スキップしてメイン コンテンツに移動

KC-135を2040年代まで供用するための米空軍の対応について


KC-46Aは日本も導入予定なのですが、今のところ稼働のめどがつかないのですかね。次々に問題が生まれているようです。そうなるとKC-135にまだまだかんばってもらうことになります。60年-90年も飛び続けるとはすごいです。窓がないことが機体の強度をたもっているのですが、当時のボーイングの設計がしっかりしているのでしょうね。そのボーイングがKC-46でてこずっているのは何とも皮肉です。


USAF Breathing New Life Into Ancient KC-135 Tankers With This New Glass Cockpit

古参兵KC-135給油機に新型グラスコックピットで新しい息を吹き込む

Digital displays and other systems, along with improved software, could keep the aircraft going for more than 80 years.

デジタル画面他の装備、ソフトウェア換装で80年以上の供用期間を目指す

BY JOSEPH TREVITHICKAUGUST 31, 2017

USAF




  1. 米軍の力の根源に世界いずれの場所で発生した危機状況に短期間で対応できることがある。この実現の裏には空中給油機の活躍がある。米空軍がKC-135Rストラトタンカーをあと最低20年間供用し、場合によってはそれ以降の運用を狙っているのは驚くべきことではない。
  2. 2017年8月25日、アイオワ州軍航空隊第185空中給油飛行隊のKC-135Rの一機が改修を受けブロック45仕様機体となった。完全グラスコックピットとなり大型デジタル画面が中央についており、無線高度計、オートパイロット、デジタル飛行制御の性能があがり、コンピュータ関連でも機能を引き上げている。
  3. 「この機体は1958年製造で搭載装備は当時のほとんどのは当時のままです」とショーン・シトレック中佐Lieutenant Colonel Shawn Streck(第185飛行隊整備責任者)は述べる。「改修で機体は民間機と同じ水準になりました」
  4. ブロック45改修の中心は民生部品の大幅採用で経費を下げつつ改修作業を簡素化したことで平均二か月で完了している。改修で安全性は高まり、信頼度もあがり、老朽装備を更新できた。
USAF
ブロック45改修後のKC-135Rコックピット
  1. 具体的にはKC-135改修機材には民間航空管制、航法とシームレスにつながる機能がつき、事故の心配なく民間空域も軍用空域同様に飛行できる。デジタルコンピューターにより地上要員もソフトウェア改修のインストールが簡単になった。
  2. そのうえ、新装備でこれまで乗員による主導業務が自動化されたのが大きい。たとえば情報の受渡しがアナログ装備からデジタルになった。また整備面での注意喚起も正確になり、データが確かになったため万一故障が発生しても修理が迅速になる。
USAF
従来型のKC-135Rのコックピットはアナログ計器が満載
  1. 「トラブル対応で何が悪いのかシステムを見るのではなく、システムの方で何が問題か教えてくれる」とダニエル・スワインハート上級兵曹Staff Sergeant Daniel Swinehart第507航空機整備隊として507給油飛行隊と一緒に活動、は語っている。「完全デジタルになりアナログデジタル変換は不要になりました」
  2. 空軍はこうした改修で機体は2040会計年度まで飛行が可能となり、おそらくその後10年も供用できるはずと見る。2014年時点で空軍はKC-135を約400機保有し、現役部隊、予備隊、州軍に分散していた。
  3. 現在の構想ではKC-135全機を2024年までに新仕様に変更する。機材の稼働年数と高い需要を考慮するとブロック45改修の持つ意味は無視できない。
  4. KC-135Rは旧式KC-135の改修型でボーイングの製造ラインを最終機が出たのは1960年代初頭だ。一番大きな変更点はエンジンでプラット&ホイットニーJ57四基を出力が高く効率がすぐれるCFM-56四基に換装している。
USAF
KC-135R

  1. エイビオニクスやその他コックピット装備では変更がないのはボーイング技術陣の1950年代初頭の設計がいかに正しかったかの証明だ。エンジン改修以外にここ数年小刻みの改修が続いてきた。その最新のものが1997年から2001年にかけて続いたペイサー・クラッグPacer Cragでコックピット内あちこちと燃料制御まわりを交換した。
  2. 2001年には9/11テロ襲撃事件が発生しほぼ20年に及ぶ武力衝突が開幕したが、給油機支援の需要が中東、中央アジアからアフリカにかけ急増した。それ以上にヨーロッパと太平洋でも安全保障問題を反映し給油回数が増えているのはテロ問題だけが理由ではない。
  3. だがKC-135が何と言っても空中給油の大半を実施している。空軍のKC-10エクステンダーも60機未満だが大きな存在だ。海兵隊と並び空軍にもC-130ハーキュリーズ原型の小型給油機が少数あるがヘリコプター支援を主な任務とする。
  4. そこで空軍はブロック45になった作業の開発を開始した。2010年から2016年にかけて空軍は900百万ドルを研究開発に投じ、KC-135改修の方向性を探り、試作をしてから改修キットを各方面に供給した。185隊の機体もその一部だ。
  5. 機齢のため新型装備の搭載は実は大変だ。技術陣は相当の時間をかけ冷戦時の機材にどう搭載すべきかを検討した。
  6. 「古い配線を取り換えて液晶ディスプレイやその他装置を付けるのは数人分の仕事です」とティンカー基地でブロック45改修の主任を務めたベリンダ・シャンツBelinda Schantzが空軍広報誌2017年1月号の取材で語っている。「搭載をややこしくしたのはスロットルやトリム操作輪がフライトデックの中央についていることだった」
  7. だが2016年末になると事業は大きく進展し、45機を新仕様に改修できた。その前年に空軍はそれまでロックウェル・コリンズで行っていた改修作業を全部ティンカー空軍基地に集約した。
  8. 現時点でロックウェル・コリンズに105百万ドル相当の改修作業が残っているが、当初の契約通りにKC-135全機の改修をするのか不明だ。それでも長期事業のうまみがあることがユナイテッドテクノロジーズ(エンジンで有名なプラット&ホイットニーも傘下に収める航空関連巨大サプライヤー)がロックウェル・コリンズの買収に意欲を示している理由なのだろう。
USAF
ブロック45改修に先立ちKC-135Rのコックピットで配線まわりの段取りをする技術員 
  1. いかに先進的な装備を搭載してもKC-135の基本構造が対応できなくなる可能性を心配する向きがある。KC-135は2016年で60歳を迎えた。空軍が同機運用を2050年まで継続するのであれば製造が一番新しい機材でも90歳となる。
  2. 長距離統合防空体制と低視認性多機能戦闘航空機材の登場の前に非ステルス支援機材がどれだけ脆弱な存在であるかを論じるのはいかにも正しく聞こえる。だからと言って今後の世界でKC-135に出番がなくなるわけではない。防護体制の十分な空域でなら今後も十分に有用性を発揮するはずだ。試験訓練用途にも投入されよう。
  3. また空軍がステルス給油機開発に乗り出さないのであれば、戦術面、調達面で変化する今日の戦闘状況に対応させる必要がある。KC-135にも防御装備が搭載されるかもしれない。電子戦装備や監視装置で脅威対象をよりよく把握できるはずだ。あるいはレーザー防御装備も今や可能性の域に入っている。
  4. 大事なのは需要が増える一方で、空軍は新型給油機の調達に苦労していることだ。遅延が重なるボーイングのKC-46Aペガサスはいまだに第一線投入のめどがつかない状況だ。その間KC-135部隊の負担は軽減されない。
  5. 現状では米空軍のKC-46A調達数は180機ほどで第一陣の稼働開始は2018年の予定だ。委託業者が自ら運用する給油機が現在KC-135が務めるミッションの一部を肩代わりする可能性もあるが、400機でこなす分の完全代替は不可能だ。
  6. ということは世界情勢が劇的に変化しない限り、KC-135多数で当面需要が消えることはなく、ブロック45改修で対応せざるを得ない。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...