What We Know About The U.S. Raid on Abu Bakr al-Baghdadi in Syria. バグダディ強襲作戦で今わかっていること
今回の作戦に投入されたと見られるMH-60ブラックホーク特殊作戦仕様機。 (Photo: U.S. Army/160th SOAR)
大規模作戦に機材多数が動員され、綿密な作戦調整のもと電光石火の行動が展開された。
ISISの創設者にして指導者のアブ・バカ・アル-バグダディが米特殊作戦部隊の「危険かつ勇敢な夜間強襲」によりシリア国内で週末に殺害された。ドナルド・トランプ大統領は強襲作戦は「最高水準」の実施だったとし、米特殊作戦部隊を称賛している。
世界各地の報道機関が今回の展開を報じており、米大統領の報道発表の様子を中継した。今回の強襲作戦で興味深い内容が浮上している。
米軍は作戦内容について口をつぐんているが、大統領発言およびその他報道内容から実に興味深い点が推察できる。
アブ・バカ・アル-バグダディ (Photo: File via Wikipedia)
まずNBCの報道番組「報道陣に語る」で安全保障担当補佐官ロバート・オブライエンが作戦名称については公言していないものの、2015年にISISにより人質となった挙げ句殺害された米人道援助専門家カイラ・ミューラーからヒントを得ているとした。CNNのマイク・キャラハンは「NBC番組でオブライエンは『統合参謀本部議長がカイラ・ミューラーに由来を求めた作戦名称をつけた。本人が受けた苦しみが念頭にあった」とし、一般にも理解してもらえるはずと付け加えた」と報じた。
統合参謀本部の議長米陸軍大将マーク・A・ミリーとマーカス・エヴァンス准将(特殊作戦部隊副司令兼対テロJ-3統合参謀本部メンバー)がホワイトハウスの緊急事態対応室で強襲作戦の実況を見ている。作戦が米陸軍特殊部隊が中心で展開されたと考えてよいだろう。これはオサマ・ビン・ラディンを殺害したネプチューンスピア作戦(2011年)が米海軍の特殊部隊中心で展開されたのと好対照である。
今回の強襲作戦の実施場所 (Photo: via DailyMail)
CNN含む一部メディアでは米陸軍の特殊部隊作戦分遣隊D別名「SFOD-D]が実施したと伝えている。これは『デルタ』と一般社会で呼ばれる部隊だがデルタは米陸軍の制式名称ではない。
CNNのアナリストのひとりは米陸軍の第160特殊作戦航空連隊(第160 SOAR)『ナイトストーカーズ』が「ヘリコプター8機を投入し、特殊部隊をシリア北西部のバリシャ近郊に送り込んだ」と述べている。
特殊作戦向けの機材は3機種あり、あるいはその組合せで強襲作戦に投入されたのかもしれない。MV-22オスプレイは空軍の特殊作戦部隊の他海兵隊が運用している。MH-60ブラックホーク及びMH-47チヌークは陸軍の第160特殊作戦航空連隊が運用している。
ツイッターに出た映像は今回の強襲作戦のものとされる(Photo: via Twitter)
CNNのバーバラ・スターの報道では「今回の作戦を実行した米軍部隊の一部はイラク国内から発進しシリア北西部にヘリコプターで移動したと米軍筋から聞いた」とある。
米大統領は目標地点への飛行はおよそ「一時間10分」と述べており、特殊作戦用回転機がトルコのインチリック基地のような地点から出発すれば無給油で飛べる範囲だとわかる。キプロス島のRAFアクロティリ基地を発進したと述べる者もいる一方で、イラクのエルビルから飛んだとする向きもある。
8機が動員されたとすると特殊部隊隊員は60名から80名の規模となる。ここには特殊訓練を受けた軍用犬も含まれる。
その一頭が作戦中に傷を負ったと伝えられている。これはバグダディが地下トンネルに逃げてから「爆弾ベスト」を点火し、本人および「こども3名」が死亡した際のこととされる。該当軍用犬はその後無事脱出しているという。
バグダディ強襲作戦の現場とされる写真がツイッターに出た (Photo: via Twitter)
大統領発言からその他に判明しているのはリアルタイム及びほぼリアルタイムの情報活動が強襲作戦立案に役立っていることだ。大統領は「(バグダディが)そこにいることがわかっていた」とし、「現地の様子もわかっていた。トンネルがあることもわかっていた」という。こうした大統領発言から目標地点は相当詳しく偵察されてから強襲作戦に至ったことがわかる。また情報活動には人的情報収集(ヒューミント)や航空偵察が含まれていることがわかる。航空偵察には有人機が使われた可能性がある。
10月27日ニューヨーク現地時間14:32にニューヨーク・タイムズのエリック・シュミット、ヘレン・クーパー両名が「イスラム国指導者アブ・バカ・アル-バグダディの居場所はバグダディの妻の一人を逮捕し尋問したことで判明した米関係者二名画明らかにした」と報じた。
米大統領は強襲作戦のうらで展開された偵察活動を称賛し、作戦の様子は「明確かつ完璧に」目にすることができたと述べた。映画を見るようだったという。この大統領発言から軍務経験がないもののメディアに造詣が深い本人の言として特殊部隊がカメラ数台を現地に運び作戦の進行に合わせホワイトハウスに中継したが2011年のオサマ・ビン・ラディン強襲作戦時を上回る精細な映像を送ったのではないか。大統領からはさらに「夢中で見た」との感想を述べている。
大統領、副大統領、国家安全保障担当補佐官ロバート・オブライエン、マーク・エスパー国防長官、統合参謀本部議長マーク・ミリー大将が作戦実施を見守る写真がホワイトハウスから公表されているが、一部記者によればこの写真は事前に準備されたものだという。
大統領からはロシアの協力が大きかったと同国の動きを称賛する発言上がらい、また「トルコ、シリア、イラク、さらにシリア国内のクルド人」が今回の強襲作戦の成功を導いたと述べている。
大統領発言では強襲部隊は現地に到着した際に「銃火を浴びた」ものの目標地点に「二時間」とどまり、追加情報資料を押収しISISの動きの解明につながることが期待されるという。このことから強襲部隊には時間面の制約があり、利用機材の騒音が届かない別地点には着陸せずに奇襲攻撃の形をとったことがわかる。
今後さらに作戦の詳細が浮上する可能性は十分にある。ただし、今回の強襲作戦で得た情報から米軍等が地域内で別の目標を捕捉するとすれば、今回の強襲作戦は機密扱いのままとなるかもしれない。■
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