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速報 バグダディ殺害:イスラム国は本当に崩壊するのか

最高指導者の死亡で組織は崩壊と、能天気なことを言う向きがありますが、世界は警戒を解くべきではない、ということでしょうか。今回は速報としてお伝えしますが、まもなく作戦実施の情報が出てくると思いますので別途お伝えすることにいたしましょう。


Abu Bakr al-Baghdadi Is Dead (But His Legacy Lives on) アブ・バカ・アル-バグダディは死んだがその遺産は生き続ける

October 27, 2019  Topic: Security  Blog Brand: Middle East Watch  Tags: Abu Bakr Al-BaghdadiBaghdadiIraqSyriaISIS

ナルド・トランプ大統領は米軍がイスラム国指導者アブ・バカ・アル-バグダディを土曜日早朝に強襲したところ本人が自爆し、配偶者数名と死亡したと発表した。自身の子どもたちは生存しているという。
バグダディの排除は一つの勝利であることは確かだが、それをもってシリア北東部からの米軍撤退とシリア民主軍(SDF)との協力関係を放棄する大統領判断の裏付けにはならない。事実、SDFを指揮するマズロウム・アブディはバグダディ死亡の報をうけて発信したメールで今回の作戦は五ヶ月に及ぶ米軍とSDFの「共同情報収集」で実現したと述べている。
ましてやバグダディの死でイスラム国の脅威が終焉したわけでもない。
2006年に当時ニューズウィーク特派員のマシュー・フィリップスはブッシュ大統領が最高権威者カリフの用語を歴史的な背景を理解せずに口にしていると報じた。
カリフを自称したバグダディだがその死後にイスラム国はどうなるのか。イスラム国は最盛期にイラク、シリアの三分の一の地域を支配し、世界各地のイスラム過激派を刺激した。ヤジディ族や非イスラム教徒を奴隷にし、イスラム世界でも数世紀前に消滅した奴隷制を復活させた。従来の夢想を現実化した本人の実績は今後数世代にわたり共感を与えそうだ。
だが今回の殺害で本質的な変化は生まれるのか。アルカイダ指導者だったオサマ・ビン・ラディンの発言が有名だ。「強い馬と弱い馬を目にすれば、強い馬を気にいるのは当然だろう」 たぶん、このためトランプ大統領が「本人は犬のように死んだ、臆病者のように死んだ」と述べたのだろう。
問題はバグダディの死亡は最初から想定ずみのイデオロギーとしてイスラム国が広げたことだ。イスラム神学者ツルキ・アル-ビナリ(イスラム国の教理を支えた)は世界の終焉までにカリフは12名登場し、バグダディは8番目とした。
ということはバグダディを権力の座につけたのと同じ力と情熱を後継者が現実に移す可能性があり、第九番目のカリフとして正当性を主張することになる。これに失敗すれば、信心が足りなかったと解釈される。いずれにせよ、バグダディの抱いた夢は今後も続く。
筆者は先週の大部分をアフガニスタンとパキスタンで政界、軍部の関係者と話をしてきた。アフガニスタンが見出しに出ることは最近は殆どない。その少ない例はタリバンのテロ攻撃であったり米特使ザルメイ・ハリザドがめざすタリバンとの合意形成の報道だ。いずれの場合でもアフガニスタン、パキスタン両国の関係者に危惧の対象となるが、実は最大の懸念はイスラム国が両国にまたがった存在意義を構築していることだ。例として10月18日、自爆攻撃でアフガニスタンのナンガハール村の金曜日礼拝で数十名が死亡した。アフガニスタン当局はタリバンよりイスラム国の犯行らしいとする。その理由として同村のモスクにイスラム国から事前に脅迫が届いていたからという。
トランプ及び米軍部隊には血にまみれたカリフを自称する人物の排除成功したことで称賛を与えて良い。だが本人を最高地位に登らせた力学が本人の死亡で終焉したと考えるとすればあまりにも単純すぎる。トランプは序章を終えただけにすぎず、バグダディの描いたイスラム帝国構想の第二章がこれから始まり、数年間、数十年間あるいは数世紀にわたり展開すると見るべきだろう。■

Michael Rubin is a resident scholar at the American Enterprise Institute (AEI). You can follow him on Twitter: @mrubin1971.

コメント

  1. ぼたんのちから2019年10月28日 23:49

    イスラム国(IS)は、トランプがISを壊滅させたと宣言した今年3月頃には既に国家としての体裁を持っていない。今回のバグダディ殺害は、残党処理の節目であり、数千人地下に潜っていると推定されるIS戦闘員の排除も時間をかけて行われるであろう。この状態は、米国が対IS行動から手を引き易い環境でもある。
    ISのシンボルの除去は、シリア、イラクのIS残党にとって痛手であり、また、アフガニスタンやアフリカのIS組織にとっても打撃であり、ISが復活する大きな芽は潰されたと考えることもでき、先細りは避けられないだろう。同時にIS戦闘員の分散や出身国への帰還も進み、あるいは他のイスラム過激派と合流し、中東や西欧は継続的なテロに悩まされることになるだろう。
    米国は、可能な限り中東から手を引こうとするだろう。9.11連続テロ以降の対テロ戦争により戦線を拡げ過ぎ、米国、及び米軍は疲弊している。米国の国防戦略は対中露競合であり、これから軍事力を整え、蓄えるべき時であるのだろう。この意味で、トランプが発したシリアからの部分的撤退は将来を見据えた正しい判断と考えることもできる。例えトルコのみならず、ロシアやイランが中東での米軍撤退の空白を埋めるため進出しようと、今後も撤退は継続するだろう。

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