オバマ政権が外交上数々の失敗をしていることは歴史家の評価を待たずとも明らかで、次期政権にこのままの状態の世界を任せようというのは承服できません。また官邸が都合の良い解決策を軍に任せて責任をとらないというのも認められませんね。ただし、上院という言論プラス調査の府でこの事件も事実が解明されていくでしょう。日本の上院にあたる参議院で暴力沙汰が世界に示されたのとは好対照ですね。
Was Syrian Train-and-Equip Effort Always a 'Mission Impossible'?
By Joe Gould 11:50 a.m. EDT September 21, 2015
WASHINGTON —オバマ大統領が米議会にシリア穏健派の訓練、機材を与えイスラム国に対抗させる策の承認を求めて1年が経過したが、軍高官は総額500百万ドルの事業は穴だらけだと認めた。
- イスラム国の撃滅のためにも現地反乱勢力による反抗がなければ国内治安情勢の回復が望めないとペンタゴンは主張してきた。原案では今年末までにシリア人4,500名を訓練するはずだった。
- ロイド・オースティン大将(米中央軍司令官)は米国の訓練を受けたシリア戦闘員で残っているのは5名だけと明かし、事業の再構築が必要だと認めた。またペンタゴン監査官が事業の進展ぶりを意図的に好調に見せるべく情報評価に手が加えられたとの内部告発の調査をしていることも明らかにした。
- 構想ではアサド政権ではなくシリア反乱分子を集結させようとしてきたが、見直しか継続かを問われそうだ。
- 「ホワイトハウスが考え出した訓練・供与案は最初から実施不可能だった」と語るのはフレデリック・ホフ(オバマ政権で前シリア問題上級顧問)だ。ホフは現在大西洋協議会に所属。「愛国的な反乱分子を募りISILにだけ交戦させようというのはいかにもホワイトハウスらしい発想だが現実と全く乖離している」
- 上院軍事委員会で9月16日にオースティン大将は三か月前は60名だった訓練ずみ戦闘員で何人が残っているのか問われた。
- 「極めて少数です。戦闘可能なのは4,5名です」
- クリスティン・ウォーマス国防次官(政策担当)は「100名から120名の」追加戦闘員がトルコ国内で訓練中だと証言した。これに対しクレア・マクカスキル上院議員(民、ミズーリ)は「希望的観測をあてにしているわけですね」と感想を述べていた。
- 20日にはシリア人75名が米国支援のもと訓練を受けトルコ国境からシリア北部に侵入したとの報道が入っていた。
- 「アンカラで訓練を受けた75名が18日から19日にかけてアレッポ地方に移動した」とシリア人権監視台を率いるラミ・アブデル・ラーマンがAFPに語っていた。
- 反乱分子を束ねるDivision 30の報道官ハッサン・ムスタファが同上報道を確認している。同組織がトルコ国内で二か月の訓練を行ってから実戦に送り出しているという。
- ワシントンではそれに先立ち開催された議会公聴会が同事業を失策と決めつけ再評価を求めている。
- 「米国が訓練したシリア戦闘員が4、5名しか残っていないなんで冗談にしか聞こえない」とケリー・アヨッテ上院議員(共、ニューハンプシャーは発言。
- 「本案件は完全な失敗と認めるべきだ」とジェフ・セッションズ上院議員(共、アリゾナ)は語る。「そうなってほしくなかったが、事実だ。失敗に対応する時期を逸している」
- 事実があきらかになるとホワイトハウスは一線を画そうとしている。ジョン・アーネスト報道官からはオバマ大統領は最初から疑わしいとみていたと論評。推進派は「シリア国内の決定打になる」との声が出ていたと氏名を特定せず紹介している。ペンタゴンと政策決定層は困難な課題と認めたうえで「必要な変更を行う」と述べた。
- 「批判的な筋からは具体的な選択肢としてシリアの難しい課題すべてに対処すべきとの提言があります。現政権としてはこうなるとはそもそも想定しておらず、批判派にぜひお答えいただきたいものです」(同報道官).
- アーネストはオースティン大将が公聴会で示した誠実さを讃え、ペンタゴン報道官ピーター・クックも同様にアシュ・カーター国防長官が同大将に「全幅の信頼を置いている」と語った。
- 公聴会ではジョン・マケイン委員長(共、アリゾナ)がオースティン大将に対してシリア含む域内情勢で意図的に楽観的な評価をしていたのではないかと追及している
- オースティンは今月初めにマーティン・デンプシー大将(統合参謀本部議長)から出たイスラム国との戦闘はこう着状態に入ったとの発言へはコメントを避けつつ、「戦闘状態の初期では失敗はつきもの。幸い、イラク・シリアで課題は多い中、チャンスはあり、このチャンスを生かせば必ずや良い結果がすぐに出てくることを確信している」と述べた。
- マケイン上院議員は何年も続く戦闘の行方から威勢の良い評価は幻想にすぎないとみているようだ。「大将が話されているとおりなら何十万人もの難民がヨーロッパにあふれてシリア国内ですでに死者が25間人になっているのもすべて順調だということになりますな」
- その発言を受けてオースティン大将は国防総省監査総官が「情報の取り扱い」で内部捜査をしていると自ら発言した。
- マケイン議員からは委員会も独自調査をするとの発言が出た。結果次第ではペンタゴンの信用度が影響を受け、軍事活動への国民の支持も揺らぎかねない。
- オースティン大将は情報機関に働きかけて有利な状況を作ろうとした事実はないと発言。また「配下の各部署で率直かつ正確な情報評価を」期待すると述べた。
- シリア向け訓練・装備供与がトラブル続きであることは同委員会も承知している。7月にはカーター長官も事業がうまくいっていないと認めていた。ペンタゴン関係者はその後一貫して何がどこまで難航しているのか明らかにしていない。
- カーター長官はくりかえし戦闘員は60名いると発言しており、「期待より少ない」のは審査が厳しいせいだとしていた。実際の志願者は数千名いたが60名に絞り込んだのだという。
- ニューヨークタイムズは7月末に訓練生は米支援を受けるDivision 30とともにトルコ国境付近からヌスラ戦線(アルカイダ系)により拉致されたと報道している。
- 米関係者はこの報道に論評を拒否しているが、少数のシリア戦闘員をシリア北部の反乱部隊に合流させられないか検討していた。
- マッカスキル上院議員はオースティン発言を受けてこれまで予算500百万ドルを使っているが、来年度に600百万ドルの要求が出ているのはどういうことなのかとの疑問を呈している。イスラム国に対抗する戦闘員を急増させる戦略が必要だと考える。「500百万ドルかけて数十名しか養成できないとはどういうことなのか」
- ただし、同議員も米側と一緒に戦うシリア戦闘員がイスラム国の格好の標的になることを認め、イスラム国の宣伝能力の高さを念頭に置いている。「相手の術中にはまってはいけない」
- 専門家からはあらためて同事業の前提条件の妥当性だけでなくオバマ政権が本当にイスラム国を撃滅しようと真剣に考えているのかとの疑問が噴出している。
- ホフは政権内にいたこともあり、慎重すぎる戦闘員養成策に難があるとみる。米国が訓練した戦闘員が敵側に流れる失態を回避したいとの思いが背景にあるという。「第二次大戦のフランスでレジスタンス構成員にこんな選考手続きをしていたらどうでしょうか。小銃一丁も提供できなかったでしょう」
- 対外関係協議会の主任研究員マイカー・ゼンコーは今回の事態をピッグス湾事件になぞらえる。ジョン・F・ケネディー大統領が実施を途中で断念した1961年のキューバ侵攻作戦のことだ。
- 中東研究センター所長のジョシュア・ランディスはそもそも訓練・装備供与がシリアの現実と乖離していると指摘し、米国が期待する穏健な戦闘員など存在しない、また有力な勢力はアサド政権あるいはアルカイダ系の集団のいずれかしかないという。「訓練・供与はこうあってほしい願望にすぎない。これを信望してきたのは現政権が重要だと考えてきたからだ」
- ランディスの見方をすればオバマ政権はイスラム国の撃滅に取り組む代わりに次の政権に対応を任せ、封じ込めるだけを考えていることになる。
- 「机上の空論から政治課題として現実になったことが誤りの始まり」のだとランディスは言う。■
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