いろいろ問題がついてまわるF-35ですが、IOC獲得だけは予定の時間をぎりぎりで達成したようです。ただし、IOCでありフル性能が実現するのはまだまだ先のようですし、まだまだ今後が難航しそうな同機のことですからどうなりますやら。岩国に真っ先に配備されるのはいいのですが、また反対運動が出てくるんでしょうか。心配です。
U.S. Marines Declare First F-35B Squadron Operational
計画から遅れること5年、予算も数十億ドル超過し、計画中断の試みを断ち切り、F-35B共用打撃戦闘機がついに米海兵隊で供用を開始する。
- 7月31日に12カ国のトップを切り海兵隊は短距離陸垂直着陸型のF-35Bの初期作戦能力(IOC)獲得を宣言した。
- 第121海兵隊戦闘攻撃飛行隊 (VMFA-121)は駐屯地ユマ(アリゾナ州)がIOCを5日間にわたる作戦即応度観閲(ORI)を7月17日に受けた。
- 「VMFA-121にはブロック2B仕様の10機が配備され、運用展開の準備が完了した」と海兵隊司令官ジョセフ・ダンフォード大将が発表した。「近接航空支援、攻撃・防空空中戦闘、迎撃、強襲支援、武装偵察を海兵隊陸上部隊とともに実施することが可能だ」
- F-35支持派にとって今回の達成は戦術航空の新時代の幕を開くものとされ、単発ステルス機が今後各国で投入されることを期待するものだ。通常離着陸用のA型が需要が一番高く、1,763機を導入する予定の米空軍も2016年12月にIOCを宣言する予定だ。同盟国ではイタリア、ノルウェー、デンマーク、オランダ、カナダ、トルコ、オーストラリア、イスラエル、日本、韓国が運用する。C型は米海軍専用の機材で発着艦時を考慮して主翼が大型化している。海軍のIOCは2019年2月の予定。
- VMFA-121配備の10機が今回のIOCで作戦可能となった。同隊は以前はF-18ホーネットを飛ばしていた。
- 今回のIOCはロッキード・マーティンの2BソフトウェアのためIOCも限定つきとなる。AIM-120空対空ミサイル、500ポンドレーザー誘導爆弾、2,000ポンド共用直接攻撃弾の利用が可能となる。ただしソフトウェアの制約で各装備は機内兵装庫からの運用に制限される。今後のソフトウェアの改訂で外部搭載が可能になる。
- ただし、海兵隊航空副司令官ジョン・デイヴィス中将は同機はF-18ホーネットやAV-8Bハリヤーより強力だと力説する。今回のソフトウェアは近接航空支援や航空阻止ミッションの「基礎」部分をサポートするほか、防空網の「限定的」制圧に有効だという。
- 海兵隊はハリヤーを2026年に退役させ、ホーネットは2030年まで使用すると海兵隊報道官ポール・グリーンバーグ少佐は説明。F-35Bを配備する第二の非応対はVMA-211(ハリヤーを稼働中)で2016年になる。その後VMFA-122(現在ホーネットを配備)が2018年に機種転換する。
- 完全作戦能力 (FOC) の獲得は 2017年度第四四半期でその時点で2001年10月にはじまった機体の開発期間も終わりを迎えているはずだ。そして海兵隊に念願の3Fソフトウェアが届き、より多くの兵装の利用が可能となるほか、電子攻撃能力も使えるようになる。
- デイヴィス中将によれば最初の飛行隊で懸念しているのはミッション能力の引き上げだという。VMFA-121の各機は当初およそ60%のミッション実施が可能だという。いかにも低い数字のようだが、作戦投入開始時の想定水準はそんな程度だという。というのも各機はロッキード・マーティンのフォートワース工場で比較的初期に完成した機体であるのも理由のひとつだ。差新の生産機の標準に合わせるため各機には改修が多数必要となる。開発と生産を並列して進めたためで、同機に懐疑的な向きは早くからこの欠陥を指摘していた。
- デイヴィス中将の考える最終目標は80%のミッション実施率で、開発完了までにこの水準になると見ている。だがこの引き上げを左右するのがスペア部品だ。部品の在庫があるかどうかで機体の保守点検時間や飛行の可否が影響を受ける。
- もうひとつ制約になりそうなのが2Bソフトウェア搭載の機体では多機能高性能データリンクMultifunction Advanced Data Link (MADL)が利用できないことだ。MADLは空中、地上でのパイロットの状況把握データを秘匿共有する能力がある。4機編隊で運用するとMADLは2機の間でしか利用できない。対策として海兵隊は2機ずつを旧式のLink 16データリンクで結ぶことにしている。
- 問題はLink 16が秘匿性にかけることで、発信すれば敵も探知することが可能でF-35の位置がばれてしまうことだ。MADLは特殊波形と指向性アンテナを使い、ステルス性を損なうことなくデータを伝えるので翼整備された防空空域に突入する同機を助ける。
- F-35関係者はソフトウェアパッチで4機編隊でのデータリンクの実効性を引き上げようとテストしてきた。だが現時点で期待されるデータ融合機能は機能しない。それでもIOC宣言をしたのはホーネット、ハリヤー各機をなるべく早く退役させるためだ。
- 既存各機にはステルス性がなく、ロッキード・マーティンが称する「センサー融合」つまり統合視覚画像を新型ヘルメットに写すこともできない。
- しかしF-35反対派には既存機種メーターの強力なロビーストがあり、F-35の価格が高騰していることを問題視しているが、同機はステルスの代償として武装搭載量、機動性の双方を犠牲にしていると主張。これに対しデイヴィスは新技術のもたらす効果は計り知れないと反論する。
- 海兵隊はペンタゴンの歴史上もっとも高価な戦闘機ともっとも高価な回転翼機V-22をともに運用することになる。
- F-35Bの最新価格は単価100.5百万ドルで、昨年秋にロッキード・マーティンに交付された契約によるものだ。F-35Cは製造規模が小さいこともあり、111.1百万ドルになっている。ともにフライアウェイ価格で開発費用は反映していない。
- 価格と技術課題からF-35は一度ならずとも打ち切りの危機に直面した。その後ペンタゴンが開発体制を再構築し、B型を優先し、技術的に一番困難な同機をまず実現することにした。このため米空軍向け機体の稼動が遅れた。またテスト結果が芳しくなく、当時の国防長官ロバート・ゲイツが2011年にB型を「保護観察対象」にしている。結果が改善し今回のIOCにつながったわけであ。
- 昨年のロイヤルインターナショナルエアタトゥー、ファーンボロの両航空ショーにF-35Bは展示sれなかった。F-35Aのエンジン事故で機体全部が飛行停止になったためだ。エンジン火災の原因は第三段ローターにあったが、すでに改良が完成済み機体と新規生産分に施されている。B型は来年のエアタトゥーに出展され、その後ファーンボロでも公開される予定だ。
- 海兵隊は420機のF-35を調達する予定で、うち353機がB型で小型強襲艦での運用を想定し、大型空母運用型のC型は67機だ。
- VMFA-121は2017年に岩国海兵隊航空基地に移動し、常駐する。■
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