スキップしてメイン コンテンツに移動

★いずもの南シナ海・インド洋長期派遣をめぐる報道について



いずもの長期航海派遣をロイターが伝え、米メディアも報道しています。まず自動車系ウェブサイトのThe Drive の軍事コーナーで一般米国人向けの記事になっています。例によって護衛艦は駆逐艦、ヘリコプター護衛艦はヘリコプター空母と各記事は伝えています。しかし国内メディアは黙殺していますね。

Japan to Sail Carrier Into South China Sea In Massive Show of Force

日本が空母を南シナ海へ派遣し最大級の力の誇示を行う

Dispatching the helicopter carrier Izumo to the South China Sea is the largest show of naval force by Japan in the region since World War Two.

ヘリコプター空母いずもの南シナ海派遣は戦後日本で最大の海軍力誇示となる。
BY TYLER ROGOWAY MARCH 13, 2017
AP
  1. 日本のヘリコプター空母いずもが三ヶ月という前例のない長期派遣で南シナ海に向かう。途中、シンガポール、フィリピン、スリランカ、インドネシアに寄港し、マラバール国際海軍演習に参加すべくインド洋に向かう。海上自衛隊のヘリコプター空母と随行部隊が加わり、域内三大海軍国の空母が共同訓練をすると中国の動揺は隠せないだろう。ただし中国人民解放軍海軍も空母を同地域に巡航させ作戦概念の検証とともに力の誇示をわずか三ヶ月前に実施したばかりだ。
  2. いずもは全長814フィート排水量27千トン。日本は同艦の能力を誇示することを避け、「ヘリコプター駆逐艦」と称するほどだが、同艦はヘリコプター多数を日本本土から離れた地点で運用できる。対潜、輸送、攻撃用途の各種ヘリコプターを保有するが、特に対潜作戦が注目され、活動を高める中国潜水艦に大きな脅威となる。
CIMSEC
  1. 日本は南シナ海でなんら領有権を主張していないが、中国とは尖閣諸島を巡る対立があり、ここに来て緊張が高まっている。中国の南シナ海、尖閣諸島問題は来月習近平主席がドナルド・トランプ大統領とフロリダ州パームビーチで初会見をする際に避けて通れないだろう。
  2. 戦後日本の憲法では「攻撃兵器」の入手使用は禁じており、大型のいずもは姉妹艦かが(間もなく就役)と日本の地政学軍事上の役割変化が東半球にとどまらない範囲で進んでいることを実感させてくれる。■
次にUSNI Newsを見てみましょう。取材の深さの違いがわかります。海軍は歴史と伝統を重視する組織ですが、中国が言う歴史認識は明らかに海上自衛隊には無関係な話ですね。


Report: Japan’s Largest Warship Heading to South China Sea, Will Train With U.S., Indian Navies

日本最大級艦船の南シナ海派遣で米印海軍と共同訓練
March 13, 2017 11:35 AM
An undated photo of JS Izumo (DDH-183) underway. JMSDF Photo

日本最大の艦艇が三ヶ月にわたる作戦を南シナ海で行う準備中とロイターが3月13日伝えている。
  1. 24千トンのJSいずも(DDH-183)は5月に横須賀を出港し、各地寄港のあと演習に参加し8月に帰国する。
  2. 「シンガポール、インドネシア、フィリピン、スリランカに寄港し7月にマラバール共同海軍演習に加わる」(ロイター)。
  3. 「長期航海でいずもの性能を試す」と消息筋がロイターに語っている。「南シナ海で米海軍と訓練する」
  4. 米国防関係者はUSNI Newsに同時期に海上自衛隊と共同訓練の予定があると認めたが詳細は語らなかった。
  5. いずもは日本が建造したヘリコプター空母二隻のひとつで対潜戦および人道援助災害救助が任務と説明されている。2015年に就役し、姉妹艦かがも今年就役する。
  6. 各艦に三菱重工製SH-60K対潜(ASW)ヘリコプター7機とアグスタウェストランドMCM-101機雷処理(MCM)ヘリコプター7機を搭載するとU.S. Naval Institute’s Combat Fleets of the Worldは解説している。米海兵隊のMV-22オスプレイも運用可能だ。日本は中国潜水艦の脅威で同艦を建造したという。
  7. いずものASW能力はマラバール2017演習の目標に合致すると第七艦隊司令官ジョセフ・アーコイン中将がインドPTI通信に述べている。アーコイン中将によれば今年の演習ではASWを拡充しより複雑に展開し、インド・米国がそれぞれ運用するP-8I、P-8A対潜哨戒機も加わる。
  8. 中国は日本艦船の南シナ海運用に強い反発を示しており、第二次大戦中の日本帝国を想起させると主張。
  9. 「日本は反省すべきであり、侵略の記憶を消去するのではなく東シナ海、南シナ海双方で慎重な発言行動をとるべきだ。また相互信頼醸成を近隣各国と進めるべきであり、域内平和安定を希求すべきなのであり武力をちらつかせるべきではない」と中国外務省報道官洪磊Hong Lei が昨年述べていた。
  10. トランプ政権が国際通商路での航行の自由をこれまでより積極的に確保すると公言した中でいずもが派遣される。ヘリコプター空母としての機能以外に艦名自体にメッセージが込められている。
  11. 「初代の出雲は日本海海戦に参加した装甲巡洋艦で、日清戦争の清国賠償金で購入した艦だ。中国はこの出自を認識するはず」とUSNI Newsに記事を提供するカイル・モチズキは指摘する。■


コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...