もともと二番手のF-35にすべてを期待することは不可能です。F-15は優秀な機体ですが、経年変化には勝てません。当面F-Xが登場しない以上(航空史で主力戦闘機の空白時期が発生するのは異例)、F-15を機体強化しても徹底的に使いこなすしか手がないのではないでしょうか。
Fighter Gap Forces Questions On USAF F-15C Plans
Sep 17, 2015 Amy Butler | Aviation Week & Space Technology
米空軍F-15Cの退役日程が示されていないのは同機の将来が明るいこと証拠だ。
- ボーイングは改修提案を繰り返している。以前の案サイレント・イーグルは失敗しているが。
- 空軍所属機は退役予定日を予定も含め記録するのが通例だ。だがF-15Cの場合は興味深い。当初はF-22で全機更改の予定だった。だがF-22の高コストで当時のロバート・ゲイツ国防長官は生産打ち切りの決定を2009年に下し、生産は187機で止まった。予定は350機の整備予定だった。そこでF-15C部隊は想定より長く供用されることになり、F-22の後継機種(次世代制空戦闘機Next-Generation Air Dominance aircraftの名称がついている)が就役するまで飛行することになった。
- 「次期制空戦闘機の生産は2030年代以降で、少数配備のまま2040年代に入るるはず」と ボーイングでF-15事業を担当するマイク・ギボンズMike Gibbons副社長は言う。
- 空軍関係者はまだ「ギャップ」が生じるとまでは言い切っていないが、戦闘機数の不足は明らかだ。空対空ミッションで計画立案に影響が出る。10年前には「ハイ・ロー」ミックスでF-22が制空任務全般を、F-35が多用途任務機として制空、敵防空網破壊、近接航空支援を担当する想定だった。F-35の空対空戦闘能力は限定的で第一線の制空戦闘機ではない。
ボーイングが提案するF-15C改良では空対空ミサイルを満載する点で、以前のステルス性追求と好対照だ。Boeing Concept.
- 空軍参謀総長マーク・ウォルシュ大将によればF-22の機材数が少ないことから、F-15Cの長期利用ならびにF-35の制空任務投入を検討しているという。ただもともとその想定で設計していない機体とを本人も認める。ウォルシュ大将は空軍協会の航空宇宙会議の席上で語っている。「F-22導入が打ち切りとなってから補完対策が必要となった。とりあえずはF-15Cに期待し、F-35もF-22の機能を肩代わりできるはずだが、そのかわり同機の本来任務が実施できなくなる」
- ハーバート・カーライル大将(空中戦闘軍団司令官)もこれは難題と認める。F-15Cを飛行可能状態に維持するには高価な改修作業が必須であり、機材は酷使されている。耐久性試験結果から一部機材で縦通材の追加、主翼桁、主翼の交換が必要と判明した。これだけでも「数十億ドル規模と大将は記者団に語っている。.
- ウェルシュも空軍が新型機をあらたなローエンド機材として導入するのが理想的だという。ただし予算がないという。
- ボーイングはF-15C部隊の各種改修案を作成中で防空体制の変化に対応できるという。この案は「F-15 2040C」の名称で、失敗に終わった「サイレント・イーグル」構想に続くものだ。サイレント・イーグルは2009年に発表され、レーダー断面積を小さくし、一体型燃料タンク(CFT)の採用により兵装類を機内に格納、尾翼を斜めに取り付け、特殊塗装でレーダー特徴を抑えようとした。ボーイングによればサイレント・イーグルはイスラエルと韓国をねらったが、米空軍の採用も視野に入れていたという。結局どこもとびつかなかった。
- そこで2040Cではステルス化ではなく重武装化を狙う。「CFTで実現した長距離性能を無駄にしたくないですし、仮にこれを犠牲にしても機体内部に搭載する兵装は犠牲にしたくありません」(ギボンズ)
- これが実現すればF-15での支援任務の幅が広がる。F-22に敵防空網突破させ、データをF-15に中継し、F-15は安全地点から各種兵器を投下する作戦構想だ。この実現にはF-15の兵装搭載量を増加させ、通信装置の更新が必要だが、2040Cで実現する。
- 2040Cのオプションの一つがCFTに空対空ミサイルを外装でそれぞれ4発搭載することだ。これで空対空ミサイルが合計16発になる。もう一案はフライ・バイ・ワイヤ機体制御を導入する前提で空対空ミサイルをさらに外装するものだ。CFTはF-15Eストライク・イーグル各機で導入済みだが、E型は制空任務に投入されることは少ない。
- 空対空ミサイル16発の搭載は『アッパーエンド」の要求で、各種シナリオを空軍が検討しているとギボンスは述べる。「世界各地に展開するわが軍に対して敵が有利な立場になる場合がありうるのです。なぜなら敵は機体を定位置に配置し、近くの基地から運航してくれば、数で圧倒できるわけで、迅速に相当の機数を飛行させるはずです」
- F-22との交信能力はこの作戦構想で必要不可欠な要素だ。空軍は第5から第4へと呼ぶ通信機能でF-22からF-15C/Dへの通信中継能力を重視している。
- 空軍のタロン・ヘイトポッドはこの先駆け的存在だ。今秋にテストがはじまるが、生産は少数で需要に追いつかない。ただし空軍は第5から第4への通信能力を全機に搭載する予定だ。問題はF-22にF-15Cの間で安全に通信のやり取りができないことだ。高性能化する敵防空網によりF-15は一層手前までしか飛行できなくなっており、F-22だけが飛行する可能性が高い。問題はF-22が搭載できる兵装が少ないことで、目標を捕捉し特定するとF-15が攻撃ミサイルを発射する想定になっていることだ。長距離赤外線探査追跡(IRST)機能を搭載したF-15は逆に前方のF-22に標的情報を送付することができる。
- 2040Cでは長距離IRSTセンサーも想定している。これはタロン・ヘイトの一部でかねてからレーダー回避性能がある機材を長距離から探知する能力がF-15Cには求められてきた。ギボンスによればパッシブ、アクティブ双方で残存性の向上も実現するという。.
- このため改良型AN/APG-63 高性能電子スキャンアレイレーダーの搭載が必要だ。ボーイングもイーグルパッシブ・アクティブ両用警戒残存システム Eagle Passive/Active Warning and Survivability System (Epawss)を開発中で総額76億ドルとなる。これは1970年代技術の戦術電子戦システムに代わるものだ。
- ギボンスによれば Epawss の契約企業発表が近づいており、その後およそ一年かけて技術成熟化を図る。開発はその後5年かけて行う。最終的にEpawssの第一線配備は2020年代中頃になる。この時期は2040C改修の実施完了時期と一致するという。
- 平行してボーイングは機体の疲労試験を実施中で機体寿命の延長が可能かを見極める。C型は9,000時間の認証がおりているとロバート・ズウィッチ(空軍F-15期待寿命管理センター主管)は言う。
- 空軍からボーイングに追加疲労試験を2機で実施の指示が出ており、一機は33,000時間経過機、もう一機は 13,500時間経過機だ。飛行時間が少ない機体を仔細に調べて2040仕様に改装可能か見極める。ただし、比較的機齢が高いと機体構造にてを入れる必要があり、ミッションシステムは古い機体から改修して利用する。製造年が古い機体は2040年までに累計飛行時間が2万の大台を超える。
- なお米空軍が運用中のF-15Cは合計213機。■
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