★★自衛隊が真の意味で統合運用を実現する前に中国が日本領土に侵攻したらどうなるのか



ともすれば戦闘機や潜水艦、また戦闘車両など自衛隊の実力を評価しすぎる傾向にやや違和感を覚えていましたが、日本戦略研究フォーラムのニューシャム研究員の以下投稿には考えさせられるものがあります。自衛隊も日本の組織文化の産物であることを思い知らされますが、理想の姿には相当乖離していることがうかがえます。長年放置しておいたツケがいま来ているのでしょうか。言葉だけうわ繕いしておけばよい、という問題ではなく真剣に考えなくてはいけませんね。

The National Interest

Japan's Military Has Some Serious Problems (As China's Military Gets Stronger)


September 7, 2016


陸上自衛隊(GSDF)は恒例の富士総合火力演習を8月末に富士山周辺で実施した。GSDFは弾薬装備を多量に使用し隊員はヘリコプター、戦車はじめハードウェアを駆使した「戦闘状況」を再現した。
 感動的な実演に来場者数万名は感銘を受けたが、目前でくりひろげられた高額な「カブキ」の下に深刻な国防上の欠陥があるとは気づかなかっただろう。
 今年の演習は「島しょ部分奪回」シナリオを展開したが、内陸演習地では再現困難な内容だった。GSDFはいつも見せ場を作り、隊員のプロ意識が高いところを示そうとする。自衛隊(JSDF)は日本防衛を専門に編成されてきた部隊であると思いを新たにする来場者も多いだろう。
 だが演習はGSDFやJSDF全体としての欠点を逆にさらけ出している。日本政府は欠点を是正し、中国の軍事力、野望の前に無力をさらけ出すことは避けなければならない。
 言い換えれば日本政府が問題点を是正しないと戦略的な軍事敗北を喫するのは必至だろう。欠点は次のとおりである。

揚陸作戦能力整備に本気でないGSDF
GSDFが揚陸作戦整備を揚陸緊急展開大隊(ARDB)として整備しようとしている。中国は行動言動両面で日本の南西諸島を脅かしており、日本としても対応を迫られている。しかし、その内容には真剣さと及び腰の部分がまざりあっている。
 GSDF上層部には機動揚陸部隊を海上自衛隊、航空自衛隊と連携して中国の南西諸島侵攻から守る構想に反対する向きが一部にある。
 GSDF上層部には北海道をロシア侵攻から守る機甲部隊作戦への郷愁がまだ残る。この軋轢の中でGSDF改革を主張した中心的トップ二名が昨年早期退役を迫られた。惜しい人事だ。
 ARDB構想など提案中の新企画は適切な内容だが海自および空自が適切な支援を提供できるのか、そもそも南西諸島想定の作戦内容が正しいものなのか疑念は残ったままだ。

道は遠いJSDFの「統合運用」
富士総火演はGSDF主役だが「島しょ部奪回」のシナリオでGSDFが「奪回」する能力があるのだろうか。海上自衛隊(MSDF)や航空自衛隊(ASDF)と連携して作戦が実施できるのだろうかとの疑問は残る。
 その答えは「上手くいくはずがない」というものだ。
 理由としてGSDF、MSDF、ASDFが「統合部隊」の訓練をしていないことがある。共同作戦の実施に各組織が抵抗するのが普通だ。
 「統合性の欠如」にJSDFの根本的弱さが潜む。これが問題とわかっていても誰も手を打とうとしないのは不思議だ。もっとわからないのは各組織の幹部は同じ防衛大出身なのに卒業するや各組織のしきたりや伝統にすっかり囚われの身となり協力しないようになることだ。
 それでもGSDFはMSDFと意味のある進展をここ数年示しており、ドーンブリッツ演習(南カリフォーニアで実施)他の演習で共同運用が見られる。とは言うもののこれだけでは不十分で、「島しょ奪回」シナリオを参観したものは痛感しているはずだ。ASDFも富士総火演にはF-2戦闘機を飛行させ、対艦ミサイルを「発射」する擬似攻撃を見せたが、これをもって近接航空支援だとはいえず、また共同作戦や揚陸作戦に多大な関心を有しているとも言えない。

各隊間の意思疎通は未発達
JSDF内部の「統合性」の弱さの表れが内部電子通信体制のお粗末さで深刻な影響を生んでいる。富士総火演でもASDFとMSDFが姿を見せていたとしても相互通話は困難だったはずだ。これも何ら新しい問題ではなく、解決もさほど困難ではない。

防衛支出規模は充分でない
安倍晋三首相の防衛予算増額方針はまやかしの増額で中身が乏しい。日本の防衛予算はこれまで必要水準から不足した規模が長年に渡り続き、深刻な状況にあった。つまり訓練予算が不足していた。たしかに「広報」の名目でGSDFが弾薬を多量に消費することががあるが、「本当の」演習には逆に弾薬が不足する始末で、「継戦備蓄」が適切なのか疑問が残るほどだ。防衛予算が十分でないため「訓練不足、飛行時間不足、兵装運用能力の不足、非現実的な演習、致命的な人員不足」という死の悪循環が発生する。
 予算不足はJSDFでは常で、各隊は一層協力する意欲がなくなる。キレイ事とは別に各隊は予算をめぐり疑心暗鬼になっている。
 GSDFは人目を引くハードウェアを富士総火演で見せたが、日本の防衛装備調達戦略はうまくできておらず、「要求を基本とする」形で防衛に必要な装備を開発あるいは調達することとしている。雇用対策と似通っており政府各省庁がバラバラに動くのと同じだが、JSDFには意見を求めていない。
 日本の防衛調達方式とは「あれこれ少数調達して高い買い物とし、隣国が面倒をかけないことを祈り、いざと馴れば米軍が面倒を見てくれる」ことだと評する向きがある。
 JSDFの根本的課題はわかりやすいし、解決方法も見えるが、実行は手に負えないほど困難なようだ。とはいえ提言は以下のように可能だ。

JSDFを「統合」せよ
真の「統合」運用能力をJSDFで実現することだ。日本の陸海空の各部隊は極めて優秀だ。そこで各隊に協調協力運用を求めればその効果は飛躍的に向上するはずだ。
 十分な実力を有する誰かがこれを実現にもっていかなければならない。制服組にこの方針を支持しないものあらわれ、協力を拒めば、解任すべきだ。
 「統合」運用へ向かわせる具体的なミッションが必要で、揚陸作戦がぴったりだ。そもそも揚陸作戦は「統合」作戦そのものだからだ。

防衛予算は増額しても正しく支出するように
防衛予算をどこまで増額すべきだろうか。今後五年間で50億ドル程度ではないか。日本側では「深刻な財政事情」でこの規模は不可能というだろう。この言い訳はアメリカ側には有効だが、50億ドルという規模は4兆ドルの経済規模を有する日本にとって大金ではない。防衛予算の適正規模は不必要な公共事業を二三件削ればすぐ確保できる。
 日本政府は政策的に必要なら予算をいつも確保しているようだ。防衛予算の5%増額の財源がないと言いつつこれで何回目になるのかわからない景気刺激策に1,000億ドルを、さらにアフリカ支援に300億ドルを拠出している。
 では増額分を何に使うべきか。まずJSDFの俸給水準ならびに生活環境を改善すべきだ。第三世界並みと言ってい良い水準だからだ。GSDF(ならびにJSDF全体で)の職業意識の高さには驚嘆させられる。長年にわたり過小な予算や意味のない制約を受け、日本政府機関、政界、学術団体、報道機関から軽視されてきたにもかかわらず。
 次に訓練予算を適正化すべきだ。予算不足のため日本は国際演習他への招待を拒むのが普通になっている。
 追加予算はハードウェア調達に使うべきではない。防衛産業はどの国でもスポンジ構造でどん丼予算を吸収してしまう。50億ドル上乗せすればハードウェアもあっという間に50億ドル値上がりする。日本の防衛調達に改革が必要なのも確かだが、予算を単に増やしても何の解決にもならない。

日本の防衛の「目を覚ます」
ここまでの視点に何ら新しいものはない。では日本が「眠りから覚めて」防衛体制を改善するまでにどのくらいかかるだろうか。中国の強硬な態度、野心、大幅に戦力を増強したPLA兵力が起爆剤となる。
 アメリカはもっと大きな影響を与えることが可能で、必要なら日本を変えさせることができる。これまでは日本の努力が必要な水準以下でも不満を見せず、日本がアメリカに頼りきるようになったのは理解に難くない。世界最強の軍事力を得るのは年間500億ドルの価値があり、しかも実際には極少額でこれを手に入れている。
 米政府、米軍の間に日本の防衛力への批判を差し控える不文律があるようだ。これも理解に苦しむとともに我慢できなくなる動きだ。「同盟関係」をほめたたえ、米国の「パートナー」をもちあげるのではなく、JSDF上層部の意見に耳を傾けておくべきだった。あるJSDF高官はこう語っている。「どこまま違っているのか教えてもらいたい。友達なら悪いこともいえるはず」
 50年その状態が続いた結果、日米間では米海軍、MSDFは例外とし、本来あるべき共同作戦の実施能力と程遠いままだ。
 富士総火演は野外の景色の中で演出たっぷりのショーを楽しむ機会だ。JSDFは自身で改革するつもりがあり、実施を許されれば比較的短期間で問題を解決できよう。ただし日本政府が必要資金を潤沢に提供する必要がある。
 いつの日にか「自衛隊総合火力演習」が実際の島を使い、「島しょ奪回」を実演する日が来るかもしれない。三軍が正しく戦力を投入すれば、JSDFの真剣度がわかり、はじめて「任務遂行可能」と判定されよう。
 だが時間がなくなりつつある。おそらく島しょ奪回演習が現実のものになるのはまもなくだろう。その時点でJSDFに手を入れてももう遅いのである。
This first appeared in AsiaTimes here.
Grant Newsham is a senior research fellow at the Japan Forum for Strategic Studies in Tokyo with 20 years of experience in Japan as a US diplomat, business executive, and as a US Marine Officer.



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