北京のパレードに耳目を集める間にPLAN艦船がアッツ島まで足を伸ばしていたようです。国際法を盾にした行動ですが、一方で国際法を堂々と無視する行動は矛盾していませんか。でもそれが中国の実態なのでしょう。軍事パレードよりもこちらのほうが戦略的に重要な意味を有しているかもしれません。
Chinese Warships Made ‘Innocent Passage’ Through U.S. Territorial Waters off Alaska
By: Sam LaGrone
September 3, 2015 5:37 PM
中国海軍艦船5隻が米領海内を横断してベーリング海から南下するという海洋法で認められた軍艦の他国領海航行をしたと米国防関係者が USNI News に3日伝えてきた。
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- 人民解放軍海軍(PLAN)の小戦隊は「無害通航」でアリューシャン列島の12カイリ以内を通過したという。
- 「PLAN所属艦艇5隻はアリューシャン列島海域を迅速かつ慎重に国際法に準拠し通過した」と米北方軍がUSNI Newsに声明文を送ってきた。
- 北方軍司令部は通過時間を伝えていないが、3日早朝あるいは2日深夜の通過可能性が高い。USNI News が把握した中国戦隊の位置はアッツ島南方300カイリ地点であるためだ。
- 艦船部隊は国際水域からベーリング海に入り、ロシアのカムチャツカ半島と米アッツ島の間を通過したと国防関係者が USNI News に伝えてきた。PLAN艦船がベーリング海に入るのは初めてで部隊はアッツ島東を通過し、アリューシャン列島を通過し、北太平洋へ移動した。
- 無害通航には事前通告は不要で海洋法上の権利として国連海洋法条約が認めている。国際法規約では軍艦は沿岸国の領海を「当該国の安寧秩序を乱さない限り」航行できる。(UNLOSC第19条)
- 具体的には無害通航をする軍艦は航空機の発艦着艦、軍事情報収集、宣伝活動、小舟艇の発進、火砲の使用、魚類捕獲等航行と無関係のいかなる行動も当該国沿岸を通航中は許されていない。
- 無害通航はジブラルタル海峡やホルムズ海峡のように国際的に認知された通行領域を軍艦が航行するのとは意味が違う。軍艦は通過領域を通っても無害通航とはされない。
- 今回のPLAN小戦隊は水上戦闘艦3隻、揚陸艦1隻および給油艦1隻の構成で中国がロシアと実施した共同海軍演習でロシア太平洋地区と日本海に派遣した7隻の一部だ。
- 中国配信の記事によればPLANが派遣したのはタイプ051C旅州級誘導ミサイル駆逐艦 瀋陽(115)、ロシア建造のソヴレメンヌイ級誘導ミサイル駆逐艦 台州(泰州?)(138)、タイプ54A江凱II型フリゲート艦 臨浙(547)および衡陽(568)、タイプ071強襲揚陸艦 長白山,タイプ072A戦車揚陸艦 云雲山、タイプ093給油艦 太湖だ。
- 海洋法専門家によれば無害通航を中国が実施したのは米国および国際社会へメッセージを伝える意味があるという。
- ベーリング海進入は中国が第二次大戦終結70周年を大々的に祝うのと同じタイミングで、今月末には習近平主席が訪米する。
- 「一石三鳥ですね」とジェイムズ・クラスカ(海軍大学校で国際法の教鞭をとる)がUSNI Newsにコメントしている。
- アリューシャン列島をPLAN艦船が通過したのは合法的だが、米海軍の駆逐艦が中国本土と海南島間の海峡を通過するのと同じだとクラスカが見る。
- 自らの本土近くではしつようなまでに自国海域の境界線を守る中国は無害通航をしようとする外国艦船に事前通告を求めることが多々あり、中国自体は国際海域と理解される地帯でも自国航空機や艦船を航行させて国際社会に挑戦している。米軍艦船・航空機は航行の自由を守るためのミッションを南シナ海で定期的に実施しており、PLAは対抗して戦闘機を飛ばしたり、威嚇的な非難を加えている。
- 米国は南シナ海では無害通航の権利を行使しておらず、この点でオバマ政権とペンタゴンの間で意見が衝突している。
- クラスカによれば中国は米国にとってのベーリング海は中国にとっての南シナ海と同じなので、今回のPLAN遠征は挑発的と受け止められかねないと考えているという。
- 「米国に大きなメッセージを送ったつもりなのでしょうが、米側がきわめて冷静に対応したことにに驚いているかもしれません」■
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