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C-2グレイハウンドの退役が迫り、オスプレイに交代するとCOD任務はこうなる

With the Osprey Waiting on Deck, Delivery Service to Carriers is About to Change

オスプレイの艦上運用が近づき、空母への貨物輸送任務が変わる

Farewell to the Grumman C-2 Greyhound, which has been running supplies at sea for more than 50 years.

海上の空母へ物資人員を50年にわたり運んできたグラマンC-2にお別れのとき

MV-22 Osprey
MV-22オスプレイがUSSワスプに接近している。2018年撮影。新型オスプレイが長年稼働してきたグレイハウンドに交代し2021年から空母への補給活動に従事する。 (US Navy / Specialist Daniel Barker)
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OCTOBER 2019
暁の空をノースロップ・グラマンC-2グレイハウンド「ローハイド78」がフロリダ北東沖合100マイル地点の空母USSハリー・S・トルーマンに向かい悪天候の雲を通過している。トルーマンは9ヶ月におよぶ配備の準備中で艦載機でいっぱいだが離着艦はしていない。今日は艦長の交代式典の日だ。ローハイドの搭載貨物は軽微だ。F/A-18のアクセスパネルがかさばるものの一点、乗組員の私物二十点ほど、乗客用座席が28も空席だが、不安を隠しきれない筆者が一席を占める。数分前に別のC-2が式典に参列する幕僚多数を乗せ先に飛んでいる。
C-2はいとこの関係のE-2ホークアイとともに最重量の空母艦載機だが、パイロットは空母艦上での運用に誇りを感じている。高度800フィートで空母艦上を通過し、機体を激しく左バンクし、フラップと降着装置を下ろし、高度と速度を下げる。グレイハウンドがトルーマンのグライドスロープに乗ると機体は甲板の三本のワイヤーを捉え、停止する。即座にパイロットは主翼を畳み、駐機場へタキシーさせる。
機体移動中でもランプは下がり、トルーマン乗組員が集まってくる。貨物は無造作に車輪付き黄色バスケットに放り込まれる。F/A-18用パネルは艦の下方デッキに運ばれた。交代する艦長が最後の訓示を艦内PAでしているがグレイハウンド乗務員はまったく気にする様子が無い。かわりに天候をチェックし、貨物マニフェストを最終確認し、補助発電機を点検し、艦のエアボスの指示を書き留め、飛行甲板要員と打ち合わせている。訓示が終わった。搬送する乗客9名が揃い、機内に乗り込む。一名は腕を骨折し、本土に移送し直ちに治療を受ける。エンジンを始動し第三号カタパルトへタキシーしたと思ったらローハイド78は発艦していた。目的地は海軍航空基地(NAS)ジャクソンヴィルだ。同機が艦上にあったのは40分足らずで、空母補給物資輸送(COD)任務を教科書どおりに実施した。
Persian Gulf C-2A Greyhound
2015年にISIS攻撃ミッションでペルシア湾に展開するトルーマンに着艦しようとするC-2Aグレイハウンド。このあと、バーレーン基地に戻ったはずである。 (US Navy / Specialist 3rd Class Justin R. Pacheco)

空母打撃群は予備部品、補給物資、乗組員がそろい移動準備ができたが、艦には絶えず物資、人員の補充が必要だ。そのための唯一の手段がC-2で貨物10千ポンドあるいは28名を一度に運ぶ。米海軍の空母が出港すればグレイハウンド2機が補給活動を続ける。
C-2は各艦航空団に所属しない点でその他艦載機と別の存在だ。米海軍は飛行隊二個を運用し、VRC-30がNASノースアイランド(サンディエゴ)、VRC-40をNASノーフォーク(ヴァージニア州)があり分遣隊で太平洋、大西洋に展開する空母部隊をカバーする。分遣隊は空母出発時には艦載されているが、航続距離内に陸上目的地が入ると往復飛行を開始する。
空母が航行を続けると50名規模の分遣隊は基地から基地へと移動する。VRC-40では最初の移動先がアゾレス諸島になることが多い。その次にスペインのロタに一週間滞在し、イタリアのシゴネラへ移動し、クレタ島のソウダベイ、そして最後にバーレーンで空母打撃群がペルシア湾で展開する数ヶ月を過ごすことが多い。目標は一日二回の空母補給飛行を実施することだが距離の関係で一回となることンが多く、グレイハウンドの整備上の制約も受ける。VRC-40は今年7月時点で分遣隊2個を運用しており、ひとつはジャクソンヴィルからトルーマンを支援し、もう一隊はバーレーンでエイブラハム・リンカンの支援にあたっていた。アイゼンハワーの派遣に備え三番目の分遣隊の編成準備に入っていた。
陸上にもどれば各分遣隊は独自に機体整備や貨物輸送を計画し、乗務員の滞在を手配する。長年に渡りC-2乗務員は自給自足体制の評価がついている。
とはいえC-2乗組員は陸上で毎晩過ごすことができ、艦乗組員の羨望を集める。日当での宿泊費やりくりや各地のバー飲み歩きといった話題は口にしないよう釘は刺される。「航空団はわれわれが朝10時に起床し、コーヒーを飲んでから仕事に入り、帰還するとビーチで酒を飲んでいると思われているようですが」とVRC-40隊長エリック・ブロムリーが語る。「一時間もしないうちにわれわれがどこかに飛んでいくと不思議がられます。たしかにうまくこなしていますが、外から見るほど楽な仕事ではありません」
CODの第一の仕事は人員輸送だ。赴任や休暇掛けの乗組員や修理専門員、医療要員や交代要員以外に防衛産業の技術要員や視察に訪れる提督幕僚が絶えず艦にやってくる。なんと言っても空母は米国の影響力を広げる一番のツールであり、関係国の要人にも空母の威容を見せつけることが多い。運ぶ貨物は重要かつ時間で制約のあるものだ。HH-60シーホークのローターブレイドや艦内の温水パイプ修理部品や着艦ギアのピストンなど必要な貨物ならC-2が運んでいる。
「3日前ですが本当にゴミ入れを運びましたよ」とブロムリーが言う。その他の乗員から新鮮卵を満載したとか、花、コピー用紙、されは作業用車両1台まで運んだという。
The C-2—unstable in pitch, roll, and yaw—is a handful to fly, much less land aboard an aircraft carrier, yet this crew appears to execute a flawless approach to the <i>Abraham Lincoln</i> in 2018.
C-2はピッチ、ロール、ヨーが不安定で操縦は容易ではない。写真ではエイブラハム・リンカンへ文句のつけようが無い着艦をしているのがわかる。 (US Navy / Seaman Shane Bryan)

グレイハウンドは名前の由来となった競争犬のすっきりした姿とは似ても似つかない。むしろ別の由来のバスに近い。小型ターボプロップ機で垂直安定版4枚が鹿の角のようにつく。
C-2は操縦も難しい。とくに練習過程を終えたばかりの新米パイロットには。直系のE-2ホークアイ同様にピッチ、ヨーが不安定だ。グレイハウンドではロールも不安定となる。「これまで総縦してきたT-6、T-44、T-45と比べてもこんなに操縦が大変で肉体的にストレスを感じさせる機体はありません」とパイロットの一人が述べた。
ヴァージニア南部の上空8千フィートでパイロットのポール・マステラーがコパイロットのストーヴァル・ナイトとC-2の飛行特性を実演してくれた。「プロペラが大きく強力なため、ラダーを相当踏み込まないとブレイドの力に勝てないのです」とマステラーは飛行前に説明してくれた。「この機体に初めて乗るパイロットが混乱するのは左旋回しようとすると右ラダーを相当強く踏んで連携させる必要があるからです」
飛行中に出力を落とすとC-2の機首はすぐ左ドリフトとなり高度が落ちる。出力を上げると機首は右ドリフトを開始する。オートパイロットは高度と進路を維持するだけで、突然機能しなくなることが多いため、パイロットは全行程を手動操縦することになる。
こうした特性は艦載機としては理想的と言えないし、空母の基準から見てC-2は巨大機になる。翼幅81フィートだと着艦時に左右の余裕は10フィートずつしかない。着艦についてブロムリーは「何回やっても変わらないし、楽にもならない。毎回違う状況になる」と言い、「前の体験が役に立たない。毎回集中して自己保存本能をフルに使い、安全かつ予測できる形で着艦するだけです」
マステラーもフェントレス海軍着陸場で最終アプローチを実演してくれた。ノーフォーク配属のパイロットが空母アプローチの訓練用に使う施設だ。スロットル、操縦桿、ラダーをひっきりなしに操作してグレイハウンドをグライドスロープに向かい風で乗せた。着陸信号士官が地上からギリギリのタイミングで合図をしたのはいかにもC-2らしい着陸だ。
航空管制官から機体のトランスポンダーが作動していないと言ってきた。レーダー反射だけ識別できたので一定の地点や高度についたら連絡してほしいとのこと。空母アプローチの模擬を2回するとフラップが作動しなくなり、上がったままになったのでノーフォークでは高速着陸をせざるを得なくなった。
「総合的には非常に信頼性がある機体です」とブロムリーは述べる。「機齢30年ですが以前からの技術をベースにしています。故障はちょくちょくありますが整備員が優秀です。そのためにいるわけで、着実に修理してくれます」
艦上輸送機は当初は戦闘部隊の「余剰機材」を使い、兵装を取り外し座席と貨物スペースを作っていた。最初からCODとなった機材は第二次大戦の終結前にはなかった。当時はTBMアヴェンジャー雷撃爆撃機を6名搭載用に改装していたが、1950年には大型双発のグラマンC-1トレーダーが登場した。同機は当時は新型の艦載対潜哨戒機を改装したものだった。
冷戦初期の戦略思想では弾道ミサイルや空軍の大型爆撃機に注目が集まったが、海軍は空母が戦術核兵器運用で役目を果たせると説得し、超大型空母の建造を認めさせた。問題はC-1の貨物搭載量が過小で核兵器あるいはジェットエンジンの輸送ができないことで、特に当時のジェットエンジンは稼働中に使用不可となることが多かった。1960年に新型早期警戒機E-2開発が始まり、海軍はC-1後継機を同機から作成することとした。E-2の機体を輸送機として再設計させた。この際の改修は本格的でC-2試作機がまず2機製造された。一機はロングアイランドサウンドでのテスト中に墜落したが、残る一機を試用したあと、海軍はグラマンに17機製造を求め、引き渡しは1966年開始となった。
C-2部隊は海軍航空のキャリア上で吹き溜まりになった。海軍では機種転換はめったになく、グレイハウンドは小規模で魅力がなくキャリヤでは先が無い存在だった。しかし1980年代に入ると次第に状況が変わったのはC-2乗員がE-2搭乗員と統合され、キャリアパスがCOD以外にも広がったためだ。しかし一旦できた行き詰まりの印象を変えるのは時間がかかり、現在でも解消していない。
空母は機材に過酷な環境で1980年代に入ると海軍はグレイハウンドの後継機材を模索しはじめた。だが構想から先に進んだものは皆無だった。(737の艦載型提案もあった)結局海軍はC-2A(再調達)として再生産を決定し、今回は39機が生産され、強力なアリソンT56エンジン、エイビオニクス更新、新型補助エンジン、貨物室の強化が実施された。追加生産は1985年から1990年にかけて行われた。
V-22 landing
V-22が性能を発揮するのは垂直着艦時で、C-2では無理な小型艦や揚陸艦への着艦も可能だ。写真は揚陸強襲艦ニューヨークへの着艦。(2015年) (US Navy / Specialist 3rd Class Jonathan B. Trejo)

そのC-2A(R)に休息のときが必要だ。VRC-40で最古参の機体(識別番号1162144)は過酷な空母着艦発艦サイクルを1,000回こなし、飛行時間も11千時間超だがまだ飛行可能だ。機種として退役は2024年予定だが当初の2027年から前倒しになっているのはミッション即応率が予算を投入しても2018年にやっと40%になったにすぎないためもある。現在では問題を抱えた機種は改良するより引退させることが多い。
そこでベルボーイングCMV-22オスプレイに交代する。CMV-22は外観こそ海兵隊と空軍が運用するV-22と酷似するが、内蔵燃料タンク、高周波無線装置、機内案内装備が追加されている。
オスプレイにはグレイハウンドと違う点もある。まず良い面ではCMV-22の航続距離が伸びる。6千ポンドのペイロードで1,150カイリとなるが、C-2は850カイリだ。グレイハウンドはばら積み貨物搭載だが、オスプレイはパレット式となり予め貨物を準備して積み込み時間が短縮できる。垂直離着陸方式のため空母への接近を遥かに低速で可能とし、機体にストレスとなる拘束ワイヤ着艦やカタパルト発艦が不要となる。CMV-22パイロットの第一陣は夜間着艦訓練中で、C-2では困難だった内容だ。
だがオスプレイには欠点もある。まず機内容積が小さく、従来どおりの人数や貨物が運べない。またF-35用エンジンも保護キャニスターのままで対応できない。これはCODのもともとの要求内容だったはずだ。またティルトローターのためエンジンナセルが垂直方向になると飛行甲板が排熱で損傷を受ける。機内は非与圧のため人員を乗せて悪天候では高高度飛行できない。ティルトローターは複雑な構造で整備工数もかかる。CMV-22分遣隊は従来の2機から3機へ、50名体制も88名に増える。
marines in Osprey
V-22にはC-2なみの物理的空間がない。もともとオスプレイは海兵隊員を強襲作戦で運ぶため開発された。(写真は2014年のタイでの演習時のもの)また大容量の貨物運搬も想定していない。CMV-22は新型だが機体が拡大しているわけではない。 (DOD)

CMV-22編成の最初の飛行隊VRM-30は2018年11月にNASノースアイランドで発足ずみだ。パイロットと整備員は海兵隊のV-22訓練飛行隊が有るMCASニューリヴァー(ノースカロライナ)で訓練中で2019年10月末にも新型CMV-22の一号機を受領する。
VRM-30を率いるのはC-2のベテランパイロット兼教官のトレヴァー・ハーマンで新型機が気に入っている。「ホバリングするのは初めてで、全く新しい経験だった」「ナセルの方向転換で速力をあげるんですが、失速すると思いましたが、最初からそういう設定なんですね。実にクールです」
CMV-22初の展開は2021年に予定され、新型機としては異例の早い時期での実用化だが、最初の展開はいつも学びの機会であり、ハーマンも心配していない。「なんでも最初は大変ですが、色々想定を試しながら調整していきます」
グレイハウンドを40年飛ばしてきたジェイムズ・ウォーレスも「すごい機体でヨーロッパ各地の上を飛び、艦にも飛ばし、その他いろいろ試してみました」という。海軍を退役しウォーレスは航空関連企業数社を起業した。「C-2の体験から学んだ再興のことは航法、フライトプランのまとめからであり、税関当局との交渉もあり、すべては海軍の他の部署では体験できないことです」
古い軍事上の言い伝えだが、アマチュアは戦術を勉強し、プロは兵站を学ぶという。グレイハウンドは空母部隊の複雑な補給活動で不可欠な要素として任務を黙々とこなしてきた。C-2はトップガンに登場することはないが、マーヴェリックも同機がなければ航海中に愛機をとばせない。CMV-22がそのままグレイハウンドの後継機になれるかは不明だが、C-2を飛ばしてきた部隊は同機の運用で学べたことを決して忘れないだろう。■
コメント:今回はちょっと長文になってしまいました。空母への人員物資の補給活動は大変そうですね。世界を舞台に展開する米海軍はその必要があるのですが、日本の「空母」第一陣は果たしてここまでのシステムが必要でしょうか。そのうちに必要になりそうですね。

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