プロジェクト管理の視点でF-35の規模は大きすぎたのでしょうか。管理そのものがことごとく難航してきたのがF-35の歴史なのですが、これだけ自信に満ちた展望を公表するボグデン中将はどんな心情なのか、本音を聞きたいところです。とはいえ現室長になってプロジェクトがいい方向に進んできたのも事実ですが。単に機材だけでなく、インフラまで相当の規模の投資が必要だということですね。そして完全な機体はいつまでたっても存在しないのがF-35なのかもしれませんね。よく言えば進化しつづけるのでしょう。
F-35: Now For The (Next) Hard Part, Says Bogdan
NATIONAL PRESS CLUB: ペンタゴン史上最大規模の調達事業で良いニュースは困難な初期段階がほぼ完了したこと。悪いニュースはまだ難関が待ち構えていることだ。
- 「時間をとられたが着実にF-35事業は進展している。加速・拡大曲面に入った」とクリス・ボグデン中将が事業統括担当官(PEO)の立場でF-35事業をこう評している。20年に渡る高い水準の技術を導入する困難な開発段階は500億ドル近くを費やして2017年に完了する。次の課題は大量生産と世界各地に展開する機材の維持管理で、種類は異なるが本質的に困難ではない。
- 「生産規模を3年で3倍、配備数も3倍にする」とボグデン中将はいい、年間生産を40機から120機に引き上げる。「これが達成できれば息がつける」
- 「最大の心配は供給体制だ」とボグデンは言い、生産規模が拡大すれば納入業者も生産を拡大する必要があるが、配備機数も増えれば同じ業者は予備部品を追加生産する必要があるのだ。双方の需要が一度に増える。多く生産すれば、多く配備されればその分だけ補給保全修理活動も増えるということだ。
- このため浮上するのが短期的な課題だ。F-35の完成済み機体には何らかの改修が全機で必要だ。なかでも3Fソフトウエアパッケージが重要だが、各機で相当のハードウェア改修も発生し、相当の労力を必要とする。
- 各型あわせて126機(テスト用19機は除外)が完成済みで、2019年末には一気に493機になる。「493機になった段階でうち何機が正しい仕様になっているのか」とボグデンはComDef会合で発言。「一機もない。生産中の機体、今後2年半で生産する分プラス完成済み機体すべてに何らかの改修作業がないと完全性能を発揮できない。これは相当の事業量になる」
- 代償は金額よりも時間だ。就役中の機体を改修のため集める間、パイロットは訓練に機体が使えなくなる。ボグデンもパイロット養成が急務な中でこのことを懸念している。とくに 空軍が設定したF-35Aの初期作戦能力(IOC)獲得の期日に間に合うか気を揉む。
- 改修作業を迅速かつ機材全体で実施するのが鍵だ。解決策の一つが「現場チーム」を派遣し基地内でF-35の整備改修を行うことで、各基地から都度機材を呼び戻し中央補給施設で作業する通例を破る。ただしF-35用の補給廠は整備すると言う。
- 改修作業だけではない。ALIS補給支援システムはまだ掛け声にはるかに及ばない効果しか示していないとボグデンは見ており、ソフトウェア再プログラムラボも5箇所ないと機体の性能向上ができないのだが立ち上がりが低迷している。
- とは言え、ボグデン中将は危機を乗り切ったと自信を感じている。問題が全て解決したわけではないとはいえ、「事前に問題を把握しており、リスク低減も相当前から手を打っており、以前ほど事態にふりまわされることはない」という。
- 予測がつくようになってきたという。「LRIP11ロットになれば、ハードウェア上の変更は全て完了しているはずで、3Fの性能が発揮できるようになっているはずだ。12ロットがスタートすればハード的には安定し、ソフトも機体仕様と適合しているはず。つまりリスクもコストも大きく削減できる」
- 生産コストはロット間で3から4%低くなっているとボグデンは述べており、「2019年価格でA型は80から85百万ドルになる。これなら手に入る性能を考えて悪くない価格だ」■
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