スキップしてメイン コンテンツに移動

UCLASSと次期艦載有人機F/A-XXの微妙な関係 海軍航空部隊の価値観の問題が無人機開発を妨害しているのか





UCLASS Requirements Shifted To Preserve Navy’s Next Generation Fighter

By: Dave Majumdar and Sam LaGrone
Published: July 31, 2014 3:49 PM
Updated: July 31, 2014 4:53 PM
A Boeing artist's conception of a potential design for F/A-XX. Boeing Photo
ボーイングによるF/A-XX構想図. Boeing Photo


米海軍の無人空母運用型監視攻撃機 Unmanned Carrier Launched Airborne Surveillance and Strike (UCLASS)のステルス性と攻撃力の想定が引き下げられたことで海軍の次期主力戦闘機の存在意義が守られる結果になった。


  1. UCLASSが敵地奥深くに進攻するステルス攻撃機から軽武装の情報収集監視偵察機(ISR)に変更されたことでF/A-XX有人機版(ボーイングF/A-18E/F後継機)が残る結果になると海軍、国防総省、業界筋からUSNI Newsは確認できた。

  1. 各筋は「空母に無人機を導入することへ役所的ならびに価値観の抵抗」があることをにおわせている。

  1. 海軍内部で伝統的価値観に染まった航空関連部署が有人機温存を図り、無人機に攻撃任務を任せルのを容認するのはほんの一握りにすぎないという。

  1. 「一般的に海軍の航空部隊はUCLASSや無人機の空母運用では意見がまとまっています」とUCLASSに求める要求性能が二転三転している現状を元海軍高官はコメントしている。「F/A-18後継機となる有人機を無人機とまともに競争させないためにどうしますか。無人機をISR専用にするか、ISR機で限定的攻撃能力のみ有する機体にするか、脅威度が低い空域でしか運用できない機体にしておけば有人戦闘機とのすみわけが可能ですね」

An artist's concept of General Atomic's Sea Avenger UCLASS bid taken from a display monitor. US Naval Institute Photo
UCLASSへのジェネラルアトミックスのシーアヴェンジャー提案
US Naval Institute Photo

.
  1. 具体的にはF/A-XX構想は海軍航空戦力の近代化策として検討中だが、有人攻撃戦闘機として温存できることは有益だと海軍はじめとする複数筋が認めている。ただし海軍は両構想を直接関連付けていない。
.
  1. 「海軍は F/A-18E/F後継機種の開発にむけ分析業務中」とペンタゴンの戦術航空機開発室Program Executive Officer for Tactical Aircraft Programs [PEO(T)]の報道官ロブ・クーンRob Koonは説明している。同室は海軍航空システムズ本部内にありUSNI Newsあてに文書で伝えられてきた。「UCLSSとは別個の作業であり、調達方針も異なる」

  1. たしかに両機種は別個の関係だが、ある筋によれば海軍は予算的にも政治的にも同時に高価かつハイエンドの三機種を同時開発する力はないという。UCLASS、F/A-XXおよびロッキード・マーティンF-35CライトニングIIである。

  1. そのためUCLASSをISR任務中心にして無難に実現させることにしたのだと複数筋が認めている。

  1. UCLASS単価を調達可能な額にすることが開発過程で表面化したのは2012年の要求性能の大幅変更とその翌年に海軍作戦部長ジョナサン・グリナート大将がこれを承認したことによる。

  1. 「初の艦載無人機システムとなるので、十分な注意を払い慎重に要求性能および調達配備の計画づくりを心がけ、性能と価格のバランスをとり、戦闘上の要求性能を時間通りかつ予算内で実現できるようにした」とマット・ウィンター少将(Rear Adm. Mat Winter, NAVAIR’s PEO Unmanned Aviation and Strike Weapons (U&W).)は書いている。

  1. 「そのため調達戦略で承認を得たうえで、調達可能な価格で妥当な性能で耐久性のある無人艦載機を実現し、艦隊の要求性能を見たし、空母飛行隊を今後数儒年間にわたり革命的に変革する機体にしようとした」

  1. このUCLASS調達方針を支持する中にはジェイムズ・ウィネフェルド大将 Adm. James Winnefeld(統合参謀本部副議長で合同要求性能検討委員会(JROC)の長でもある)、ショーン・スタックレー海軍副長官Sean Stackley(研究開発調達)、海軍作戦部長付き航空機要求性能担当および情報優位性担当部門があると複数筋からUSNI Newsは把握している。

The X-47B on the deck of the USS Theodore Roosevelt (CVN-71) on Nov. 10, 2013. US Navy Photo
USSセオドア・ローズヴェルト艦上(CVN-71)のX-47B
US Navy Photo

.
  1. ISR特化型のUCLASS構想には議会、学会始めペンタゴン内部からも反対の声が起こっている。

  1. 上院国防歳出委員会からは2015年度予算案で示された性能内容への説明要求が出ており、下院軍事委員会シーパワー・兵力投射小委員長のランディ・フォーブス議員Rep Randy Forbes (共、ヴァージニア)は一貫してハイエンドUCLASS構想を支持している。

  1. 国家防衛審議会National Defense Panel (ペンタゴンの4年間国防計画検討報告を作成する独立監査機関)からはハイエンド無人艦載機の実現を求める見解が7月31日に出ている。

  1. 「合衆国の海洋兵力投射能力は長距離攻撃能力によってこそ強化されるのであり、有人、無人のいすれでもステルス性が望ましいが、合衆国の航空母艦あるいはその他の移動艦船から発進して正確で制御可能かつ威力のある攻撃を行いつつ、今後ますます威力を増す長距離精密対艦巡航・弾道ミサイルに対して生存性を確立することが肝要である」と同審議会は報している。

  1. その他にもペンタゴン内部にはUCLASSを多用途機とし、接近阻止領域通過拒否の環境でも運用できるようにすべきと主張している向きがある。ボブ・ワーク国防副長官Bob Work,、海軍長官レイ・メイバスRay Mabus、マイケル・ヴィッカース Michael Vickers 国防次官(情報担当)、クリスティン・ウォーマスChristine Wormuth 国防次官(政策担当)他だと複数筋からUSNI Newsは把握している。

  1. ペンタゴンでは要求性能内容を見直す動きがある。そこでUCLASSの最終要求性能の定義完了は先送りされて8月予定のワーク副長官による検討を待つことになったとUSNI News は知った。

  1. ワーク副長官は長距離攻撃に特化したUCLASSを支持するグループの一人で厳しい防空体制や強力な敵水上艦船に対しても作戦可能な機体を求めている。

  1. 最新の敵艦船には高周波目標捕捉レーダーだけでなく低周波レーダーも搭載されており、戦闘機大のステルス機の探知が可能だ。

  1. またコンピュータ処理能力の向上で、低周波レーダーが兵器誘導までできるようになってきた。このため全方位ステルス性能が必須になると専門家は見ている。全方位ステルス性を有する機体でないと高性能の敵最新鋭艦の撃破は不可能で、これ以外だと潜水艦や長距離対艦巡航ミサイルのみ対応可能だ。

  1. さらに敵攻撃の有効射程距離外に空母が待機するためUCLASSには長大な航続距離が必要となる。

  1. かつては空母は沖合から作戦実施が可能だったが、今や安全ではなくなっている。これは戦術戦闘機が制約を受ける作戦シナリオがあることを意味する。■

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...