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★★★現状と米空軍の楽観的な見方があまりにも乖離しているF-35テスト状況。実戦投入は当面不可能な状態



機体が揃っても戦場にこのままでは投入できない.....とにかくIOC宣言で早く戦力化を実現したい米空軍、巨大すぎて潰せないことをいいことに管理しきれていないロッキードはペンタゴン内部から正直なコメントが出て関係者は困惑しているのでしょう。でもどちらが正しいのか。これから時間が経つとはっきりしてくるでしょう。今回の指摘事項にはこれまでお伝えした内容と重複する部分と実際の運用部門でないとわからない新事実も含まれています。米空軍、ロッキードもここまで来るとほとんどフィクションの世界を信じるしかないのでしょうか。まだ自殺者が出ていないのが不思議といえば不思議ですが。ギルモアメモが正しいとすれば関係者の精神健康はおかしくなっても不思議はありません。むしろ西側の防衛がこの機体のせいで大きな後退とならないように祈るばかりです。逆にロシア、中国等は同機の評価をする良い機会でしょうね。
We go to war so you don’t have to
The F-35A. U.S. Air Force photo

The F-35 Stealth Fighter May Never Be Ready for Combat

Testing report contradicts the U.S. Air Force’s rosy pronouncements

by DAN GRAZIER & MANDY SMITHBERGER
F-35はペンタゴン史上で最高額の調達事業となったが日程の遅れ、大幅な予算超過やぱっとしない性能評価に苦しまされている。
米空軍が8月に空軍向け機材は「戦闘準備完了」と宣言し、報道の大部分は事業が曲がり角へ到達したと大々的に書き立てたがペンタゴンの試験評価トップが出した文書は空軍によるテスト結果を元にしつつ宣言は時期尚早だったとしている。
作戦テスト評価部長マイケル・ギルモアの出したメモは痛烈だ。F-35は「成功からはずれたコースにあり、ペンタゴンが4,000億ドル支出したブロック3Fの性能をフルに引き出すこともこのままだたと失敗する」
メモは16ページに渡り、まずBloombergが報じた。内容は同事業のトラブルがどこまで深いかを示し、全納税者が期待する基本性能でさえ実現できていないと述べている。
ペンタゴン試験評価部はF-35は戦闘に出せない、「想定ミッションをこなせず、現存する脅威対象に対抗できないため」としている。
現状のままではF-35は戦闘空域から離脱し他の機体の助けを求めるしかない。なぜなら敵脅威の位置をつかみ、回避し、目標を捕捉し敵戦闘機と交戦する能力に欠陥があり、搭載兵装が限定(爆弾二発、空対空ミサイル二発)されるため他機の支援が必要だからだ」
メモでは事例を上げてF-35Aは現行機種より能力が劣るとし共用事業推進室や空軍将官が出してきた好意的評価の数々は虚偽であったと明確に指摘している。
そうなると航空戦闘軍団司令官ホーク・カーライル大将が最近の記者会見で発言した内容や共用事業推進室長クリストファー・ボグデン中将の議会内証言はメモ内容と真っ向からくいちがうことになる。
「F-35Aは全装備中で最も強力な存在になる。なぜなら現行機では不可能な場所にも進出して現代戦に必要な性能を発揮できるからだ」とカーライル大将はIOC発表時に述べていた。
だがギルモアはこれは事実ではないとし、空軍も事実を先に知っていた証拠があるという。
空軍は戦闘能力獲得の宣言の前に評価を実施している。今回の作戦テスト評価部長メモでは空軍の事前評価テスト結果と全く同じ結論が得られたとしF-35の性能不足を残酷なまでに暴露している。
議会、国民が同機の欠陥を知る事に至ったのは議会が第三者試験機関の設置を1983年から義務化しためという事実は重要だ。現部長はどこにも所属せず誠実な人物だ。
F-16 がF-35 のそばでフレアを発射。オランダにて。. Frans Berkelaar photo via Flickr

限定付き戦闘能力

空軍は議会に対し初期作戦能力(戦闘態勢完了)の根拠は現行F-35A(ブロック3i)で基本ミッション三種類が実施可能になったためとしている。近接句空支援、航空阻止並びに限定付き敵防空体制攻撃だ。
各軍は新型F-35を連続「ブロック」の形で受領する。各ブロックで先のブロックを上回る性能を実現する。空軍が今回戦力宣言した機体にはブロック3iという暫定版が搭載されブロック2Bが使っていた時代遅れのコンピュータを新型に取り替えている。一方でブロック3F開発が遅れており、この搭載で契約上の戦闘能力をすべて実現することになっている。
米空軍の現行仕様では長距離空対空ミサイルは二発しか搭載できず(ドッグファイト用の短距離熱追跡ミサイルは搭載しない)地上攻撃用の爆弾は二発のみとなる。兵装搭載がここまで成約されたのはソフトウェアの不備のせいであり、機体にはもっと多くの種類の兵装搭載の余地がある。
.ただしこれ以上の兵装は外部搭載する必要があり、航続距離とステルス性能が下がることになる。
次に控えるソフトェアのブロック3Fは開発で現在大きな問題に直面している。2001年に多様な武装を搭載する想定があったが、F-35をこのために作戦テストするのはまだ先のことであり、現行機材には大きな影響は生まれていない。
そこで当面は現行F-35を戦闘に投入するとしても(作戦テスト評価部長メモは明確に不可能とする)、搭載可能な弾薬類が限定されることでF-35のフライトは短距離限定となるだろう。
もう一つの根本的欠陥は機関銃が使えないことだ。ブロック3i 機には機関銃運用はできない。なぜならブロック3Fで初めて稼働可能となる予定でこのソフトウェア開発は完了していないためだ。この事実はすでに多方面で報道されている。さらに最新型ヘルメットが銃の照準を合わせる唯一の手段だ。
最新の作戦テスト評価部の報告書では機関砲で別の問題があると指摘している。空軍のF-35Aについてで機関砲を内部搭載するのは同型のみ。(海兵隊、海軍仕様は機体下部に外部搭載する)
F-35Aのステルス性を確保するため、内蔵機関砲は扉の下に装着し、この扉を発砲時に開閉する。空軍はF-35Aによる初の機関砲射撃の映像を誇らしく公表した。だがドア開閉で機体がわずかに方向を変えることが判明した。ドアの抗力によるものだ。これで機関砲射撃が命中しなくなる可能性が十分ある。
作戦テスト評価部長のメモではこのドアが原因の照準エラーは「正確な射撃性能を定めた仕様の許容範囲を逸脱する」としている。一方、空軍のF-35が搭載する銃弾は181発とF-16の511発、A-10の1,100発と大きく差がある。戦闘では一発の意味は大きい。

2,000ポンド JDAM爆弾を投下するF-35A in 2012. Photo via Mark Jones, Jr. / Flickr

F-35の近接航空支援能力で自軍地上部隊が苦しむ


将来の近接航空支援をめぐる議論はまだ続いているが、たしかなことがひとつある。F-35は地上部隊支援の実施がまだできず、永久にできない可能性を示す理由も多数ある。
作戦テスト評価部長メモではF-35がCAS任務に適しているとの意見を根本から揺るがしている。F-35は敵防空網の効率が高い場所での近接航空支援の実施が期待されステルス性能は必須だ。
だがCASが求められる戦闘は通常は敵防空体制の場所では展開されない。メモでも近接航空支援は低防空脅威体制で実施されるのが通例と指摘する。これは同機の近接航空支援は不可能と言っているに等しい。
近接航空支援の議論は空と陸の双方から考えるのが大切だ。
航空部隊は地上部隊と相互に支え合う。近接戦闘が始まるまでに敵の防空体制が無効担っている前提だ。また敵軍も地上戦闘に忙殺され、高性能ミサイルは戦闘地域に持ち込んでいない前提だ。なんといってもミサイルは装甲がなく、移動に時間がかかり、再補充が困難だからだ。
F-35のCAS実施能力は極めて限定されたままだ。
作戦テスト評価部長メモでははっきりと「F-35Aはブロック3i仕様では数々の制約が加わり、CAS任務の効果は現状のF-15E、F-16、F-18やA-10の水準に及ばない」としている。
前述したがF-35Aは「初期作戦能力」ありと認定されているが、爆弾は二発しか搭載できず、しかもこの爆弾の威力が大きすぎるため近接戦闘では友軍の被害を恐れ投下できない。CASでこの爆弾を投下した場合、機体は即座に基地に帰還し再装填して再び戻ってくる必要がある。
F-35Aが使用する基地は戦線から離れた地点となる公算が大きい。というのは、8,000フィート長のコンクリート滑走路に加え膨大な支援装備が必要だからで、このためCAS任務での対応が遅くなる。
友軍地上部隊支援に機関砲が使えないことが痛い。F-35に実用水準の機関砲が搭載されるのは2019年の予定だ。
機関砲はCASではロケット弾より効果が大きい。(F-35Aでは今のところロケット弾は搭載していない) とくに「危険度が高い接近」状況における交戦でこのことは確実だ。敵が友軍に極めて近いところまで進出している状況のことだ。
F-35Aで搭載可能な爆弾二種類のうち小型のGBU-12は500ポンド爆弾で高度250メートル地点から投下した場合友軍が被害を被る可能性は10パーセントと軍のリスク試算表は示している。大した数字に見えないかもしれないが、歴史をひもとけば戦闘の大部分は100メートル以内で発生している。
もしF-35AがCAS任務に投入されるのであれば、我が地上部隊に接近してくる敵には150メートル以上も余裕が生まれることになる。つまり空からの攻撃を恐れずに行動できる範囲だ。
機関砲が有効に使えればこの問題は解決する。F-35は25ミリ機関砲一丁を搭載する。同機関砲の安全リスク距離は100メートル。もちろん安全距離は機がどれだけ正確に飛行し、照準を合わせるかで変わる。
作戦テスト評価部長のメモにあるように機関砲の砲口扉を開けるだけで機体は一方向へ引っ張られ、弾丸が友軍ノ一する手前に落ちるあるいは敵陣の背後に着弾する可能性が残る。
だがこれはあくまでもF-35が戦場上空で十分な時間滞空し、必要とされるときに爆弾投下や銃撃を加えることができる前提だ。F-35は燃料消費が大量との悪評が高く空中給油機がなければ地上部隊用の滞空は不可能だ。
メモでは「F-35の燃料消費量は高く、空中給油の燃料搬入量が低いため給油時間が長く、結果として待機時間が短くなる」としている。
.残念ながら地上部隊は空中給油や再装填が終わるまで待ってくれない。燃料消費量が多いことと機体抗力が大きいことでF-35は行動半径が短く、現場滞空時間は短い。
各型F-35が共通した問題を抱えており、短距離でしか有効性を発揮できないため、対策として給油機に戻る機体があれば別の機体を戦場上空に滞空させることがある。だが、整備陣がF-35を飛行可能状態に保つことで問題があるとすでに指摘があり、同時にローテーション運用が可能となるだけの機数を確保できるようになるか疑問だ。
現状のF-35出撃率でこの問題がすでに浮上しており、今のところF-35の飛行は5日に一回程度にとどまっている。
いいかえるとF-35を12機で運用する飛行中隊がアフガニスタンやシリアに進出すると、二機一組のミッションを一日に一回実施して全国を対象にするのがやっとということになる。
F-35As. U.S. Air Force photo

データ融合のはずがパイロット負担増に

広報部門や「専門家」から広くアメリカ国民にお金がF-35で無駄になっていないとし、同機には機内センサーが集めるデータと他機のセンサーや地上配備センサーを統合する能力があると宣伝している。

これをデータ融合と呼び、各F-35の搭載するレーダー、ヴィデオカメラ、赤外線シーカー、パッシヴ電子戦受信機で敵位置を突き止め、空中地上の敵脅威を把握する。
F-35の売りの一つとして搭載コンピュータで機内外のセンサーが集めた情報を統合し、センサー情報を一つにまとめて表示するとしている。(既存機種ではセンサーごとに情報を表示している)
単一表示を即座に編隊僚機と共有することで全員が正確かつ確実な標的情報や脅威環境が周囲にあることを認識でき、無線による音声のやり取りで時間を取られることなく、迅速に行えるとしている。
これはそうありたいという姿であって、実際にはF-35では自機のデータを管理統合するのにも苦労し、ましてや僚機や偵察機とのデータ融合はできていないのが現状だ。
テストパイロットからはF-35でセンサーをすべて作動させると実際と違う結果が表示されるとの報告が上がっている。レーダー及び赤外線センサーを同時に作動させ敵機一機を探知すると、2つのセンサーがヘルメット内画像へ敵機二機として表示する。地上標的を相手にしても同じ現象が発生している。
そこでテストパイロットはセンサーは一つだけ作動させて無駄な探知結果を消去している。作戦テスト評価部長によれば「これでは戦闘に役立たずだ。多数の探知手段から結果をまとめて正確に追尾をし、状況認識度を引き上げ敵を突き止め交戦する原則にも反する」としている。
F-35各機のコンピュータが戦闘空域で何が発生しているかを把握するのに苦労するのでは話にならない。だが間違った標的情報を複数のF-35がデータを複数機材データリンク Multi-Aircraft Data Linkで共有すれば問題を複雑化するだけだ
F-35最大の利点とされてきたものが期待値に達していないだけでなく、パイロットの負担を増やしているのだ。
整備員がデバイスをF-35に接続する。U.S. Air Force photo

ロジスティックスのソフトウェア問題

もう一つの問題hが自動ロジスティックス情報システムAutonomic Logistics Information Systemと呼ばれる大規模コンピュータシステムでミッション運用保守整備診断保全日程部品発注をすべて自動化する構想だだが厄介なALISが頭痛の種になっている
アップデート版ALIS 2.0.2は米空軍の初期作戦能力獲得宣言と同時に供用開始のはずだったが、実際はIOC時点でも新バージョンはまだ完成していない。ロッキードがプラット&ホイットニーの独自エンジンコンピュータデータシステムをALISに統合できていないためだ。
ALISは機内と地上のコンピュータをつなぎ、ソフトウェアで世界規模のネットワークを形成し、F-35の毎回のフライトで飛行経路、標的、脅威データをアップロード、ダウンロードし保守整備問題を診断し、必要な補修整備を整備陣に指示し、部品発注し、部品装着状態を管理し、機体の改修履歴を見ながら整備陣に予防保全を行わせる。コンピューターコードは24百万行に及ぶ。
同時にF-35配備基地には大型ハードウェアの配置場所が必要になる。最新のALISハードウェア構成は当初よりは小型化し使いやすくなっているが、それでも移動時には立ち上げに数日かかる。このためF-35は簡単に配備展開するのが難しく、作戦運用上で間に合うのか疑問の声があがっている。
たとえば各機のデータを新型ALIS地上コンピュータへダウンロードするには24時間が必要だ。このためF-35を新地点に移動させるとデータ転送だけで丸一日が無駄になる。かつ、データアップロードは一度に一機しかできない。ということはヒル空軍基地所属の最初の「実戦」飛行隊12機を戦闘任務に投入する場合は飛行隊全体の整備活動をALISで開始するまで2週間が必要となる。

ALISのアップロード・ダウンロードでは最高機密のミッションデータを取り扱うため、ALISコンピュータは特別警護施設に格納されており、移動用コンテナー施設の一部となっている。
さらに前線配備施設は大掛かりなことに加え、海外の戦場では民間契約企業に設置運営を任せることになっている。ロッキード・マーティンから業務委託を受けた業者が機体からデータをALIS施設へ転送する。プラット&ホイットニー社関係者もエンジンデータを飛行後点検整備のため転送する必要がある。
開発期間中ならいいが、戦闘現場でこのような仕組みを動かすと配備の邪魔であり、基地選定も民間業者の安全を考慮すれば自ずから限定されてしまう。つまり前線から遠く離れた地点となり、緊急時の対応に時間がかかり、ただでさえ数が少ない空中給油機の出番が更に増えてしまう。
兵装扉を開放したF-35A U.S. Air Force photo

今後の戦闘投入への不安

事業では戦闘対応可能なF-35をブロック3Fとしてシステム開発実証段階(2018年末期限)の終了までに準備するのが狙いだ。

ギルモア部長のまとめでは一部では簡単なフライトテストなど進捗が見られるが、ペースは予定から大幅に遅れ、ブロック3Fのテストが予算内期間内に完了するのは絶望的とする。またフライトテストでこの部分が一番重要な点なのだ。
ギルモア試算では開発テストフライトは最低でもあと一年必要で「予定したテスト項目で新規性能を確認し、数百件残る不具合点を改修する」のだという。
となると2018年までの運用テスト完了は無理だ。
事態をややここしくしているのはこの重要な時期でテスト要員が現場を去っていることだ。テストセンターの離職率は20%近くになっていると運用テスト評価部長はまとめており、交代補充がないと指摘。
ギルモア部長からは整備要員含む関係者の一時解雇も始まっていると指摘があり、技術者やデータ解析者も例外ではない。一時解雇を見てまだ仕事があるスタッフもいち早く次の仕事を探している。
そうなると統合テストセンターに多くの作業が残る中で人員不足が大きな影響を出すと指摘。
管理の不手際さが露呈した形だ。JSFの開発完了まで道は遠いが、関係者は適切な予算配分を図るよりも将来の調達予算増額に熱心なようだ。
JSF関係者としてロッキード・マーティンと政府の双方から繰り返し低率初期生産から脱却の希望が表明されている。議会には465機の一括購入を求め、巨額の前金確保を米国並びに海外軍事パートナーから2018年開始を想定し要望している。
にもかかわらず人員増員や飛行時間の追加の要望は表明されていない。開発をこれ以上長引かせないためにもこれらの手当が必要なはずだが。
生産増となれば修正手直しなければ配備できない機数もそれだけ増えることになる。
米会計検査院は初期製造機を対象に開発テスト期間中に見つかった結果を修正するのに17億ドルが必要と試算している。その分の費用が今後調達されるF-35に上乗せされる。
現時点で175機が運用可能となっている。
2017年にペンタゴンは80機を調達し、2018年は100機を導入する。355機の機材がそろっても戦闘に投入できず、開発、運用両テストで見つかる問題の修正作業に回される。(さらに作業内容の効果を確認するテストも必要だ)
作戦テストと評価は2021年までに完了する気配がない。つまり355機が戦闘遂行可能となるのは採炭で2023年で、2024年あるいは2025年になる可能性は十分ある。言い換えれば355機(これに加えて2018年以降に完成する機体すべて)が戦場に投入されるのはあと7-9年後ということだ。
新問題が浮上すると日程と費用は大きく影響を受ける。現時点で完成済み機材で大規模な欠陥が見つ勝った場合の予算は準備されていない。
開発テストよりも生産準備に予算を当て増産を狙えば各軍と納税者の手元に数百機の運用不能機材が残るだけだ。国防総省には製造ずみ各機を戦闘可能に変える予算がない。各機の使い道は部品取りしかないだろう。
不活性GBU-31爆弾を F-35A に搭載する。アイダホで。. U.S. Air Force photo

今後のテスト体制が不確かだ

最も心配されるニュースは空軍関係者と共用事業推進室が増産を急ぐあまり、今後のテストは重要視していないことだ。ギルモア部長は「適度な内容の評価試験へ向けた準備企画が停滞している」と報告する。
その証拠としてギルモアは推進室の計画案では戦闘テスト用に量産機を手配していないと指摘。ギルモア部長によれば同計画では作戦テストの実施用に十分な数の最終仕様機材が手配できないと見ている。
「大幅な計画遅れと開発テスト期間中に見つかった問題により大幅な改修が作戦テスト用機材に必要となった。これらの機材は製造中に試験用の配線を施してあり、量産型と同じ仕様にする必要がある」と報告書は指摘している。
報告書ではさらに対象23機に155点もの改修箇所があると指摘し、これがないと戦闘テストの実施ができず、一部の回収作業は実施先が未定のままだという。つまり作戦テスト評価の実施ができないことになる。
推進室が適度な運用テスト案の作成に失敗したばかりでなく、テスト予算の確保にも失敗し、テストそのものに必要な施設が確保できていない。
なかでもフライトテスト用のデータ収集記録テレメートリーポッドの予算が手当できていない。これは兵器発射の模擬試験で得るデータの記録解析用には不可欠な装備だ。ポッドの作動が確認されて安全が確保されるまではテストも実施できない。

空軍はIOC宣言前に解決すべき課題を7つまとめているがそのうち解決したのは4つだけのままIOCを発表したDOT&E list
報告書では高度に複雑で戦闘状況を再現するテストシナリオに必要なシミュレーション施設がまだ完成しておらず、予定からも遅れているとも指摘している。ただしこれは推進室が過去15年間実現を約束していた内容だ。
この施設は検定用シミュレーターと呼ばれ、現実に限りなく近いコックピットのシミュレーター複数を含み、複数機による戦術シナリオを高度環境を想定して再現するものだ。
F-35の有する多様な性能を試すためには唯一の手段となるのはF-35編隊が直面するはずの脅威内容をすべて再現するには演習地では不可能なためだ。
2001年以来ロッキード・マーティンの技術陣は同施設の生産契約でとりかかっているが、ここまで来ても完成しておらず、作戦テスト評価部は運用テスト開始までに間に合うのか気にもんでいる。
そこで推進室はシミュレーター開発を海軍実験部門に任せることした。
作戦テスト評価部の報告書ではこの検定用シミュレーターが運用開始となるのは予定される作戦評価テスト開始2018年には間に合いそうもなく、完成はその二三年以上後と見ている。
Michael Gilmore, the Pentagon’s Director of Operational Test and Evaluation. C-SPAN capture

F-35を正しく評価する最後の砦は?

今回のメモでは空軍によるIOC宣言は広報材料以外の何物でもないとしている。

不幸にもギルモア部長のメモはF-35の正しい評価を議会、ホワイトハウス、国防総省またはアメリカ国民に示す最後の機会になる。作戦テスト評価部長のギルモア自身は大統領による任命なのだ。
ギルモア自身は中立性をたもち分別のとれた演技者の役割を果たしている。何度も誘惑に駆られたはずで実際に前任者はこれにたえきれなかったのだが、転職後の防衛産業を意識した見解を示すことで運用テストの失敗を水増しして事業になんの悪影響もないと見せかけることや不十分なテスト案にも眼をつぶることができたはずだ。
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