、これまで沿岸抑止力を主眼においた整備をしてきた海軍兵力を遠隔領土の防護に専念できる形に変えると説明している。
  4. 恒例の防衛問題シャングリラ対話でも言葉の応酬は続き、両側とも引き下がる気配はない。米国防長官アシュトン・カーターからは中国政府は国際規範から「はずれている」と批判。「SCS上空の飛行は長年に渡り実施しており、これからも続ける。航行、作戦でも同様。したがって何ら新しい話ではない」とし、中国に埋立工事の即時中止を求めた。中国は米要求を一蹴し、自国主権を行使しているだけ、監視哨は国際義務を果たすために利用すると反論している。
  5. 最大の地政学的脅威と呼ぶ今回の事態に双方ともけんか腰だが、背景に争点が2つある。航行の自由および炭化水素資源だ。中国は埋立工事は自国の地政学的な拡張、経済力の伸張の延長だと捉える。また米国と肩を並べる超大国であると自国をなぞらえている。
  6. 米国および域内同盟各国は埋め立て工事を航行の自由への明白な脅威ととらえ、世界有数の重要通商路として年間5兆ドルの貿易量がSCSを通過している事を重視する。天然ガスや原油の輸送もあり、日本や韓国が仕向地だ。中国がSCSで自国の力を誇示し、問題地の環礁や小島を人工島に変えれば、国際常識のすべてに反することとなり、国際法にも触れる。
  7. さらに中国は1982年の国連海洋法条約を認めていないが、同年に中国も署名し1996年に批准している。その理由としてSCSは適用外だとしてきた。だが中国は米国等に埋め立て海域では12カイリ領海原則の遵守を求めており、中国が国際法に違反していると指摘する向きを非難しているが、これは見え透いたダブルスタンダードというものだ。
  8. Grenatec研究所が最新報告を発表した。同研究所はアジア大のエネルギーインフラストラクチャーを専門としており、航行の自由原則を米海軍がSCS内で誇示する航路を提案している。それによるとリード堆、スビ環礁、ミスチーフ環礁を結ぶ弧となっており、中国、フィリピンがそれぞれ領有を主張する地帯を含む。Grenatecによればこの案で「先例を作り」「抗議してくるのは中国だけのはずだから中国の外交的孤立感を浮き彫りにする」というのだ。
  9. 報告書ではリード堆にはSCSで一番有望かつ未採掘の石油ガス資源があると指摘。ただしSCS内の石油ガスの推定埋蔵量は大きくばらついている。中国の試算では2,130億バレルの原油があるとし、一方で1993年94年のの米地質研究所(USGS) 報告書では280億バレル相当としている。後者はすでに相当前の考察で低めに推定を出しており、中国の試算は過剰に見積もっている可能性がある。
  10. ただし今回の対立がどう展開するかは予測できない。新興大国が従来からの大国に挑戦する形だが中国が使おうとする筋書きが見えない。今日の中国は中国共産党(CCP)創設時の想定を現実に移しており、国連軍に対抗した朝鮮戦争初期の動きでもある。また北朝鮮が使っている戦略でもある。大胆に動いて掛け金を引き上げ、敵がついてこれなくするのだ。現在の中国の行動は大胆かつ計算の上だが極めて危険な動きで裏目に出かねなず、その場合は悲惨な結果になるだろう。■

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