ちょっと重い話題です。陸上競技のドーピングなんて問題じゃない人体改造までロシア、中国が行っていることを米国はすでに把握している模様です。完全機械化された戦闘部隊に対し米側は人マシンの一体運用で対抗するということでしょうか。よくわかりません。ともかく今や米国でMoT技術経営を真剣に考えているのはDoD国防総省であることがよくわかります。
Will US Pursue ‘Enhanced Human Ops?’ DepSecDef Wonders
WASHINGTONーーー 国防総省の第三相殺戦略ではロシアや中国が開発中のステルス戦闘機、サイバー兵器、精密ミサイルに対抗可能な優位性を新規に確立しようとする。研究は緒についており2017年度に150億ドルを予算要求する。見え始めたその実現方法は人工知能と関係するようだ。
- だが優位性が長く続く保証はないと国防副長官ボブ・ワークは警告する。人工知能やロボットの新時代が民間部門で幕を開けようとしているが、ソフトウェアに国境は無意味で、ロシアや中国がこちら側の技術を盗み取ることは可能とワークは言う。事実、相手側の倫理基準はずっと柔軟なので、技術を盗まれてもこちらが盗めにくい。
- 国防総省による相殺戦略の二段目は精密誘導兵器、ステルス、ネットワーク技術だった。1975年ごろの話で「ロシア、当時はソビエトが追随できないとわかっていた」とワークは言う。だが現在は「同じ仮定は成立しない」という。「今は大戦間の時期に似ている」と1919年から1939年までの時期をさし、ドイツが電撃戦を編み出し日本や米国は空母戦力を整備していたが、技術が普及するや最良の要素を組み合わせて整備できた側に優位性が移ったことを言及している。
- 少なくとも一分野では敵方が先を行っており、身体や頭脳の一部に手を加え人体の限界を引き上げようとしている。「敵性勢力はごく当たり前に人体機能の向上をめざしており、戦慄させられる」とワークは言う。「こちら側はそんなことをする前に長々と時間をかけ決断しなくてはならないし、実施しても気持ち良いものではないだろう」 米軍はむしろ装備の改修に注力し、ヘッズアップディスプレイ、身体装着型電子装置、改良型防弾着衣、おそらく外骨格型補強装置も間もなく加わるはずだが、人体そのものには手を入れていない。
- 敵側がこちらと同じ技術水準を目指しても、目指す価値観は大幅にちがうものになるだろう。「中国はロボット工学と自律制御に相当の支出をしており、ロシアの参謀総長ゲラシモフは最近こう言っている。ロシア軍はロボット化した戦場で戦う準備を始めていると。また近未来では完全ロボット化部隊が編成され軍事作戦を独自に展開するだろうとも発言している」
- ロシア製のロボット戦車がさまよう光景はSFの悪夢と言ってよい。米軍では「強力な兵力投入を決めるのは人間の判断力のみと強く信じている」とワークも強調する。「ただし独裁国家で人体も機械の一部で不完全な部品と定義すると完全自動化部隊の編制に向かうのは自然ななりゆきだ」とワークは述べた。「ソ連時代に偵察攻撃部隊を編成した時の考え方そのものであり、当時から完全自動化を模索していた」
- 対照的に米側の相殺戦略は機械の力を借りて生身の人間の力を増大させるものであり、機械に人間の代わりをさせるものではない。
- コンピュータはデータの山の中から判別し、人間が対応できない速さで動く脅威への対応を可能としてくれる。だが重要判断を下すのはいつも人間の役割だ。機械のスピードと人間の洞察力を生物のように組み合わせれば人間、機械のどちらかだけに依存する敵に優位に立てるだろう。
- 「今の世の中ではいつも迅速に追随してくるものがいるが、こちらが迅速に先を進んでいる限り問題はない」とワークは言う。「みんながこちらの排気管の後ろについてくるんだったら、それでいい」
- ただし現時点の相殺戦略では全員をこちらの排気管のうしろを追随させるに至っておらず、むしろ自動車そのものを論じている感がある。ワークも技術と戦術の将来を仮説的に考えているが、いずれも試験段階にすぎないと認める。
- 「2017年度予算で300億ドルも使えるとは期待しないでほしい」とワークは言う。「おそらく120,130、150億ドルくらいでウォーゲーム、実験、実証をするだろう」 その後の数年間で実証できた技術に予算がつくはずだ、ただし、本当に実証できれば。
- 「可能性のある技術はたくさんありますが、『加速化』しないと実戦に投入できない」と陸軍参謀総長マーク・マイリー大将がCNAS主催の会合でワークのあとをうけて発言している。陸軍は有人無人の組み合わせをAH-64アパッチ攻撃ヘリコプターとグレイイーグル無人機で実施しているとマイリー大将は報告。情報科学が進歩すれば今よりも小型で配備が容易な指揮所や自走式トラック部隊が実現するだろう。
- 「現時点でも利用可能な技術もあり、近い将来に実用化する技術もある」とマイリー大将は指摘した。「たとえば現在のロボット技術には戦場でも利用可能なものがあり、軍用化に向けて加速できるものもある」
- だが「加速」は無料ではないし、兵員の人件費や戦闘即応体制の維持のように優先順位が高い対象もあるとマイリーは続けた。「近代化の課題は技術や構想ではない。課題は予算だ」とし、両手を擦り合わせた。「近代化予算、S&T(科学技術)項目のような予算は陸軍でもこの数年間冷遇されたままだ」
- こちらの技術水準に追い付こうとする敵だけが懸念材料ではない。アメリカが長年維持してきた優位性は人員の高い能力だがこのままリードが維持できる保証はない。
- 「この競争で人的資源の優位性が永続するとはとても言えない」とワークは発言。「出発点で大きなリードしているのは事実だが」
- 「いかなる敵勢力にも有効なイノベーションを軍組織内で維持したい」とワークは宣言する。「相当の間は維持できるだろう。だが相手方が『次世代の指導層に権限を与え、あえて誤りを許せばイノベーションも失敗も体験させられる』と言い始めたらどうなるか。本当にこれをこちらより巧みに実現したら問題だ」
- ワークは口にしなかったが、歴史上では専制国家の方が創造的かつ適応力に富み、実は民主国家より権限委譲が進んでいた事例が見つかる。帝政ドイツの発明に「潜入戦術」があり、近代地上戦術の基礎で第一次大戦のことだ。小規模の突撃部隊が敵の防衛線の合間を縫って侵入し、フランス・英国の塹壕戦のこう着状況を打破している。ただし戦闘の主導権を奪還するには遅すぎた。ナチドイツも同じ潜入戦術を戦車で実施し無線通信と航空支援を活用した。それが電撃戦で民主国家フランス、英国の時代遅れの指揮官を完全に出し抜いた。(電撃戦は、航空母艦の開発、レーダーその他の戦術や技術の発展とともに軍事革命と呼ばれる) まとめれば無慈悲に圧政を行う側が軍事上の主導権を握り革新的な進歩を奨励しているということだ。
- 中国とロシアはまだそこまで到達しておらず、たぶん両国とも永遠に行きつかないだろう。だがワークは人的要素だけを米国の優位性とせず人間性以外の要素の完全活用も相殺戦略では重要と考えている。
- 「これまで何度も何度も提起されている課題はヒトと機械の協調であり、戦場での一体化です。AIと自律化による全く新しいレベルがヒト機械一体化で実現し、それぞれ得意分野で能力を発揮できるようになるのです」■
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