ここにきてヘリコプターの技術革新が具現化を始めています。これまでのヘリコプターの限界が破られる一方で膨大な数の既存機種の更新需要は大規模です。ただしいったんは競作に敗れた各社にも研究資金が回されているのはまだ次代の主流技術を絞り込めていないことのあらわれでしょう。
V-280 Valor: Bell Starts Building Joint Multi-Role Prototype
陸軍航空兵力の未来を形に示すメーカーfあらわれた。ベル・ヘリコプターの契約企業スピリット・エアロシステムズ(本社カンザス州ウィチタ)がV-280ヴァラーの試作1号機の複合材機体の組立作業を開始した。ヴァラーはベルの新型ティルトローター機だ。
- ヴァラーは洗練された形状で小型かつベル・ボーイングV-22オスプレイより陸軍用途に適合した設計になっている。両機種ともティルトローター機構を採用している。
- ヴァラーは技術実証機の役割を担うが、同社による提案であり生産が決定した事業ではない。ただしペンタゴンが従来型ヘリコプターの速度や航空機の滑走路長の壁を崩そうと補助を出して開発を進める技術事業のひとつである。V-280ともう一社の競合作はUH-60ブラックホークやAH-64アパッチの後継機種となり、機体重量3万ポンドほどで230ノット以上の速度で飛行して従来型より100ノットも高速になる。またハチドリのようにホバリングし、陸軍以外の部隊も欲しがる機体になろう。
- もう一つの実証機がシコルスキー・エアクラフトとボーイングが共同開発したSB>1ディファイアントで、名称のSB>1とは「シコルスキーとボーイングの和は1より大」との意味だ。この実証機の原型はコリヤ-杯を受賞したX2テクノロジー実証機とその派生型S-97レイダーだ。ディファイアントはまだ設計段階でアクティブ振動制御、硬性同軸ローターと可変回転数式推進プロペラにより従来のヘリコプターの速度限界を打ち破ろうというものだ。
- ヴァラー、ディファイアントはともに費用は陸軍主導の共用多用途技術実証機(JMRTD)事業が一部負担し、将来型垂直輸送機 (FVLの実現につなげようとする。FVLの目指すのは「垂直輸送機部隊を次世代の水準にもっていく」ことだと事業主管のダン・ベイリーがアメリカヘリコプター国際学会(AHS)で先月語っている。
- AHISのロビー活動にも助けられ、ベイリーは議会から14百万ドルの予算を獲得した。だがその半分は昨年の競作に敗れた企業に回っている。AVXエアクラフト(本社テキサス)は3.4百万ドルを得て同軸ヘリコプターに推進用ダクテッドファンをつける構想の研究を続けている。カレムエアクラフト(本社カリフォーニア)も4.1百万ドルを得てカレムが特許を所有する最適速度ティルトローター技術の熟成を続けている。同社の創設者エイブラハム・カレムはプレデター無人機を作った人。
- ベルおよびシコルスキー/ボーイングの実証機はともに2017年に初飛行するが、成功しても採用され生産に移る保証はない。ただし現状ではあまりに多くの機体が老朽化の一途にあることから後継機需要は相当あるといってよい。
- 「技術実証機は次世代軍用回転翼機を占う重要な存在で、今世紀通じ大きな存在となるだろう」とAHIS専務理事マイケル・ヒルシュバーグMichael Hirschbergは語る。
- JMRTDはFVLが目指す新型軍用機の4大目標の一歩にすぎない。4つとは、軽量、中型、大型、超大型の4つであり、どこからでも離発着でき、 高速飛行し、遠くに飛ぶ機体だ。
- それでもV-280の機体製造が進むと、回転翼機の歴史に新しい一ページが加わるる。ペンタゴンが前回純粋な垂直離着陸機の実証機に資金投入したのは1973年のことで、陸軍とNASAのエイムズ研究所がベルに契約交付し、小型ティルトローター機XV-15の製造をさせたときだ。
- V-280とSB>1の両機が飛行を開始すれば、ベル、シコルスキー/ボーイングは歴史の再来を期待するだろう。XV-15は1981年のパリ航空ショーで飛行展示しており、海軍長官(当時)ジョン・リーマンは海兵隊にCH-46シーナイト後継機種に選ばれていたヘリコプターを中止させ、ティルトローター機の開発を命じた。これがV-22になった。当初は嘲笑の的だったティルトローターは熟成し海兵隊、空軍特殊作戦軍団が使用中で、ここにまもなく海軍が加わる。V-22採用を見送った陸軍だけが純粋なヘリコプターのみを運用する部隊になる。新型機でこの状況を打破することが期待される。■
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