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★「先制戦争」は期待通りの成果は上げられるのか、北朝鮮軍は準備している



湾岸戦争と朝鮮半島では事情が違うので直接比較できないとは思いつつ、一部軍事力の実態を知らない層が簡単に攻撃を口にし始めている一方で各地の戦闘を体験した元第一線の軍人が安易な先制攻撃に反対しているのは興味深い事実ですね。


How North Korea Plans to Survive a U.S. Attack

北朝鮮は米攻撃に耐える準備をしているのか
September 20, 2017


  1. 先週金曜日に国家安全保障担当補佐官H・R・マクマスターが報道陣に対し北朝鮮で「軍事オプションがある」と明らかに他の政府高官と違う発言を自信ありげに漏らしている。今週火曜日午後、国連本部でトランプ大統領はさらに踏み込んだ発言をしており、一定の条件になれば「北朝鮮を完全破壊する」しか選択肢がなくなると発言した。だが大統領・安全保障担当補佐官ともに正しくない。平壌に「先制戦争」(これはマクマスターの造語)をしかければ緊張状態は壊滅的な米国の損失につながる。コスト効果比が高い軍事オプションなど存在せず、アメリカの安全を危険に押しやるだけだ。
  2. いわゆる先制軍事攻撃が成功しないばかりか米国国民や同盟国を危険にさらす可能性があることは軍事専門家以外でも簡単にわかるはずだが、実際はもっと悪い。秘話ふたつと北朝鮮軍事力の評価から「先制」戦のむなしさがわかるはずだ。
  3. 筆者はマクマスターの脇で1991年の砂漠の嵐作戦で戦った。こちらの地上強襲作戦の前に米空軍他同盟軍の機体がクウェートを占領するイラク軍を徹底的に攻撃し、平均すると10時間に一回のペースが42日間続いた。敵戦車が第一目標だった。砂漠のイラク装甲部隊は文字どおり身を隠す場所がなかった。その存在は空からは丸見えで防空体制は存在しなかった。
  4. それでも地上戦で敵軍に接近すると敵戦車他装甲車両の80パーセントは残存していることがわかった。身を隠す場所のない部隊でも空襲を生き残り、しかも空爆はほぼ完ぺきな条件で行ったのだ。まわりに何もない砂漠での話である。
  5. 2011年9月、筆者は米前方作戦基地にいた。アフガニスタン東部のクナル地方でタリバン戦闘員の攻撃にさらされていた。タリバンは山岳地に位置を占めこちらの基地を見下ろしていた。米軍も反撃し重機関銃、105ミリ野砲で30分近く景気よく攻撃したが、敵を黙らせることができなかった。
  6. 最後に米軍戦闘機が山上の敵に爆弾を落とし、大爆発で敵部隊を壊滅させた。険しいアフガニスタンの山地はタリバン戦闘員に米軍の猛攻に耐える条件を与えた。戦闘機が飛来してやっと撃退できたのだ。
  7. ここまでの意味は明白である。もし42日間のミサイル、空爆でも敵装甲部隊を壊滅できず簡単な衣服を身に着けた戦闘員が山地で重火砲の攻撃に耐えられるのなら、北朝鮮の数万門の火砲、移動ミサイル発射機、さらに核ミサイルサイロが隠蔽しており長期間の攻撃にも耐えられるのではないか。
  8. 北朝鮮の独裁者金正恩が米攻撃の報を聞けばどんな反応を示すかは想像に難くない。1991年のサダム・フセインは戦略面で大失敗をした。米軍のミサイルや爆弾が自軍部隊に降り注ぐまで一か月を無駄に過ごしたのだ。金が同じ誤りを繰り返さないのは明らかだろう。代わりに選択肢の一つを実行に移すはずだ。
  9. 金は大量の火砲攻撃をソウルに向けるだろう。これで韓国人数万人が死亡する。だがそこで攻撃を止めて米国が攻撃を止めなければソウルが灰になるり死傷者は数十万名に上ることになると伝えてくる。金正恩の選択で最も危険なのがソウルに核兵器を投下することで日本にも打ち込めば死傷者は百万単位になり、米国が戦闘をやめなければさらに多くのミサイルを発射してくるだろう。
  10. そうなるとトランプ大統領が想定外の決断に迫られるかもしれない。戦闘を継続して数百万名が死ぬままにするのか、金正恩の要求通り攻撃を停止するかだ。どちらにせよ米国の権益が著しく低下するのは間違いない。
  11. 米軍が集中攻撃すれば金正恩はソウル攻撃もままならぬようになるはずと考える向きもあろう。これにはこう答えたい。長年にわたり北朝鮮は米軍機の攻撃力を学び通常火砲部隊の相当数を山岳側部に隠している。そこから引き出して発射地点へ移動し、また戻すのだ。
  12. またミサイルサイロも相当数が山岳地にあり、米軍もまだ位置をつかんでいない。筆者は1990年代中頃にソウルに駐留していたが、朝鮮半島の山岳地の険しさは直接体験している。また韓国の地下退避壕も何度か視察しており、外部攻撃に事実上難攻不落の存在になっていることも知っている。
  13. サイロの地点が不明なのに加えて、北朝鮮には移動式発射車両も多数あり、これも地下の退避場所に隠れて、肝心な時に地上へ出てきて発射するのだ。数千機が飛び回ってもサダム・フセインが移動式発射台から39発の弾道ミサイルを発射するのを食い止められなかった砂漠の嵐作戦の事実が対策の難しさを物語っている。
  14. 北朝鮮への先制戦争オプションは民間人犠牲者を数十万名あるいは百万名まで甘受しないかぎり実施は難しそうだ。だがトランプ政権は北朝鮮が米軍隊員、市民あるいは同盟国を攻撃したら、あるいはもし政権が攻撃の準備に入った兆候を見つけたら、北朝鮮は大々的な攻撃を覚悟すべきだと伝えられるし、伝えるべきだ。その際は米軍事力の行使は説明がつくし、相当の仕事をするだろう。
  15. 目的は戦争勃発を食い止めることであり、米国・同盟国の一般市民の声明を守ることだ。さらに経済外交上の圧力を北朝鮮にかけ続けて最終的に核兵器整備を断念させることにあるはずだ。外交対応に軍事抑止力を組み合わせることがこの結果を生むはずだ。「予防」攻撃という誤った名称の作戦は壊滅的な失敗につながりかねない。■
Daniel L. Davis is a senior fellow for Defense Priorities and a former lieutenant colonel in the U.S. Army who retired in 2015 after twenty-one years, including four combat deployments. Follow him @DanielLDavis1.
Image: REUTERS​

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