一時は将来の海軍力のシンボルのようにもてはやされた=取り扱いに苦労させられたズムワルト級駆逐艦ですが、やっと公試にこぎつけました。海軍史の中でこの特異な艦が時代に先んじすぎた例として記憶されるのか、それとも意外な場面でその革新的な性能を発揮する場が訪れ、少数建造出終わったことを後悔することになるのか、まだわかりません。保守的な海軍でここまでの革新的な艦はそうはないでしょうね。まず米海軍協会の記事からです。
Zumwalt Destroyer Leaves Yard for First Set of Sea Trials
By: Sam LaGrone
December 7, 2015 6:51 PM
Zumwalt (DDG-1000) is underway for the first time conducting at-sea tests and trials in the Atlantic Ocean on Dec. 7, 2015. US Navy Photo
12月7日ズムワルト級駆逐艦一号艦がジェネラルダイナミクスのバスアイアンワークス造船所岸壁から出航し、メイン州ケネベック川を下り、大西洋へ向かった。
- 排水量16,000トンのズムワルト(DDG-1000)は外洋での公試に向かう。建造開始の2008年から数回の遅延を繰り返したあと、やっとこぎつけた。公試の前に10月に4日間の「高速巡航」を行ったと海軍次官補ショーン・スタックレー(研究開発調達)は先月Defense Newsに語っている。システムの停止、故障モードのテストなど考えられる事態をすべて再現しているという。
- 米海軍は同艦の写真をソーシャルメディアに公表しているが、それ以外の詳細は一切は発表していない。
- ズムワルトは三隻建造する新型駆逐艦の一号艦で事業は総額2210億ドルで新世代の推進方式を実用化し、今後登場する新型センサーや兵器類に十分な電力を供給する余裕がある。
- ただし建造は日程から相当遅れており、残る2艦の引き渡し日程もずれこむと建造元が通知している。■
あまりにもあっけない記事なのでBreaking Defenseの記事も紹介しましょう。
表題こそ突放していますが、同艦の意義についてよくまとめていますね。ズムワルトは航空機で言えば、革新的すぎて後になってその意味が理解される試作機のような扱いなのでしょうか。
Zumwalt Sails! But Does It Matter?
DDG-1000ズムワルトは米海軍で見栄えのすること随一の艦だが、将来性はない。
- 研究開発、建造、計画見直し、削減と何年も経過してきたが、新型ハイテク駆逐艦一号艦は「海上公試を実施中」と海軍が本日発表した。
- 問題続きの事業だがこれは大きな一歩だ。海軍も当初はDDG-1000級を相当隻数調達しDDG-51アーレー・バーク級の後継艦にする意向だった。だが三隻に縮小され、現在は三号艦の建造取り消しが真剣に議論されている。代わりにアーレー・バーク級の建造再開および小型・安価だが議論のたねとなる多用途艦の建造を検討中だ。
- DDG-1000はクリントン大統領の時代の企画で陸上への兵力投射として長距離火砲を使用する構想だった。
- ズムワルトは数々の新機軸を搭載しており、DDG-1000が2隻あるいは3隻の建造で終わっても今後の艦艇への応用が期待される。とくに目を引くのが「ステルス」船体だ。また自動化を高度に進め、DDG-51より63%大きい艦だが、乗員数は半分にも満たない。
- 重要なのがDDG-1000の電動推進方式だ。ガスタービンで発電するが、大型シャフトを介し推進力とする。さらに艦内でエネルギーを推進以外の各系統に供給する点でスタートレックのUSSエンタープライズの世界に近い。20ノットで航行しても58メガワットの余力があり、これはアーレー・バークの9メガワットの6倍の容量だ。
- この余裕をどう活用するのだろうか。レーダー他のセンサー類は多量の電力を消費する。だがもっと関心を呼ぶのは現在テスト中の新型兵器のレーザーやレイルガンで、実現すれば飛来するミサイルへの海上艦艇の対応が一変する可能性がある。■
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