ブログ主の好きなISRのブラック機材の話題です。Aviation Weekでも「らしい」「と思われる」と書かざるを得ないくらい情報が限られているのですね。
USAF Unit Moves Reveal Clues To RQ-180 Ops Debut
米空軍部隊の動きからRQ-180の運用開始へ向けた推移がわかってきた
ノースロップ・グラマン開発による大型・極秘無人機の存在をAviation Weekが真っ先に報じてほぼ6年になる。現時点で同機が米空軍で通常に運用されていることが明らかになってきた。同機は敵領空を突破できる情報収集監視偵察(ISR)任務に投入されていると思われる。
RQ-180の制式名称といわれる同機の設計は先端的で2010年に初飛行したと見られ、2014年から飛行テスト評価に入っていた。Aviation Weekが入手した資料では同機は今年になり再編された第427偵察飛行隊のあるビールAFB(カリフォーニア州)で供用を開始している。米空軍は同期に関し一切の論評を拒んでいる。
同機の画像そのものが限られているが、新たな情報から飛行テスト初期段階、開発過程、初回配備に至る全体像が明らかになってきた。公開情報で同機の存在が明らかになった2013年以前の足取りが明らかになり、同時にその後のテスト、運用評価がカリフォーニア、ネヴァダ両州で主に展開されたこともあきらかになった。
敵領空内に侵入するISRミッション用に開発が始まったRQ-180はロッキードSR-71の退役(1999年)が経緯で、ノースロップ・グラマンが米空軍に提示した2005年の大型無人戦闘航空機材(UCAV)設計提案から生まれた。当時、同社はボーイングを相手に小型無尾翼設計案で米空軍米海軍向け共用無人戦闘航空システム(J-UCAS)の売り込みを図っていた。
だがJ-UCASは2006年に事業中止となり、海軍専用のUCAV空母運用適合性実証事業に変貌し、239百万ドルの予算要求で空母搭載長距離UCAV実証事業になった。
同時に空軍予算は極秘高高度長距離 (HALE) 事業に流用され、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの三社競合になったと見られる。ノースロップは主翼を延長したX-47Cを同時期に公表した。そのうち最大の機体寸法となる型では翼幅172フィート、ジェネラル・エレクトリックCF34双発で兵装ペイロード10千ポンドというものだった。
Aviation WeekはRQ-180の存在を初めて報じ想像図を掲載したが、業界筋は当初から実機は公表されたコンセプトとは異なるとの指摘していた。追加情報では最終形は同社の全翼機形状に近く、空軍が進めるB-21レイダーにも似通っている。ノースロップ・グラマンは当初はB-2同様の後縁部構造を想定していたが、空軍が低空侵入任務を追加したためより強固なノコギリ歯構造に変更した。
RQ-180には空軍研究本部(AFRL)向けに次代のステルス高高度無人偵察機として同社が手掛けたセンサークラフトSensorCraft 事業の影響が見られる。2002年にAFRLはセンサークラフト構想数点を公表し、中にノースロップ・グラマンの全翼機設計案も含まれていた。その二年後に、同社からAFRLに協力し先端的一体型アンテナ技術をセンサークラフト向けに12百万ドル5カ年契約で作業中との発表があった。これは低帯域構造アレイ(Lobstar)と呼ばれ、「複合材製主翼にアンテナ類を組み込むことで偵察能力が向上する」と同社は評していた。
2007年に、同社幹部は大型秘匿案件の受注見通しを明らかにし、空軍向けHALEの受注を示唆していた。同年6月までにネヴァダ州グルーム湖にある空軍の極秘施設エリア51のウォッチャーが基地内「サウスエンド」で大型格納庫の新規建設を伝えてきた。建屋の大きさと外寸から翼端サイズの大きい機体向けと見られた。
新格納庫は2008年に入ると完成に近づき、ノースロップ・グラマンの会計報告では同社が大型極秘機材開発契約で20億ドルでISR用UAVを画期的な低視認性(LO)と空力性能の効率化を実現するとあった。業務を担当したのは同社社内の先端技術開発センターで、ロッキードマーティンのスカンクワークス、ボーイングのファントムワークスに相当する部門だ。
2009年には同社は定率初期生産をRQ-180で開始し、空軍は機材評価の準備としてフライトテスト用の組織をグルームレイクで「マッドハッターズ」との名称で発足させた。空軍は無人航空システム(UAS)のロードマップを公表し、LOで上空侵入可能なISRを「特別型」UASと位置づけた。
Aviation Weekが新たに入手した情報では2010年が同事業の分かれ目だったとわかる。試作一号機V1が2010年8月3日に初飛行したらしい。初飛行に先立ち、ノースロップ・グラマン社有機のビーチ1900D支援機が頻繁に施設へ飛行しており、2010年5月にサウスエンド格納庫に駐機している様子が衛星写真で確認されている。
試作一号機V1は14ヶ月にわたり飛行テストを実施し、二号機V2も2011年11月からテストに加わった。さらに3機が15ヶ月の評価テストに投入された。
第5号機が初飛行するとRQ-180のテストはエドワーズAFB(カリフォーニア州)に移り、第53試験評価グループ分遣隊1が2014年3月に現地入りした。分遣隊1の任務の運用テスト評価はビールAFB駐留の分遣隊2が適役だった。ロッキード・マーティンのU-2R/Sおよびノースロップ・グラマンのRQ-4グローバルホークの評価で実績があるためだ。
同年後半に活動が強化され、V6初飛行が2014年9月に実施された模様だ。2014年末から2015年初めにかけ、第15テスト飛行隊の分遣隊2とされる部隊がエドワーズAFBに現れ、新型機の性能評価に加わり、作戦投入が近づいた。
第15テスト飛行隊はエグリンAFB(フロリダ州)に本拠を置く第53航空団の隷下にあり空軍の高優先順位機材の迅速調達むけテストの統括が任務だ。2014年公表の第53飛行団広報資料によれば第15飛行隊は「指定システムの開発で運用テスト管理業務を行い、第一線への機材引き渡しを加速化する」のが任務とある。分遣隊2に近い分遣隊1が当時はロッキードのR-170センティネルのテスト業務をクリーチAFB(ネヴァダ州)で実施していた。
2018年11月は7号機が初飛行したと見られ別の転機となった。更にその8ヶ月後に、第一線部隊での供用に向け別の一歩がやってきた。第9作戦グループ分遣隊2がエドワーズ南基地にした。第9作戦グループはビールに本拠を置く第9偵察航空団の飛行担当部門で、U-2R、RQ-4やビーチクラフトMC-12Wリバティの訓練や機体準備にあたる。
分遣隊2の発足は2016年でその後は初期運用に向けた準備が最終段階に入り、長距離最終試験ミッションがエドワーズを起点に極秘に展開されたのは2017年早々のことらしい。詳細はあきらかになっていないが、自律航法装備の有効性を高高度で試したものと思われ、北極上空を利用したらしい。
このミッションを実施してからRQ-180は2017年に初の配備となったようだ。同年8月に第9作戦グループに支援隊が2つ加わった。ビール基地の分遣隊3と、アンダーセンAFB(グアム)の分遣隊4で運用に備えたテコ入れだ。このうち分遣隊3配膳はグアムでRQ-4を運用した実績があり、分遣隊4はシゴネラAB(イタリア)でグローバルホークを運用していた。
その翌年2018年にもう一つの部隊がビールに生まれ、機体のテストとともに運用前準備の評価を任務とした。第605試験評価飛行隊に分遣隊3が生まれ、第53試験評価グループの分遣隊1はエドワーズAFBで解隊された。
同隊の装備人員は新設の第417試験評価飛行隊に引き継がれたとされる。同隊配膳はC-17およびYAL-1空中レーザー装備のテストを担当していた。ただし、同隊の本当の任務はB-21テストの準備にある。だが同年の空軍協会会合では新型爆撃機のテストは第420試験評価飛行隊が担当と案内されていた。
RQ-180供用に対応すべく支援体制強化は2018年から2019年はじめにかけ進み、第9作戦グループの分遣隊9がビールで同機の教導を開始した。同グループの任務がをU-2のISRミッションの訓練、立案、実施、およびRQ-4関係者の訓練にあることから同隊がRQ-180運用の支援、訓練にあたっていると考えるのが自然だ。
今年は最終調整の段階でビールを中心に第9作戦グループ分遣隊3が4月に解隊され、人員装備はここでも第427偵察飛行隊に移転された。同隊はMC-12Wを運用する影の部隊で同機が米陸軍に移譲されたため2015年11月に一度解隊していた。ただし公開情報を見ると427偵察飛行隊の司令は2015年から在籍しており、その間は同隊は公式には存在していないことになっているのだが。
米空軍は同隊がどの機種を運用しているのか開示していないが、427偵察飛行隊は第9作戦グループ分遣隊5、および605試験評価グループ分遣隊3とともに共通ミッションコントロールセンターを4月23日開所している。同センターは「戦闘指揮官に自由に拡大縮小でき、ニーズに合わせた情報業務を制空権が確立されていない空域で提供すること」にあると空軍は説明している。「ソフトウェア、ハードウェア、人員、機材を駆使し同センターはC2で生産性を引き上げ、タスク実施の連鎖を短縮し、ヒト中心の通信活動を削減する」という。■
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