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歴史に残らなかった機体(1)F-103は設計に終わったラムジェット・マッハ3迎撃戦闘機



The National Interest

The F-103 Could Have Been America's Mach 3 Ramjet Fighter

The XF-103 was an amazing design best left on the drawing board.
XF-103 Fighter. Wikimedia Commons/U.S. Air Force

September 22, 2016

  1. ICBMが登場する前の1950年代はワシントン、モスクワ双方が高高度飛行爆撃機で核攻撃する想定だった。
  2. 当時の主力戦闘機F-86セイバーでは迎撃できないと考えられ、米空軍は1949年に高高度超音速迎撃戦闘機をもとめソ連爆撃機が爆弾投下する前に撃墜をめざした。
  3. 構想は1954年型迎撃機事業と命名され、その年に供用開始を見込んだ空軍に提案9件が寄せられた。そのうち三案が初期開発に進んだ。コンベアはその後F-102デルタダガーとなる案、ロッキードはF-104スターファイター、リパブリックエアクラフトはAP-57を提案しXF-103と命名された。
  4. 三案でXF-103がずばぬけて先端的で、リパブリックは時速2600マイル(音速の三倍)で高度80千フィートを飛行するとした。1950年代初頭ではF-86とMiG-15が朝鮮半島で数百マイルの速度でドッグファイトをしていた中でXF-103は航空機と言うよりロケットのようなだった。
  5. 図面から起こした想像図は巡航ミサイルのように見える。高速度を得るためリパブリック(のちにF-105サンダーチーフを製造)は複合推進方式を想定した。ライトXJ-57ターボジェット一基で離陸と通常飛行し、ソ連のバジャー、ベア、バイソン各爆撃機にダッシュが必要となればラムジェットを始動する。ラムジェットは前方から空気を吸い込み、燃料と混合させ、後方に排出する比較的単純な構造だが前提は機体なりロケットがすでにマッハ1以上の速度で飛行している必要がある。ラムジェット効果を得るための空気圧縮度のためだ。そこでXF-103はまずターボジェットで速度を稼いでからラムジェットを始動する。
  6. 装備には長距離レーダー、GAR-3ファルコンレーダー誘導対空ミサイル6発、非誘導指揮マイティマウス2.75インチ対空ロケット弾36発を搭載する構想だった。マイティマウスは良い考えだっただろう。なぜならファルコンは空軍の第一世代でヴィエトナム戦で欠陥を露呈し54発発射して命中はわずか5回だった。XF-103は機関砲を搭載しなかったが、この発想がやはりヴィエトナムで障害となった。マッハ3飛行中に機関砲を発射する管制レーダーを1950年代に実現するのは難しかったからだ。
  7. 独特の射出脱出装置を搭載する予定だった。コックピットの与圧が失われれば、座席下の隔壁が上昇し、パイロットを包む与圧ポッドを形成する。パイロットは機体を基本操縦だけで帰還させ、視界は潜望鏡で行う。あるいは射出脱出が必要となれば、ポッドがレールで降下し機体底部から機外に放出する構想だった。
  8. だがXF-103は地上モックアップから先に進まなかった。競合するコンベアーのF-102が現実的な選択肢となり採用されると空軍はXF-103への関心を失った。遅延とコスト超過のため試作機一機制作まで規模が縮小される。ライトXJ67エンジンは結局完成しなかった。空軍は1957年8月にXF-103事業を断念した。
  9. F-103として米空軍に配備されていたら、無駄な投資になっていただろう。ソ連が大量の長距離爆撃機でアメリカを攻撃する恐れは根拠がないと後にわかる。1960年代初頭にソ連はICBMに軸足を移していた。迎撃対象の爆撃機はわずかで、F-103はヴィエトナム上空の低速ドッグファイトには全く不向きであったはずだ。
  10. 結局XF-103の驚異的な設計は図面台に留まった。
Image: XF-103 Fighter. Wikimedia Commons/U.S. Air Force

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