スキップしてメイン コンテンツに移動

米空軍は今週創立70周年、しかし組織に相当のストレスが溜まっている様子


さすがビジネス誌なので機材装備ではなく一番大切な人材についてメスを入れています。詳しくは記事を見てもらいたいのですが、巨大組織でもあり毎日作戦を実施していることもあり、拙速の変更は避けようとしているようですね。しかし効果が出るのもそれだけ遅くなりますのでそれまでの運用が大変です。皆さんならどんなアドバイスをしますか。

'We are a service that is too small': The Air Force is under strain and looking at some major shakeups

「組織が小さすぎる」米空軍は厳しい緊張にさらされ抜本的組織改革を検討中
us air force night第36空輸飛行隊のトーマス・バーナード大尉がC-130ハーキュリーズパイロットとして暗視装置付きゴーグルで関東平野上空で訓練中。October 14, 2015. US Air Force/Osakabe Yasuo
  1. 米空軍が各地で組織の限界を試される状況にここ数年直面している。
  2. 中東の武力衝突、ヨーロッパ・アジアでの緊張の高まりに加え予算問題は空軍をさらにやせ細らせる課題の一部に過ぎない。
  3. 米空軍は9月18日に創立70周年を迎えたばかりだが、新規隊員募集、訓練、配備と人員面管理面での合理化に迫られている。
  4. 「これだけの仕事があるのに組織が小さすぎる」と空軍長官ヘザー・ウィルソンHeather Wilsonが8月末にAir Froce Timesに語っている。「即応体制の問題が国内で深刻になっているし、来年も予算抑制の継続決議が続けば予算は昨年と同額、あるいは強制削減措置でもっと悪い事態になるかも...そうなれば破滅的だ。回復に何年もかかる」
  5. 政府会計検査院によれば空軍部隊で十分な即応体制を維持できているのは半数以下しかない。組織ではなんといってもパイロット不足が一番深刻な問題だ。
  6. 空軍は2016年度にパイロットの門戸を広げたが、2017年度でも必要とされる20,300名のパイロットが1,555名不足し、うち950名が戦闘機パイロットと見られる。また整備要員も3,400名不足している。
  7. 空軍参謀早朝デイヴィッド・ゴールドフェイン大将Air Force Chief of Staff Gen. David Goldfeinおよびウィルソンの前任者デボラ・リー・ジェイムズDeborah Lee Jamesは人員不足を「静かなる危機状況」と2016年7月に評していた。
Air Force ドイツで降下訓練をする上等空兵ジャスティン・ゴードン、2013年7月U.S. Air Force
  1. そこで状況を解決すべくパイロットを退役させないため、空軍が考えているのは俸給とボーナス支給額の増額、いったん退役したパイロットに現役復帰を求め、支援要員を増やしてパイロットに事務作業をさせなくてもよくすること、年間のパイロット養成規模をふやすこと、さらに現役パイロットに異動に際して意見を言わせることだ。
  2. すでに「レッド・エア」訓練部隊の一部を外部委託しており、民間会社パイロットが敵機の役をしている。またモスボール保管中のF-16を訓練機材として有人・無人運用すべく改装中だ。
  3. ただ空軍で厳しい勤務状況を強いられるのはパイロットだけではない。
  4. 空軍特殊作戦軍団AFSOCは16年間に及ぶ苦闘に耐えている。どの時点でもおよそ1,200名のAFSOC要員が約40カ国に展開中とAFSOC司令官ブラッド・ウェッブ中将 Lt. Gen. Brad WebbがAir Force Timesに語っている。同軍団の総人員は将校下士官14,461名に過ぎず、任務展開は「隊員と家族の明らかに負担となっている」とウェッブ中将は語っている。
  5. 「15年間で10数回も海外展開した隊員が多数いる。この国でここまでの勤務は今まで一回もなかった」とウェッブ中将は述べ、同軍団が海外配備の頻度がこれ以上増えないよう国防長官から猶予を求めているという。
Air Force special operations第320特殊戦術部隊の隊員が射撃訓練前に状況説明を受けている。 November 19, 2015, at Camp Hansen, Japan. US Air Force photo/Senior Airman John Linzmeier
  1. 一般空軍隊員でも需要は高いままだ。2017年はとくに任務展開のテンポが高く、今後もこの状態が続くとの予想がある。
  2. 「2017年度の訓練や演習の頻度は2018年度も続く見込みで頻度は適正と言える」とトッド・ウォルターズ大将Gen. Tod Wolters(米空軍ヨーロッパ・アフリカ司令官)が9月8日に語っている。
  3. ヨーロッパ駐留中の空軍人員30千名以上は十分な規模とウォルターズ大将は見ている。パイロット不足と故障時間が増える中、「現時点でこの方面の人員規模は適正で、短期展開で当地にくる人員もここに含む」と大将は語っている。
Air Force B-1Bランサーの排気口カバーを外すケヴィン・コロン上級軍曹、ネヴァダ州ネリス空軍基地にて。May 21, 2013. U.S. Air Force
  1. また空軍は下士官も昇進で将校にさせることで人員不足に対応しようとしている。
  2. 今月だけで下士官2,001名が補充昇進の対象になり、主に臨時任務が延長された、あるいは緊急作戦に動員された下士官が対象だ。
  3. 12月には空軍は全将校に大尉までの昇進の機会を提供する。資格が満足でき、昇進の推薦があり、欠点なしの勤務実績があれば昇進は確実となる。
  4. ここまで大盤振る舞いになっているのは現場将校がもっと必要になっているからで、少佐、中佐、大佐と言えども例外ではない。空軍の現状の第一線将校の充足率は92%でその他支援にあたる将校の充足率は74%にとどまっている。
  5. 「将校評価制度はここ30年間大きな課題はなかったが、今や軍の構造、任務、要求内容、実績で貴重な将校に反映されつつある」とジーナ・グロッソ中将Lt. Gen. Gina Grosso(空軍参謀次長、人員・組織・各種支援担当)が昇進制度変更の公告で述べている。
  6. 新昇進制度は空軍が事務作業の負担を隊員から減らそうとする中で実現した。また各隊員の私生活にも負担が増えている。
  7. 「各隊員にはワークライフバランスの実現を奨励しています」とウェッブ大将も言う。「空軍特殊部隊は各軍の特殊部隊と共に成果を上げていることを誇りに思うが、大変な任務の裏で回復力が必要だとも認識している」
  8. 空軍隊員は「すごいことを実現している」と最上級空軍曹長カレス・ライトChief Master Sgt. Kaleth WrightもAir Force Timesに語っている。だが隊員は同時に人員不足、予算・資材不足、任務実施の高い負担、追加業務が高止まりなっていることへの対処を迫られており、欲求不満とストレスが高まる一方だ。
  9. 「こちらから世界に静かにしてほしい、不安定な状況をやめてほしいと言えませんよね」とライトは語り、「これができないので一番いいのは空軍をもっと効率の良い組織にして威力を増大させ、徐々に厳しい状況から脱することではないでしょうか」
  10. ライトによれば空軍は業務評価の廃止も検討しており、一部部隊でメンタルヘルスと回復力の改善に向けた試みが進んでいるという。今年に入り自殺した空軍隊員は62名に上り、このままならここ数年の年間100名のままになりそうだ。
air force cockpitB-1Bランサーのパイロット、ジェイムズ・シルバ少佐とスティーブン・マイヤース中佐が最新改修を終えたばかりのB-1Bのフライトを終了してテキサス州ダイエス空軍基地に帰投してきた。January 21, 2014. US Air Force/Staff Sgt. Richard Ebensberger
  1. メンタルヘルスに加え業務能力向上の取り組みでも空軍は広範囲に人事情報技術制度の見直しも開始したとグロッソは語る。
  2. 空軍の人事業務では申請が200種類あり、111種類ものばらばらの制度が古いものは1990年代から生きている。これを合理化し普通の隊員でも人事関連業務をこなせるようにできないか。たとえば給与小切手の処理だけで毎月5千人が従事している。
  3. グロッソは空軍が二年から三年かけて人事評価制度を大幅刷新する検討に入っているとも述べている。「これは拙速は避けたい内容です」とAir Force Timesに語っている。「正しい作業が求められている」
  4. 空軍への作戦要望が近い将来に減少する見込みはない。イラク、シリアではISISに対して数々の勝利をおさめたが、現地の友邦国部隊から求められる支援は増えるばかりだ。ここにアフガニスタンでの空軍任務の拡大の可能性が生まれる中で東欧と北西アジアでの緊張が高まる状況に米軍は直面している。
  5. 「今後も空軍の重要性が減ることはない」とゴールドフェイン参謀総長はDefense Newsに以下語っている。「航空優勢はアメリカが生まれついて獲得した権利ではない。何らかの計画を立て、訓練し、実際に戦って初めて実現できるものだ。地上部隊の隊員でも空軍隊員でもジェットの音が頭上に聞こえれば空を見上げるものはない。こちらの機体だとわかっているからでこの維持は空軍の道義的責任と言ってよい」■

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...