また上院軍事委員会のやり取りの紹介です。質問する側も答える側も真剣に言語で対応する姿勢には感服させられます。日本の国会議員の質を嘆く前に日本社会の言語空間がどれだけ貧しいかよく考えたほうがいいのではないでしょうか。さらに言えば、この問題は日本の国会ではまったくとりあげられていないのでしょうか。既成事実の積み上げという中国の作戦になにも打つ手がないというのもおかしな話ですね。
US Hasn’t Challenged Chinese ‘Islands’ Since 2012
CAPITOL HILL: 米国防関係者は本日、中国が進める南シナ海の人工島建設について少なくともこの三年間は主権問題で異議を直接唱えていないとを認めた。米軍機が人工島上空を飛行しておらず艦船も12カイリ以内を航行したのは2012年が最後だという。
アシュ・カーター国防長官が今月になって威勢のよい発言をしたが実は空虚なことばではないのかとの疑義が生まれそうだ。長官は中国が主張する問題個所でも「国際法の許す限りで飛行、航行、作戦実施を続ける」と発言していた。習金平主席の訪米も今月に控え、発言の中身が注目されていた。
12カイリ問題は特に重要だ。中国は新たに造成した「島嶼」から領海を主張するはずだ。米側の主張は水没するサンゴ礁の上に人工構造物を造成しても法的な権利を周囲の水域あるいは空域に主張する根拠はないとする。中国側は南シナ海全体を自国領海だと主張しており、悪名高い「九段線」を根拠としているが、米側は相手にしていない。
ジョン・マケイン上院議員の中国に人工島の建造、運用を許してはならないという見解には党派を超えた支持が集まっており、今朝は同議員との応酬が大きな見せ場になった。
「わがほうは当該地を航行、飛行を毎日のように繰り返し実施しています」とデイビッド・シア国防次官補(アジア太平洋地区安全保障問題)は発言し、「航行の自由」を守るための作戦を4月から展開していると述べた。
「だが埋立地から12カイリ以内では運用していませんね」とマケイン議員は問いただした
「航行の自由作戦を実施しています...」とシアは口を開いたが、「埋立地点から12カイリ以内に入ったのか」とすかさずマケインが遮った。
「最近は埋立地から12カイリ以内には入っておりません」とシアは認めた。
では最後に入ったのはいつか、とマケインは問いただした。
やや間をおいてからシアは「12カイリ以内での航行の自由の作戦は2012年実施が最後だったと思います」と回答した。
「2012年ね、三年前ですな」とマケインは厳しい表情で口を開いた。
民主党の軍事委員会ジャック・リード議員の質問に対し太平洋軍司令官ハリー・ハリス大将は中国が主張する陸塊上空の「通過飛行も実施していない」と認めた。
中国の人工建造物は力の均衡にも影響を生じている。中国は浚渫により海軍艦艇を運用可能な港湾設備を建設中のほか、3,000メートル超の滑走路複数もけ整備中で、スペースシャトル除くいかなる機体も運用できるようになるとハリス大将は上院で語っている。
米国が各島嶼の12カイリ以内を航行・飛行して法的な主張に異議を唱えないと、中国は自国主権を堂々と主張して紛糾を抱える戦略海域を手中に入れるだろう。「12カイリ原則を守れば、事実上主権を認めることになり、中国の主張に暗に組することになる」とマケインは本日の審議を振り返ってコメントした。
だが米軍が接近すれば中国はこれを米側の挑戦状だと受け止めそうだ。さらにアヘン戦争以来176年にわたり国家的なトラウマに苦しむ中国が危険な反応に踏み切らない保証はない。主権が侵されたと考えれば過激な策に走るかもしれない。米側は中国とは軍同士のつながりを維持することで緊張が増大しないよう努めてきたが、それでも米側政策担当者には島嶼問題にエスカレーションなしでどう対応すべきか自信がなくなっている。当然のことながら該当地で堂々と挑戦的態度を示すためには注意深く行動しても危険な衝突は起こりうるし、死亡者も発生するだろう。
シアは中国が一方的に主権主張する該当地の航行・飛行は選択肢の一つにすぎないとし、実際には実施できない選択肢だという。「航行の自由作戦は広義の対策手段のひとつにすぎません。事態が進展していけば航行の自由作戦以外の選択肢も検討対象に入ります」
「太平洋軍は選択肢を用意しており、軍事含む広範な選択肢を長官に提示済みです。指示あれば実施できる体制にあります」とハリス大将は述べている。
なるほど、だがどの選択肢を取るべきと考えているのか、とダン・サリバン上院議員は問いただした。「貴官の職責から言って12カイリ以内の航行あるいは飛行をすべきと考えますか」
これに対しハリス大将は政策決定の権限は国防長官にあり最終的には大統領であると答えたうえで、個人の意見として「南シナ海で航行の自由は海上、上空の双方で行使すべきです。中国が主張する島嶼は島ではありません」と述べた。
「12カイリ以内でですか」とサリバンは尋ねた。
「場合によりけりです。もし....」
サリバンはそれを遮り、中国が建設中のフィアリクロス環礁上の滑走路写真を示した。「ここではどうでしょうか」
「ここは対象です」とハリス大将は答えた。
このままでは軍事脅威が生まれると同提督は発言した。中国が建設工事を進めれば「ミサイル発射、第5世代戦闘機運用、偵察監視活動の拠点になる」と議員を前に説明し、「中国は事実上の南シナ海の支配を戦闘時除き確立してしまう」と述べた。
ただし交戦になれば「これらは容易に攻撃できます」と語った。
「中国は非常に新しい装備を配置し運用能力が増大していますが、こちらは技術上の優位性をほぼ全域で確立しています」とハリス大将は述べた。「わが軍の能力からすれば中国に勝利することは十分可能と自信を持っています。ただしこの事態が発生しないよう祈りますが」
「とはいえ、技術優位性の維持は必要です。向こう側も進歩しているからです」とハリス大将は続けた。具体的には第五世代機のF-22やF-35の配備とともに既存の第四世代機F-15、F-16、F-18の性能改修も必要だ。既存機種を多数相当長く運用する必要があるためだという。
「質的にはわがほうが有利です。練度はこちらのほうが高く、装備の性能も高い。ただし量が有利になることもあります」
中国軍装備が近代化とともに増強されていくことから「中国の軍備増強のペースに対してわが方が予算強制削減を引き続き受けていることに憂慮せざるを得ません」とハリス大将は述べ、予算管理法による支出上限に触れた。「2020年代に入るときわめて現実の問題になりかねません」■
コメント
コメントを投稿
コメントをどうぞ。