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朝鮮戦争2.0で株式債券市場にどんな影響が出るのか、過去の戦時実績から予測


米朝開戦がここにきて現実味を帯びてきました。読者の皆さんは株式投資をされているのでしょうか。であれば昨今の状況を見て心配もされているでしょう。以下の分析を見ると必ずしも悲観する必要もないこともわかりますね。ただし本ブログはいかなる投資上の損失に責任を負わないことを明記しておきます。


Here's how the market responds when the US goes to war

米国が戦争に入ると市場の反応はどうなるのか
CFA Institute
株式市場は不確実性を嫌う。北朝鮮を巡る緊張でその不確実性が多分にある。
本稿は2013年9月13日に発表し、中東特にシリアの争乱状態を念頭に置いて米国が紛争介入した場合に市場にどんな影響が出るかを論じた。ここにきて北朝鮮の活動を巡る状況にかんがみ、CFA発行のEnterprising Investors読者の要望に応え初稿に手を入れてみた。
まず今は株式市場から手を引くべきなのか。答えは状況次第ということになる。
今月までの北朝鮮ミサイルテストに呼応して市場の動きを見てみよう。
「今週のダウ工業株での1.1%下落を北朝鮮指導者金正恩と米大統領ドナルド・トランプの言葉の応酬のせいにしたくなるのはわかる。だが北朝鮮を巡る国際事件や1993年以降の核開発関連80件を調べると朝鮮半島の緊張と金融市場のつながりはほとんどないことがわかる」(アナリスト、スペンサー・ジェイカブSpencer Jakab)
プラシャント・S・ラオPrashant S. Rao は別の見方だ。世界規模の市場動向では両国間の緊張増加から売り逃げを強める傾向がある。「アジア各地の株式市場は安く終わり、ヨーロッパの各種インデックスも開幕時に低く始まったのはワシントン、平壌の言葉のやり取りが実際の戦闘に移行すると心配しているからだ」
ロドリゴ・カンポスRodrigo Camposとルイス・クラウスコフLewis Krauskopfも世界規模で株価下落が始まったのは地政学的な緊張状態の反映と指摘する。
ウォーレス・ウィトコウスキWallace Witkowskiとマーク・デカンバーMark Decambreはこう見る。「主要指標三つで5月以来の安値を8月30日に付けており、三大指標が連続下落するのは4月以降のことだ。これは米朝間の言葉の応酬を反映している」
トランプ大統領が繰り返しツィッターでこれ以上米国を脅かすと「世界が見たことのない炎と怒りを降らせる」と北朝鮮をけん制し、「武力解決策が今や完全に準備できている。照準を合わせ装備を詰め込み、北朝鮮が不穏な動きをした場合に備えている」とまで述べているが、これが市場が神経質になっている理由なのだろうか。
では戦時の資本市場がどう推移したかの過去事例を見てみよう。
第二次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争での乱高下と利回りを比べてみた。イラク戦争はここに入れなかったのは期間中に大規模好景気とその反動の不況があり、戦争への国家経済の関与度が低いことが理由だ。
下表に示したように戦争があっても国内株が必ずしも低迷するわけではない。むしろ反対に長期平均より高い実績を株価が戦争中に示すことがある。反面、債権は不安定時に安全選択肢と言われるが戦時には全期間平均より成績が悪くなっていることがわかる。
Capital Market Performance During Times of War 戦時下で資本市場はどう動いてきたか
Capital Market Performance During Times of Warここで使った指標は次の通りだ。S&P500指数を大企業株価として、CRSP Deciles6-10で中小企業株価を、長期米国債、5年物財務省証券、消費者物価指数をインフレーションの把握に使った。戦時下の利益については開戦四か月前と戦争中の数字を使った。表中All Warsとはすべての戦時下の数字を表す。ただし過去実績は将来の結果をすべて示すものではない。CFA Institute
上記検討では1926年から2013年を対象に青の背景色で「管理機能」を示している。戦時は赤で示した。一つ一つの戦争を個別に下に示した。興味深いことに大企業・中小企業それぞれの株価は戦時の方が変動が少ない。ベトナム戦は例外で、株価が総平均を下回る。それでも全体として上がっており、債権や現金より利回りが良い。
また株式変動幅が戦時に低くなるのは興味深い。直観では地政学環境の不確実性が株価にも影響するはずと思うが、実際にはそうなっていない。例外は湾岸戦争で株価変動はほぼ全体平均に沿っていた。
資本市場の結果はやはり湾岸戦争時に他と違う動きを示していた。湾岸戦争は一年未満と極めて短期に終了している。この時期と原油価格急騰の時期が一致し、経済は短期の景気後退に入った。戦時下で不況になるというのは新しい見方で米経済の変貌ぶりを反映している。それ以前の戦争では経済は資本財、天然資源で大量の物資が戦闘行為継続に必要だった。しかし1990年代になると経済は重工業から「知識ベース」の経済に移行し、軍事需要が経済に与える効果も減少している。
債権は戦時下で成績が悪い。この理由としてインフレーションが戦時中に高くなることがある。債券利回りがインフレーションと逆相関関係にあることは歴史が証明している。もう一つの説明として政府が戦時中に借入れを増やすため債権利回りは上がるが、債券価格は下落する。さらにインフレーションが高くなり、政府借入が戦争関連で増加すると投資家は安全を求め株式から債券への資産移動に慎重になる。
株価に影響を与える経済要因やファンダメンタル要因は多い。単独イベントだけで他の要因を上回る影響を資本市場に与えることがある。ただし、過去を振り返ると戦時下ではこうならないことが多い。
「だからと言って北東アジアでこれから起こることが無関係なままではない。開戦の恐れは本当で現在の安値株を買う動きに対して軍事衝突が株価、企業債券に良い効果を与えるか不明だ。現時点の水準がすでに高どまりと見る向気が一般的」と言うのがジェイカブの結論だ。「今のところ、対立の構図では言葉の段階にとどまっているが...突然現在の強気市場を終わらせる何かがいつ起こってもおかしくない。北朝鮮から出てくる発言以外のものだ」
経済成長、収益、金利、インフレーション、その他の要因により将来の株式市場、債券市場の方向が決まる。仮に米朝間で開戦となればお決まりの低落は十分可能性があるが、歴史を見ると下降気味の市場は短期間しか続かないこともわかる。■
Read the original article on CFA Institute. Reproduced with permission from CFA Institute. Copyright 2017. Follow CFA Institute on Twitter.

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