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空で、海で、頻発するロシアとの対立は何を意味するのか 







Russia Playing Politics With Alleged Submarine Confrontations

By: Kyle Mizokami
Published: August 26, 2014 11:19 AM
Updated: August 26, 2014 11:19 AM
Oyashio-class submarine
おやしお級潜水艦

ロシア軍と日米欧の部隊で対立的な遭遇がこの数週間で増えている。ウクライナを巡りロシアと西側の関係が冷え込んできたのと歩調をあわせたようだ。

  1. 今月に入り、ロシア領付近くで日米の潜水艦にロシア対潜作戦が対応した事例をロシア報道が二件伝えている。水中対立は米ソの冷戦時代を想起させるものがあり、ソ連と米・同盟側は追跡劇を繰り返していた。

  1. ただ今回は背景が複雑化しており、。ロシアは国内問題として、その他各国はより大きな視点から取り上げている。

  1. ロシア国営メディアによれば8月7日に北海艦隊の対潜部隊が外国潜水艦をバレンツ海から追い出すのに成功したと伝えている。水上艦艇とイリューシンIl-38メイ対潜哨戒機で潜水艦を追尾したとする。潜水艦は米海軍のヴァージニア級攻撃潜水艦だったとしている。

  1. これに対してヨーロッパ軍司令部はこの出来事の発生自体を否定し、同海域に米海軍潜水艦はいなかったとする。

  1. この事件に加え、その一週間前に米空軍RC-135V/Wリヴァエットジョイント機がバルト海上空の国際空域でロシア機から妨害を受けており、ロシアから近隣諸国へのメッセージの意味があったようだ。つまりNATOに近づくポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニアに対してロシア軍は欧州内の米軍を上回り、その気になれば米軍を排除できるぞ、との内容だ。

  1. 一方でロシア領土の反対側では先週に同様の事件が発生したとの報道が入ってきた。ロシアのビジネス新聞紙コメルサントKommersantがロシア国防省が対潜部隊によりロシア国境付近で日本のおやしお級潜水艦の哨戒行動を中止させたと述べたと伝えたのだ。

  1. 伝えられる発生地点は宗谷海峡(国際的にはラ・ペルーズ海峡 La Perouse Strait)だ。宗谷海峡はわずか巾43マイル、最大深度も60mで、日本の北海道とロシア領のサハリン島を隔てる。

  1. この宗谷海峡は日本の潜水艦部隊にとって重要な防御線となっており、冷戦時にはソ連による侵攻ルートの想定があり、有事には海上自衛隊の潜水艦数隻が配備され揚陸部隊を迎え撃つ場所だ。

  1. おやしお級はディーゼル攻撃潜水艦として最新鋭の部類に属し、AIP(大気非依存型推進力)を装備し、X型の船尾翼を有する。伝えられた艦は海上自衛隊の横須賀基地配属の可能性がある。
.
  1. 8月27日のITAR-TASS通信によればロシア政府は水中対立は実は発生していなかったと異例の発表をしている。「ラ・ペルーズ海峡で日本潜水艦を探知したが、国際法に違反しておらず、ロシア側国境線を越境もしていない」とロシア幕僚本部が認めたという。

  1. この潜水艦がおやしお級で、X型船尾まで確認されていたことから、本当に事件が発生していたのであれば同艦が当時は浮上しており、存在を隠す意図がなかったことになる。これでなぜロシア政府がこの事件はバレンツ海事件とは異なると主張していたかがわかる。

  1. 事件発生時にはロシア軍地上部隊1,000名、武装輸送ヘリMi-8AMTSh 5機、軍用車両100台がロシアが占拠する千島列島で演習を行っていた。千島の南部四島はソ連が第二次大戦終了時に日本から奪取したままで、日本は領有権を主張しており、北方領土として返還をロシアに求めているが実現していない。今回の演習を日本は「到底受け入れられない」として抗議している。

  1. クリミア情勢の関連で日本も対ロシア制裁に加わっており、今回つたえらえる対立もロシアが千島列島南部を事項支配していることを暗に伝え、日本に対して強硬策に走らないよう求めているものだろう。

  1. 一連の事件ではそれ以上に強い背景理由はプーチン政権に対する暗いニュースからロシア国内の目をそらすことがあるのだろう。冷戦時とは違い、ロシア政府は西側報道に対して自らの見解を国民に伝えることが求められている。ロシア国営通報道機関とロシア政府の関係からプーチン政権はマイナスの側面を持つ報道に対する別の報道や出来事を広めることが可能だ。

  1. これに対してヴァージニア級と言われる潜水艦をバレンツ海から追い出した件でのプロパガンダには別のねらいがある。このニュースが出たのは8月9日土曜日で、週末はロシア国内ニュースが報道を占める。翌週の12日火曜日は原潜ミンスク沈没事故から14周年だ。ミンスクが乗組員118名全員と沈没したのがバレンツ海で、プーチン大統領による当時の救難活動が不適切と批判が起こっていた。

  1. そこで今回の追放劇を報じたロシアトゥデイ国営ニュース局は「NATO潜水艦は北極海付近で航法エラーを多数起こしており、米原子力潜水艦トレド(原文ママ)と衝突したことでクルスクが沈没したとのロシア海軍情報もある」と報じている。クルスク事故記念日もネットはロシアの実力を称賛する声であふれていた。

  1. 同様にマレーシア航空MH17便の撃墜事件はウクライナ分離派によるもので、ロシアも共謀したとされるが、ロシア軍がアメリカの国境侵犯を食い止めたことで影が薄くなっている。ロシア軍の実力を示すイベントを作ることでクリミア問題でロシアが露呈した愚劣さとあからさまな介入の報道に対して正の効果が生まれる。

  1. そこでロシアと米、NATO、日本の各軍と海を巡る対立は今後もプーチン政権が続く間は再発しそうだ。対立が海上戦闘につながる懸念が残る。しかし、皮肉にもこうした対立があることで西側はロシア軍の実力を知る機会が生まれ、長所短所を探り、ロシア製装備に関する技術情報も収集できるのだ。■

コメント ミンスク事件は当初から外国潜水艦のせいだとロシアは主張していましたね。どこの国でも外国による陰謀や嫌がらせを国内の意識高揚に使ってきた歴史があり、革命後さんざんいじめられたソ連では特に外国を警戒する意識が強かったのですが、ロシアになってもやはりそのままのようですね。


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