たしかヒューソンCEOはロッキードに技術畑で入社して上り上がった叩き上げですね。以下インタビューでは微妙な問題も出ていますが、さすがにうまく切り盛りしています。米国のジャーナリズムのきびしい問いかけ方法を日本も学ぶ必要があるのではないでしょうか。ブログ主としてはCFR(コンパクト核融合炉技術)はどうなったのかと聞きたくなるところですが。
Interview: Lockheed Martin's Marillyn Hewson
By Andrew Clevenger, Vago Muradian and Aaron Mehta 6:42 p.m. EDT July 27, 2015
PARIS and WASHINGTON — 今年もロッキード・マーティンはDefense News恒例の100大国防企業のトップになり、ヘリコプター大手のシコルスキーの吸収合併で更に業績を拡大する勢いだ。会長、社長兼CEOのマリリン・ヒューソンは同社を2013年から率いており、ペンタゴンとの関係改善、社内企業文化の再強化、さらに今後の同社の戦略的位置づけの定義を図ってきた。インタビューは7月27日に行った。
シコルスキー買収の理由は。ロッキード・マーティンのビジネス戦略全体で変化が生まれつつあるのか。
シコルスキー買収は当社のビジネス拡大戦略の一環。当社の航空宇宙国防製品・技術の品揃えが広がり、国際的にも訴求力のあるヘリコプター・ソリューションを提供できる。商用ヘリコプターでも新しい可能性が出てくる。シコルスキーが今後もDoD(国防総省)向けに素晴らしい製品を供給し続けるためにも今回の決定が最善だと確信しており、以前より広範な経営資源を投入し安定性をますのでそのまま事業を継続していた場合よりも優れた業績を示せるはずだ。
シコルスキー買収でロッキードはヘリコプターおよびヘリコプター向け電子装備でトップメーカーに踊り出るが、一方で垂直統合が強まり、DoDが一次契約企業同士の合併を嫌う中で懸念も増える。DoDが今回の買収をどう考えていると思うか。
実はシコルスキーとロッキード・マーティンは競争の激しい市場で共同で事業を展開している。シコルスキーが加わることでロッキード・マーティンの製品群がヘリコプター部門の競争状態を減らす作用はない。なぜなら当社は今のところヘリコプターの設計製造に携わっていないからだ。今回の取引は相互補完的で垂直、水平いずれでも懸念を生じさせない。政府審査には堂々と対応するつもりだ。
合併案公表前にDoDとは話をしたのか。あるいは今からだったら承認をどう説得するか
当社では事業上で大きな変化がある際に発表しているが、今回も同様に当社の顧客には事前にニュースを伝えている。審査手続では必要な情報は提供する。今回の取引で競争状態が減少するとは思わず、逆にコストや技術革新でDoDの顧客にも良い影響が出ると自信を持っている。
IT部門、サイバー事業部門を売却する理由は何か。拡大する一方の事業だと見る向きが多いのに。
当社のITおよび技術サービシズ事業は世界クラスの性能を実現しており、業績は極めて良好だ。ただし、市場動向と顧客の優先事項が変化していることから、これらの事業がもっと大きな成果を発揮し、より成功をおさめることはロッキード・マーティンから離れても可能と判断した。民間向けサイバー部門事業が戦略的見直しの対象となり、政府向けサイバーセキュリティー事業は引き続きロッキード・マーティンの中にとどまる。
国防支出が最低水準になれば、市場の成長率はどうなるか。また2015年から2020年までに業績をどう拡大していくのか。
まず本当に底を打ったのか確信が持てない。今年の夏は予算案をめぐり熱い議論が戦わされるだろう。そのため行方を注視している。大統領の予算案が想定の予算上限を上回っていたことに救いを感じるが、世界規模の安全保障の課題が山積しているとの認識で、わが国の国防装備を近代化する必要がある中、強制予算削減で想定したキャップを上回る支出が必要だと一部議員は見ている。これ自体は勇気づけられる話だが、一気にそこまでいかないことも明らかで、さらに国防以外の分野でキャップ以上の支出が必要との政府の考えもある。したがって当面は静観したい。
今後の見通しとなると、特定の事業で成長を期待するのか、それとも複数の成長事業があるのか。
持続でき利益をもたらす成長を心がけている。そのため企業全体の成長が必要だ。国際市場に注力している。国際売上20%という目標は達成済みだ。さらに今後数年以内に25%になると見ている。ここは成長が見込める分野で同時に米国内でも国防予算が増加に転じると見ている。その場合、当社は最強の品揃えがあり、強い立場になる。
当社の最大の難関はもちろんF-35であり、当社の製品群で大きな位置を占める存在だが、順調に推移している。F-35をまとめ買いしたいとの顧客の声明を聞いているだろう。同機事業の安定度と成長可能性はその他ミサイル防衛、C-130Jに代表される航空機動性とともに当社の広範な製品群を構成する。市場の中での当社の立ち位置は良好で国内外で需要は伸びると見ている。
2017年めどに自社株式を買戻すといっているが、アナリスト多数がこの案を支持していない。効果があると信じているのか。
今後三年間を見越して当社のキャッシュ活用を考えると150億ドル相当の運用資金を想定し、株主には配当および買戻しの形で還元してきたい。直近の12年間で当社は配当を二桁成長させてきたのはご存知の通り。株式の再購入へ続く道だった。総発行株数を300百万株に減らすというのは自然な選択だ。ここまでは普通の選択だが、だからといって事業の成長発展に必要なキャッシュを減らすわけではない。資本財その他に必要なキャッシュは維持する。
社員やR&D活動、事業投資が維持できなくなるという意見にどう反応するか。また手持ち資本をどの分野に投資するのか
当社の戦略は強力だと確信している。株主には現金還元の形で約束を果たしていくが、同時に当社の事業への投資も継続する。それは研究開発部門だ。今後も投資をしていく。資本財の投資もあり、実験施設も新規開設しており、施設も拡張している。今後も変わらない。過剰設備と考える部分ではリストラも行っている。事業体制をそもそもの事業の目的に応じて整理するのは極めて自然な行為だ。また成長とともに雇用も同様に拡大していくべきだ。企業を成長させるのが大切で、顧客に喜ばれ、従業員にも良い対応が、株主にも良い結果を生むと思う。
ペンタゴンはシリコンバレーの各企業に寄り添うようだ。これで事業に対する考え方が変化するだろうか。また新規企業、イノベーション企業の役割をどう見るか。
国防産業なかんずく当社はイノベーターとして知られている。当社の生命線は技術開発だ。今後もイノベーション実現につながる投資を続ける。当社の第5世代戦闘機は最も洗練されて他に類のない存在だ。当社の衛星、宇宙機の能力をみてほしい。オライオンは外宇宙探索のすぐれた手段となる。
いいたいことは製品群を全体で見てほしいということだ。現時点の製品群の維持につながる投資をしているとともに長期にわたり製品への投資もしていることで顧客が求める内容を提供できる。当社もシリコンバレーを利用するが、民間会社なら普通にしていることだ。そのため現地にも進出しているし、世界中に進出している。
新技術向け投資はどうなのか
特定の機能性能のため各種の調達をしている。パロアルトにある当社の技術センターは相当高度な拠点だ。事業投資も活発に行っている。当社の試験設備を見てもらえば、5大事業分野でそれぞれ新技術を重視していることがわかるはず。同時に現行製品群についても改良や性能向上を図っている。C-130がその例で、初号機は1954年に引き渡したものだ。今はC-130Jに大量の受注があり世界各地から発注が相次いでいる。米国政府も複数年度調達をする。宇宙探査事業もあり、衛星もある。ミサイル技術では有効に資金を活用していると思う。共同事業の相手に投資することもある。企業買収はあり得る。市場にある技術を活用することができるし、社内開発もできる。
社内資源を機動的に使うため何を考えているのか、また現在は機動的に動いていると言えるか。考慮すべき要素があるか。
それは間違いない。コア技能を持つものを周辺事業に従事させる。最近の企業買収事案を見てもらえれば、サイバーセキュリティーではIndustrial Defenderを吸収しており、同社はこの分野で専門技術があり、制御機器の製造もしている。そこに当社のITサイバーセキュリティ部門を合同させてソリューションの幅を広げている。更に防衛部門や情報処理部門とも合同させることで当社の強みを実現している。従業員は112千名で、すべての分野を網羅している。技術的な解決策が必要なら、社内全体から最適な技術者を抽出できる。
社内の価値観をどう導いているのか。大企業でありながら機敏な行動を引き出し、顧客目線に立たせるため何を実施しているのか。
企業としてお客様が当社にとって中心の存在と考える。顧客に焦点を当てる。当社の仕事は顧客に価値を提供することだ。そのため顧客を思って動くことが従業員にも良い結果となるし、株主他にとっても同様だ。これが基本だ。その他、全社的に顧客に中心を合わせる社内文化を染み込ませている。なんといっても最高の優先順位がお客様だ。耳を傾け、何が欲しいのかを理解する。そのニーズにはちゃんと反応しなくてはいけない。それには行動をもってその実現にあたる。これは社内に浸透していると思う。
社内でも仕事の進め方に変化が生まれる。顧客中心の価値観になれば正しい方向に仕事が進むはずだ。問題は迅速さをもってよしとするにしてもイノベーションの風土が生まれていなければならない。なぜなら、イノベーションこそ当社の生命線であるからだ。イノベーションは顧客に提供する価値につながる。すべて顧客につながるのだ。またイノベーションを培う社内文化を形成するためには社員がベストを尽くせる環境を整備し、社員が自分の考えに耳を傾けてもらっていると感じられるようにすることだ。そうすれば社員が共同して最高の発想を前に進められる。また社員の側には採択の期待が増えるだろう。そのインプットから最高の発想が実現に向かう。
LRS-B受注に気をもんでいることと思う。業界には結果次第でまたM&Aが増えるとの見方があるが、今後の見通しにも影響が出るか、つまり受注成功、失敗で状況がかわるか。また昨今のM&Aの状況についても聞きたい。
当社はボーイングと組み、LRS-B受注を目指している。米空軍向け案件では最重要事業だ。空軍にとっても重要な投資分野である。ボーイングと共同事業を組めて光栄に感じている。両社とも相当の経験があり、社内の能力を引き出し、最良の結果になると確信している。
契約の成否による業界への影響だが、これは正直言って当方の頭のなかでは重要な事項ではない。当社には強力で広い範囲の製品群がある。たしかにLRS-Bは重要な事業だが、その他に重要事業は多くあり、LRS-Bは仮に受注に失敗しても業績に大きな影響を与えない。とはいえ、提携先とともに受注獲得を目指している。成長機会を追求し他社から抜け出る事を考えないといけない。
ペンタゴンからはIRAD(自社資金による研究開発)を求める声がある。支出資金は返金するという。このやり方に意見はあるか。逆にペンタゴンへの注文はないか
ケンドール副長官はBetter Buying Power 3.0で見落としている点が多いと思う。ただケンドールは聞く耳を持っており、業界とは透明性をもってどうやって進めていくかを考えているのも事実だ。実施の方法を詳細に考えていると思う。この点、業界は開かれた議論をしている。対話の結果、ケンドールは部下に課題処理を命じている。これは非常に前向きかつ傾聴していることの意味は大きい。議論もどうやって実現するかに焦点があっている。.
ケンドールが望んでいる内容、なぜこの話題に真剣になっているかがわかってきた。企業は長期的視野に焦点をあわせるべきで研究開発に投資をしてもらいたいのだろう。ただ投資しても結果がすぐに出ないこともある。そうなると追加投資が必要だ。技術がものになるまでは試行錯誤を繰り返すこともある。ケンドールが望むように業界にルールを押し付けるのは時期尚早だと思う。業界はケンドールに耳を傾け一緒に作業して悪い方向に向かわないようにしたい。
強制予算削減策について。業界は2015年下半期でこれをどう終わらせるつもりなのか。放っておくと大変なことになる。(継続決議が出るかもしれない)強制削減が復活しないとも限らない。業界として議員連にどう伝えるのか
自分自身も含め業界は毎日メッセージを伝えているつもり。また当社の顧客(米軍)も同様だ。メッセージは同じで顧客に話すのか、業界に話すのか、だ。顧客それぞれがきびしい安全保障の課題に直面する中で予算がなく装備近代化ができず、紛争を解決できていない。これは米国の安全保障上看過できない事態だ。強制削減措置は一律カットにつながり、戦略目標の軽重と無関係だ。なんといっても国民の保護がつとめであり、同盟国や友好国と一緒に悪者に対処しなければならない。そのための投入資源がないと、どこかを切らないといけない。即応体制を犠牲にするか、近代化をがまんすることになる。ただし近代化を先送りしたり、技術投資を怠れば取り返しの付かないギャップが生まれてしまう。
防衛産業にも影響が出る。そもそも顧客はどこから技術を入手するのだろうか。またどこで生産をさせるのだろうか。答えはみな業界だ。生産しなければ性能も手に入らない。これは国家にとって不幸だ。技術力を持った人材が減れば、技術開発やイノベーションも衰退し、軍事優越性の維持が困難になる。だからこそ国民の保護のためにも業界は最高の能力を維持するべきだ。
同時に議員の間にはこんなことを言っている向きがある。「業界に強制削減必要ない。ロッキードを見ろ、株を買い戻しているぞ」
ではこう言いたい。企業は自社を運営し業務上財務上の目標を達成する。事業をつくっていかねばならない。ビジネスの基盤に似合ったサイズビジネスにしないとコストは上昇しつづけ、システムは予算環境厳しい中で顧客に高嶺の花になり手が出なくなる。ウォール・ストリートからの資金流入を惹きつけられる仕事をしないと、研究開発に投じる資金が足りなくなり、結果として顧客、わが国に最良の性能を有する装備を提供できなくなる。そこで業界トップの我々の仕事は企業の成長を持続させ利益が出る形に維持することであり、投資家の資金をひきつけることであり、これで顧客に当社の有する最高の性能を有する解決策を提供できることになる。立法府も各社に同じことを期待しているはずで、企業運営で付加価値を実現することだ。■
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