スキップしてメイン コンテンツに移動

もし戦わば⑤ J-20対F-16(台湾)、F-15(日本)


日台両国とも主力戦闘機の性能改修を着実に行わないと、中国新型機に対応が難しくなるね、という主張です。中国のエンジン技術が遅れていることが救いですが、長距離誘導ミサイルの登場で空戦の様相が相当変わってきているようです。J-20はむしろ支援機としてのAWACSや空中給油機を緒戦で撃ち落とすのが目的と思っていましたが、日本の防空体制に穴が開けば各地の自衛隊基地へのミサイル攻撃も視野に入ってくるでしょう。

The National Interest


China's J-20 Stealth Fighter vs. America's F-35, Taiwan's F-16 and Japan's F-15: Who Wins?

September 22, 2016


中国軍がわずか四分の一世紀で劇的に進歩している。
中国は米国を標的とした機材に多額の投資をし、アジアの覇権を賭け米軍と対抗する動きを示している。その例が台湾であり東シナ海、さらに緊張が高まる南シナ海だ。装備には議論の種となるDF-21D(「空母キラー」ミサイル)、巡航ミサイル、高性能機雷、潜水艦、無人機等接近阻止領域拒否を狙う装備が目白押しだ。
空の上でも進展がある。特にJ-20新型第五世代戦闘機が注目される。米第四世代、第五世代機並びに日本、台湾他の機材を相手に設計された同機には米国のみならず各国防衛関係が大きな関心を寄せている。
だが戦闘になれば同機はどんな活躍を示すだろうか。台湾のF-16や日本のF-15との対決はどうなるか。そこでカイル・モチズキの以前の記事をお届けする。アジアの空を制するのは誰か。

台湾空軍が相手の場合
  1. 台湾をめぐる軍事優位性のバランスはゆっくりと変動中だ。中華民国空軍の戦闘機部隊が確保してきた優位性は台湾国防予算の減少とともにゆっくりと中国の側に向かっている。
  2. 内戦に敗れた中華民国政府は台湾に逃れた。大陸とは二百マイルと離れないままで台湾が強力な海軍空軍を維持し、中国が貧しいままなら月の裏側に等しかった。
  3. だが現在の中国は貧しさを脱却し富に見合った軍事力を構築中だ。中国は台湾が対応できないほどの機数の軍用機を整備しており、第五世代戦闘機も同時に二型式を開発中だ。
  4. 成都J-20は昇竜の名前で開発はまだ終わっていないが、台湾の安全保障上で最大の脅威といってよい。大型双発でステルス性を兼ね備え長距離飛行が可能なJ-20(各種型式がある)は長距離航空優勢戦闘機となるだろう。
  5. これまでの中国戦闘機は短距離性能のため台湾上空で滞空時間に成約があったが、J-20は大型で機内に大量の燃料搭載が可能だ。そのためJ-20は中国本土の基地から出撃し、台湾上空の戦闘機を排除し台湾空軍を標的にすることが可能だ。J-20のステルス性能が設計通りなら台湾の防空レーダーは同機の追尾に苦労するはずだ。
  6. J-20が搭載するセンサー類一式は新型アクティブ電子スキャンアレイ方式AESAレーダー(現在開発中と推定)や赤外線捜索追尾(IRST)があり、後者でパッシブ方式で追尾撃墜ができるようになるはずだ。
  7. 台湾上空へ飛来すればJ-20は相当の火力性能を発揮するはずだ。昇竜には三箇所の機内兵装庫があり、ふたつが短距離用ミサイル、のこりに中長距離ミサイルを搭載する。航空優勢確立ミッションに投入する際の標準ペイロードでPL-15レーダー誘導長距離ミサイル4発を搭載するはずだ。推進方式にラムジェットも採用しているPL-15の有効射程は95マイルから125マイルだろう。
  8. このJ-20に立ち向かうのが台湾空軍のF-16ファイティングファルコンで獰猛な機種だ。もともと軽量の昼間限定戦闘機としてF-15を補完する存在だったF-16は全天候多用途戦闘機に進化している。機体価格が比較的安くて多彩な任務をこなすF-16は台湾にはいい買い物だった。
  9. 台湾空軍のF-16Aブロック20の150機は1992年発注、1997年から2001年にかけて納入されており、20年近く経過している。ブロック20はAN/APG-66(V)3レーダーでAIM-7スパローおよびAIM-120C7AMRAAM中距離レーダー誘導方式ミサイルを運用する。レイセオン製の電子対抗手段ポッドとプラット&ホイットニーF-100-PW220ターボファンエンジンを搭載する。
  10. 2011年になり、新型F-16を66機の発注が不成約になり米国は台湾とともに導入済み機材の改修に注力し、センサー、航法、武装を改良した。APG-83拡張可能機動ビームレーダーScalable Agile Beam Radar (SABR)が搭載された。これはF-22やF-35のレーダーから生まれた新しいハードウェア、ソフトウェアである。
  11. 台湾はSNIPER ポッドの搭載も検討している。これは空対地精密目標捕捉機能のあるポッドで空対空赤外線相殺追尾にも応用できる。またAIM-9Xサイドワインダーも導入する予定だ。これは最先端のドッグファイト用ミサイルで米軍ではすでに導入済みだ。
  12. 航空優勢ミッションでは台湾F-16はAIM-9Xサイドワインダー4発ととAIM-120AMRAAMを2発搭載するだろう。
  13. では空中戦で勝つのはどちらか。交戦を視程内、視程外で区別してみてみよう。
  14. 視程外交戦ではJ-20がF-16を一方的に撃墜するはずだ。J-20の設計が正しければステルス、高性能レーダー、長距離ミサイルの組み合わせが功を奏するはずだ。F-16搭載のSABRがJ-20を相当の距離で探知する可能性もあるが台湾機で足かせになるのはAMRAAMミサイルがジャミングに弱いことだ。PL-15を搭載し、ステルスに守られたJ-20は理論上はF-16パイロットが気づく前に同機を撃墜しているだろう。
  15. 短距離戦となるとJ-20の操縦性の悪さが浮上するはずだ。F-16は逆に高い操縦性を発揮し、AIM-9Xサイドワインダーミサイルが本領を発揮する。だが長距離高性能視程外ミサイルの登場で有視界内の交戦は相打ちとなる可能性が増えてきた。
  16. このため中華民国空軍はJ-20に手こずる可能性が高い。探知が困難であり、台湾機に先制攻撃を仕掛けてくる公算が高い。そこで考えられる戦術として台湾の山岳部を利用して低高度に機体を待機させることがある。これでJ-20の長距離交戦能力を無意味にできる。また中国のルックダウン、シュートダウン能力はまだ西側水準に達していない。台湾が低周波地上配備レーダーやE-2Tが搭載するUHFレーダーでJ-20探知に成功すれば、F-16で有利な待ち伏せ攻撃をしかけることができ短距離戦に持ち込めば成功の可能性は高い。
  17. J-20の高性能と機体構成は台湾にとって現実の脅威だ。中国空軍の規模と成長する威力の前に台湾は自国上空の航空優勢の確保が一層困難になるだろう。そうなると城塞型の姿勢を採用し、両国がA2AD戦術を採用することになるかもしれない。
航空自衛隊が相手の場合
  1. 日中両国の緊張が高まっており、両国の軍用機が空中で遭遇する事案が増えている。人民解放軍空軍(PLAAF)のSu-27が東シナ海上空で日本機により目撃される機会が多くなっており、日本のF-15が沖縄から緊急発進している。
  2. 空での対峙はもう普通のことになっているようだ。では近い将来にJ-20が作戦投入されたらどうなるだろうか。J-20の供用開始は2010年代末と言われる。
  3. その時点で日本はF-15Jイーグルをまだ運用しているだろう。確かに優秀な機材ではあるが、防衛省は本来ならいまごろF-22ラプターに交替させているはずだった。不幸にも米議会がラプター輸出を禁止してしまい、F-15は後継機種がないままだ。
  4. 日本がF-15導入を開始したのは1981年で、ライセンス生産で三菱重工業が製造し、大方は米国が運用中の機体と同じだが例外が電子対抗装置およびレーダー探知警告装置で米政府がこの2つの販売を拒否した。当初はAIM-9サイドワインダーとセミアクティブ方式のAIM-7スパローを搭載していたが、後者はAIM-120AMRAAMに換装された。M61機関砲(20ミリ)も搭載する。
  5. F-15Jは223機が納入され、8機を事故喪失した。
  6. 日本は2000年代早々から性能改修を開始し、新型赤外線誘導ミサイル(AAM-3およびAAM-5)を搭載し、エンジンを改良し、AN/APG-63 (V)1機械式スキャンパルスドップラー・レーダーやAAM-4Bレーダー誘導ミサイルが運用可能となった。改良型の電子対抗措置や機首に赤外線探知追尾センサーもついて近代化が実現した。しかし、改修は非常に高価で年間10機未満しか作業できない。このため改修が完了したF-15Jはまだ半数未満だ。
  7. 成都J-20は謎の機体だ。中国初の第五世代戦闘機としてまず2011年にその存在が確認された。双発、単座機で前方カナード翼とステルス性能を有するJ-20はF-15Jより僅かに全長が長い。機体は長く幅広で内部兵装庫と燃料タンクに活用している。短距離、長距離双方の空対空戦および空対地ミサイルを搭載する。
  8. J-20のノーズコーンは大きく高性能の電子スキャンアレイレーダーを搭載できるはずだ。長距離で敵目標の捕捉に有効でレーダー誘導ミサイルで攻撃できる。最近完成した試作型では赤外線探知追尾システムと電子光学式目標捕捉装置で空対地攻撃に対応できるようだ。
  9. 正確な任務は不詳のままだ。長距離ミッションを念頭に製造されているようだ。「昇竜」はロシアのMiG-31同様に高速かつステルスの迎撃機として敵の空中給油機やAWACS、偵察情報収集機を撃墜する想定なのかもしれない。あるいは中型爆撃機なのかもしれない。米F-111同様に沖縄や日本国内の各基地を攻撃するための機体かもしれない。
  10. ここで検討したいのはJ-20を長距離対応可能な航空優勢戦闘機と想定した場合で、F-15Jと空戦に入れば勝つのはどちらか。
  11. J-20の機体設計が正しくレーダー断面積が小さいとすれば、F-15Jでは長距離からの探知は困難だろう。またF-15Jにはステルス性がなく-20は容易に日本機を探知できるはずだ。このため視程外戦ではF-15Jに幸先が悪い。ことにJ-20が搭載するPL-15ミサイルがあり、アクティブレーダーシーカーおよびおそらくパルスロケット推進あるいはラムジェット推進となっているはずだ。
  12. 接近戦になればF-15Jが優位に立つ。J-20は推力不足と言われ、F-15の推力重量比が際立つ。またF-15のドッグファイト実績は他に例がなく高推力と操縦性で有利な位置につけるはずだ。
  13. もうひとつ検討してみよう。J-20はまだ試作機の段階で銃はまだ搭載されていない。銃の効用を巡っては今も専門家の意見は分かれるが、接近ドッグファイトではF-15JのM61ガトリング砲が効果をあげるはずだ。
  14. 成都J-10と三菱F-2の比較では接近戦ではJ-10が、長距離戦ではF-2がそれぞれ優位と判定された。航空優勢戦闘機同士の戦いとなると逆転する。中国の歴史上のライバル国を一気に追い抜いて第五世代戦闘機を完成させた事実には主要国が一様に驚いているはずだ。■
Image: Creative Commons/Flickr.

コメント

このブログの人気の投稿

★★★F-35とF-105の意外な類似性、戦闘爆撃機でドッグファイトは不得手

THE BUZZ America's F-105 Thunderchief Fighter-Bomber: The F-35 of the Vietnam War?
David Axe July 3, 2016 http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/americas-f-105-thunderchief-fighter-the-f-35-the-vietnam-war-16839
War Is BoringによればF-35はF-16との模擬空戦で旋回速度が遅すぎて勝てなかったとテストパイロットが語っている。
これからの米空軍で最多の戦闘機材になるF-35が数で優勢なロシアや中国の機体と戦って残存できるのだろうか。 答えは歴史の中にある。50年前にも米空軍は同じ予測をしている。攻撃の主力F-105サンダーチーフは重量級ハイテク地上攻撃機で敵戦闘機も同時に撃退できるはず、とF-35と同様だった。 だが事実はF-105も旋回速度が遅くロシア製MiG-21に太刀打ちできず、空軍はF-105の損失を防ぐ特別な戦法を編み出した。同様の措置はF-35でも必要だろう。 F-35とF-105は驚くほど似ている。「F-105とJSFは大型、単座機、単発の戦闘攻撃機で、その時点で最強力なエンジンを搭載、空虚重量は27千ポンド級で翼幅もほぼ同じ35フィートだ」とオーストラリア航空宇宙専門家カーロ・コップが2004年に指摘していた。 http://www.ausairpower.net/Analysis-JSF-Thud-2004.html © 2005, 2007 Carlo Kopp

「両機種とも機内兵装庫があり機外パイロンで燃料と兵装を運べる」とコップは指摘し、「ともに戦闘半径400カイリクラスを目指し推力重量比、高機動操縦性能で制空戦闘機や迎撃機より劣っていた」 http://www.ausairpower.net/Analysis-JSF-Thud-2004.html

★★★米空軍次期戦闘機はもう戦闘機の形状となることはない---第六戦闘機の用語は駆逐

米空軍は次期戦闘機材の姿を未来から考えていますね。目的は航空優勢の確立であり、ドッグファイトは目的ではないと分析し、宇宙やサイバーも含めた多様なシステム構造の一貫として次期機材を捉えております。また、アジア太平洋での作戦をにらみ足の長い機体となると現在の戦闘機と相当形状が異なってくるとし、現状の姿の延長線上に次期機材を想定する勢力の生み出す結果と全く異なる結果を生み出そうとしています。改めて空軍の構成、運用がシステムで成り立っていることを痛感させられる内容です。 Air Force Prepares to Hash Out Future Fighter RequirementsBy: Valerie Insinna, August 28, 2016 (Photo Credit: Northrop Grumman)http://www.defensenews.com/articles/air-force-future-fighter-jet-penetrating-counter-air-next-generation-air-dominance
WASHINGTON — 一年をかけて将来の制空任務に必要な戦術や技術を検討した米空軍が次期戦闘機を実現する第一歩を踏もうとしている。2017年予定の代替策検討(AOA)に先立ち、空軍は予備作業を開始している。AOAはF-35に続く機体の要求条件、調達戦略に焦点をあてる。空軍は次期戦闘機をNGAD次世代航空優勢とかPCA侵攻制空用機材と呼んでいる。
だがアレクサス・グリンケウィッチ准将はAir Superiority 2030による戦力連携チーム(ECCT)を率い、NGADは従来の戦闘ジェット機と大きな違いが2つあると強調する。ひとつめが調達期間を比較的短くすることだ。
「2020年代末までに何らかの形が必要です」と准将はDefense News取材で発言している。「現実的な日程として2028年頃に中心的な技術分野で大幅な投資があれば侵攻制空性能で初期作戦能力が実現します
第二の相違点に関係するのがこのたびまとめられたAir Superiority 2030研究で将来の米空軍の航空優勢で決め手になるのは単一機種としての第六世代戦闘機のような機体ではなく、統合ネットワーク化された一連のシステムの集合だとする。この組み合わせの中に侵攻能…

★★★F-3事業に参画意欲を見せるボーイング、ロッキード・マーティン

Boeing, Lockheed Martin emerge as early rivals for Japan's fighter contest
Jon Grevatt, Bangkok - IHS Jane's Defence Weekly 19 July 2016 http://www.janes.com/article/62368/boeing-lockheed-martin-emerge-as-early-rivals-for-japan-s-fighter-contest Japan's Mitsubishi F-2 multirole fighter aircraft. Source: Japanese Air Self-Defense Force
航空自衛隊JASDFがめざすF-2多用途戦闘機の後継機種をめぐり、ボーイングとロッキード・マーティンがともに参画の意向を表明した。 IHS Jane’sが両社へ7月19日照会したところ、ともに日本での実績をもとに同事業参入を目指していることがわかった。事業規模は200億ドルといわれる。 防衛省は情報提供要求RfIを発出済みで、2018年4月までに「次期戦闘機」の決断を下すとみられる。 F-2は2000年代に三菱重工業MHIとロッキード・マーティンの共同事業で製造され、2027年ごろまでに全機退役する。 ボーイング広報によれば同社はF-2後継機の要求内容を検討中だという。「日本で当社の存在意義を大きくする方策は常に考えており、日本での安全保障ニーズに応えたい」 ロッキード・マーティン広報は「日本から各社に情報の要求が出ているが、当社もこれまでの日本との関係をさらに強化する今回の機会を活用したい」とし、「F-35事業とF-2でMHIと実績が成果を生んでいることは誇り」とする。 RfIは6月に出ており、各国の戦闘航空機メーカー宛に送付されている。RfIは7月はじめに締め切られており、米二社に加えユーロファイターSaabもプレゼンを8月末に行う見込みだ。 RfIは既存機種での検討の一助にするほか、各社の事業参加への意欲をさぐることのがねらいだ。MoDはF-2後継機を純国産あるいは共同開発ですすめるかの決断を下すが、後者の場合は既存機種を原型にするとみられる。■