オランダ空軍の現状はなかなか知る機会がなく、以下の記事は参考になります。NATO内で規模が中途半端な各国は独自の空軍力保有より隣国との共同運用に移りつつあるようですね。それにしてもわが航空自衛隊も機種転換、訓練、保守管理について綿密な計画を着々と進行しているのでしょうか。
Netherlands Preparing For F-35 Introduction
F-35 buy will quicken evolution of Netherlands air force, says commander
Dec 8, 2015 Tony Osborne | Aviation Week & Space Technology
With plans to purchase just 37 aircraft, the Netherlands fleet of F-35 Joint Strike Fighters (JSF) is likely to be one of the world’s smallest.
購入予定はわずか37機とオランダのF-35導入規模は世界最小になりそうだ。
だが同機導入がきっかけとなりオランダの空軍力は変貌し、さらに欧州他国との共同運用の構想を進めることになるだろう。
- 「どんどん変わる環境に機敏に対応できる組織になる必要がある」とオランダ空軍(RNLAF)司令官アレクサンダー・シュニトガー大将Gen. Alexander SchnitgerがAviaion Weekに述べている。
- 同大将は技術開発の進展が速くなり、安全保障の環境にも変化が起きておいr、サイバー技術や情報科学の役割が増大していることで戦場の様相も一変しており、軍組織はこの変化に対応する必要があると説明した。
- F-35導入はこの進化の一部である。「事前かつ積極的に新しい課題に対応できる能力が空軍に必要だ」(シュニトガー)
- 考え方を変えないと、軍は「引き続きF-35をF-16の代替機として、爆弾を空から落とす役割しか考えなくなる。だが、F-35はそれ以上の仕事ができるのだ」
- ただし新型機の導入時期の環境は厳しい。F-35の調達コスト、維持コストは倹約を求める時代にそぐわない。世界経済危機の発生後、オランダ政府は大胆に国防予算を削減してきた。直近ではロシアの動きに直面し国防予算は増加傾向に転じている。
- オランダは2002年にJSF取り決めに著名し、85機導入でF-16の後継機にするとした。2009年にF-35Aを二機運用テスト評価用に発注した。ただし正式な購入の意思を示さなかった。2013年になって正式にF-35選定を発表した。だが、購入規模は大幅に縮小し、37機購入の予算しか計上していない。
- オランダ用機材はイタリアのカマリ最終組立点検施設で組み立てる。
- 点検、海外訓練用、国土防空用の機材を除くとRNLAFが実戦に派遣できるF-35はわずか4機しかない。さらにその稼働期間にも制約が加わるためNATO連合空軍作戦で一定の役割を期待されてきた同国空軍にとってこれも相当の変化となる。
- 「我が国の海外作戦運用能力に不足が発生するのは避けられない事実だ」とシュニトガーは認める。
- シュニトガーによれば37機というのは国務大臣間で受け入れられる最大数であるが、今後引き上げられるよう期待しているとのことだ。ただし短期的には悲観的だという。
- 現在飛行可能な2機はエドワーズ空軍基地(カリフォーニア州)にあり、米主導のJSF作戦テストチームに加わっている。
- RNLAFが想定するF-35の稼働開始は2019年早々で、エドワーズでオランダチームはテスト頻度を上げ、現有のF-16やKDC-10給油機との相互運用性を確認するほか、海軍艦艇や合同戦術航空管制官との運用もテストしている。
- F-16とF-35は「かなり前から一緒に行動している」とアルベール・デシュミット大佐(エドワーズ分遣隊他長)は述べた。テストの一部として第四世代、第五世代機がどこまで効果的に共同作戦できるかを確かめたという。
- 「機体間の情報交換は期待以上でした」(デシュミット)「F-35の性能により第四世代機の実効性があがるとわかりました。状況把握の程度が引き上げられるからです」
- 「ヨーロッパではこれから長期間にわたりこのような第四、第五世代機の混合に加え、第三世代機など消えつつある装備も一緒に運用することになるでしょう。それぞれの組合せで性能をフルに引き出したいですね」(デシュミット)
- シュニトガーによればオランダはF-35を「猛烈な勢いで」機種転換する必要があるという。なぜならオランダにはF-16とF-35を長期間にわたり並列運用する余裕がないためだ。一部のF-16は稼働時間が相当長くなっており、機体維持が困難になりつつある。
- 機種転換の進展ぶり次第だが、初期作戦能力の獲得は2020年に可能となるとシュニトガーは述べた。
- オランダ空軍は導入済みのF-35一機にRNLAF所属のダグラスKDC-10を付けて2016年夏にもオランダ本国に移動させる計画があり、F-35を配備する基地近隣の住民に同機の騒音に慣れてもらうのが趣旨だ。空軍はこの機会に騒音振動測定を行い、F-35を硬化格納庫から運用する際の参考にする。
- この機体はレーワルデン航空祭で国際展示し一般公開する予定だ。
- ボーイングの小口径爆弾をF-16に最近導入したRNLAFはF-35でも今後の搭載兵装の検討をしており、スタンドオフ空対地兵器の導入を長期的に検討している。
- だがシュニトガーによれば空軍は新型兵器が量産段階になるまで静観するという。「ヨーロッパとアメリカで進行中の案件があるとわかっており、可能なら全部採用したい」
- F-35調達で別の課題も浮上している。パイロット訓練で、F-35の性能を引き出すためにはRNLAFはパイロットと機体の比率を現行の1:1から2:1に引き上げる必要がある。だが現行予算では全員に戦闘可能な飛行時間を確保できない。
- そこで選択肢を検討中で、中にはシミュレーター訓練の多様や訓練機の飛行時間も参入したり、F-35訓練用のソフトウェアをもっと運用経費が安い機体にダウンロードすることもあるという。
- また米国で実施中の訓練方法(T-38タロンをユーロNATO合同ジェットパイロット訓練事業に投入)が第五世代機のパイロット養成にどこまで有効なのかを検討している。新型T-Xが利用可能になるのは2023年以降であることも考慮しなくてはいけない。
- 「パイロット訓練でシミュレーションは大きな役割を果たすことになるでしょう」とシュニトガーは言う。「戦闘機パイロットは実機操縦を好みシミュレータは嫌いますが、ここでも状況が変化しつつあり、理解させます」
- RNLAFのパイロット訓練生はレッチェ・ガラティーナ空軍基地(イタリア)で訓練を受ける。アレニア・アエルマッキM346を使い高等ジェット訓練を受け、来るべきF-35に備えている。
- オランダは他のヨーロッパ内F-35共同開発国と戦闘機用のウェポンスクール演習の開催を協議中だ。イタリアと関係が深いオランダはカマリの点検整備施設で重整備を行い、イタリア領空を訓練用に使用できる。
- 「ヨーロッパ内での共有、共同活用は極めて重要です」とシュニトガーは述べる。「二国間あるいは三国間で行えば効果は多国間で行うより大きくなります」
- 隣国のベルギーが重要な防衛協力国だと受け止められている。シュニトガーによればベルギーもF-35導入を決定すれば両国間の防衛協力関係はさらに拡大される。
- 「ベルギーにとっても最良の機種です。ベルギーの意思決定者間では同国の北部に位置する同盟国である我が国が両国空軍の統合運用案を持っていることは承知しているはずです」
- オランダ、ベルギー両国は二国間協定を協議中で、締結すれば両国の空軍部隊が国境をまたがって防空任務に就くことが可能となる。これで各国別の即応警戒態勢を緩めることが可能となる。早ければこれは2017年に実施される。■
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