さすがビジネス誌なので機材装備ではなく一番大切な人材についてメスを入れています。詳しくは記事を見てもらいたいのですが、巨大組織でもあり毎日作戦を実施していることもあり、拙速の変更は避けようとしているようですね。しかし効果が出るのもそれだけ遅くなりますのでそれまでの運用が大変です。皆さんならどんなアドバイスをしますか。
'We are a service that is too small': The Air Force is under strain and looking at some major shakeups
「組織が小さすぎる」米空軍は厳しい緊張にさらされ抜本的組織改革を検討中
- 米空軍が各地で組織の限界を試される状況にここ数年直面している。
- 中東の武力衝突、ヨーロッパ・アジアでの緊張の高まりに加え予算問題は空軍をさらにやせ細らせる課題の一部に過ぎない。
- 米空軍は9月18日に創立70周年を迎えたばかりだが、新規隊員募集、訓練、配備と人員面管理面での合理化に迫られている。
- 「これだけの仕事があるのに組織が小さすぎる」と空軍長官ヘザー・ウィルソンHeather Wilsonが8月末にAir Froce Timesに語っている。「即応体制の問題が国内で深刻になっているし、来年も予算抑制の継続決議が続けば予算は昨年と同額、あるいは強制削減措置でもっと悪い事態になるかも...そうなれば破滅的だ。回復に何年もかかる」
- 政府会計検査院によれば空軍部隊で十分な即応体制を維持できているのは半数以下しかない。組織ではなんといってもパイロット不足が一番深刻な問題だ。
- 空軍は2016年度にパイロットの門戸を広げたが、2017年度でも必要とされる20,300名のパイロットが1,555名不足し、うち950名が戦闘機パイロットと見られる。また整備要員も3,400名不足している。
- 空軍参謀早朝デイヴィッド・ゴールドフェイン大将Air Force Chief of Staff Gen. David Goldfeinおよびウィルソンの前任者デボラ・リー・ジェイムズDeborah Lee Jamesは人員不足を「静かなる危機状況」と2016年7月に評していた。
- そこで状況を解決すべくパイロットを退役させないため、空軍が考えているのは俸給とボーナス支給額の増額、いったん退役したパイロットに現役復帰を求め、支援要員を増やしてパイロットに事務作業をさせなくてもよくすること、年間のパイロット養成規模をふやすこと、さらに現役パイロットに異動に際して意見を言わせることだ。
- すでに「レッド・エア」訓練部隊の一部を外部委託しており、民間会社パイロットが敵機の役をしている。またモスボール保管中のF-16を訓練機材として有人・無人運用すべく改装中だ。
- ただ空軍で厳しい勤務状況を強いられるのはパイロットだけではない。
- 空軍特殊作戦軍団AFSOCは16年間に及ぶ苦闘に耐えている。どの時点でもおよそ1,200名のAFSOC要員が約40カ国に展開中とAFSOC司令官ブラッド・ウェッブ中将 Lt. Gen. Brad WebbがAir Force Timesに語っている。同軍団の総人員は将校下士官14,461名に過ぎず、任務展開は「隊員と家族の明らかに負担となっている」とウェッブ中将は語っている。
- 「15年間で10数回も海外展開した隊員が多数いる。この国でここまでの勤務は今まで一回もなかった」とウェッブ中将は述べ、同軍団が海外配備の頻度がこれ以上増えないよう国防長官から猶予を求めているという。
- 一般空軍隊員でも需要は高いままだ。2017年はとくに任務展開のテンポが高く、今後もこの状態が続くとの予想がある。
- 「2017年度の訓練や演習の頻度は2018年度も続く見込みで頻度は適正と言える」とトッド・ウォルターズ大将Gen. Tod Wolters(米空軍ヨーロッパ・アフリカ司令官)が9月8日に語っている。
- ヨーロッパ駐留中の空軍人員30千名以上は十分な規模とウォルターズ大将は見ている。パイロット不足と故障時間が増える中、「現時点でこの方面の人員規模は適正で、短期展開で当地にくる人員もここに含む」と大将は語っている。
- また空軍は下士官も昇進で将校にさせることで人員不足に対応しようとしている。
- 今月だけで下士官2,001名が補充昇進の対象になり、主に臨時任務が延長された、あるいは緊急作戦に動員された下士官が対象だ。
- 12月には空軍は全将校に大尉までの昇進の機会を提供する。資格が満足でき、昇進の推薦があり、欠点なしの勤務実績があれば昇進は確実となる。
- ここまで大盤振る舞いになっているのは現場将校がもっと必要になっているからで、少佐、中佐、大佐と言えども例外ではない。空軍の現状の第一線将校の充足率は92%でその他支援にあたる将校の充足率は74%にとどまっている。
- 「将校評価制度はここ30年間大きな課題はなかったが、今や軍の構造、任務、要求内容、実績で貴重な将校に反映されつつある」とジーナ・グロッソ中将Lt. Gen. Gina Grosso(空軍参謀次長、人員・組織・各種支援担当)が昇進制度変更の公告で述べている。
- 新昇進制度は空軍が事務作業の負担を隊員から減らそうとする中で実現した。また各隊員の私生活にも負担が増えている。
- 「各隊員にはワークライフバランスの実現を奨励しています」とウェッブ大将も言う。「空軍特殊部隊は各軍の特殊部隊と共に成果を上げていることを誇りに思うが、大変な任務の裏で回復力が必要だとも認識している」
- 空軍隊員は「すごいことを実現している」と最上級空軍曹長カレス・ライトChief Master Sgt. Kaleth WrightもAir Force Timesに語っている。だが隊員は同時に人員不足、予算・資材不足、任務実施の高い負担、追加業務が高止まりなっていることへの対処を迫られており、欲求不満とストレスが高まる一方だ。
- 「こちらから世界に静かにしてほしい、不安定な状況をやめてほしいと言えませんよね」とライトは語り、「これができないので一番いいのは空軍をもっと効率の良い組織にして威力を増大させ、徐々に厳しい状況から脱することではないでしょうか」
- ライトによれば空軍は業務評価の廃止も検討しており、一部部隊でメンタルヘルスと回復力の改善に向けた試みが進んでいるという。今年に入り自殺した空軍隊員は62名に上り、このままならここ数年の年間100名のままになりそうだ。
- メンタルヘルスに加え業務能力向上の取り組みでも空軍は広範囲に人事情報技術制度の見直しも開始したとグロッソは語る。
- 空軍の人事業務では申請が200種類あり、111種類ものばらばらの制度が古いものは1990年代から生きている。これを合理化し普通の隊員でも人事関連業務をこなせるようにできないか。たとえば給与小切手の処理だけで毎月5千人が従事している。
- グロッソは空軍が二年から三年かけて人事評価制度を大幅刷新する検討に入っているとも述べている。「これは拙速は避けたい内容です」とAir Force Timesに語っている。「正しい作業が求められている」
- 空軍への作戦要望が近い将来に減少する見込みはない。イラク、シリアではISISに対して数々の勝利をおさめたが、現地の友邦国部隊から求められる支援は増えるばかりだ。ここにアフガニスタンでの空軍任務の拡大の可能性が生まれる中で東欧と北西アジアでの緊張が高まる状況に米軍は直面している。
- 「今後も空軍の重要性が減ることはない」とゴールドフェイン参謀総長はDefense Newsに以下語っている。「航空優勢はアメリカが生まれついて獲得した権利ではない。何らかの計画を立て、訓練し、実際に戦って初めて実現できるものだ。地上部隊の隊員でも空軍隊員でもジェットの音が頭上に聞こえれば空を見上げるものはない。こちらの機体だとわかっているからでこの維持は空軍の道義的責任と言ってよい」■
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