スキップしてメイン コンテンツに移動

★★★シリア空爆にF-22が投入された背景を考えてみよう



F-22がISIS攻撃に投入されたニュースの続編です。もう少しくわしく伝えていますのでご参考に。

Analysis: Long Road for F-22's First Combat Mission

Sep. 23, 2014 - 04:00PM   |  
By AARON MEHTA   |   Comments
Arctic Thunder
F-22ラプターが兵装庫の中を見せて飛行している。本年7月撮影。ラプターは22日にシリア上空で初の戦闘作戦を実施した。 (Staff Sgt. Jared Becker / US Air Force)

WASHINGTONロッキード・マーティンF-22ラプターが初の戦闘作戦に投入され運用で大きな一歩となった。
  1. 空軍がラプターがシリア空襲に投入された事実を確認し、イスラム国(IS)他の過激派を目標に夜間攻撃を合衆国と湾岸諸国同盟国連合軍の一部として実施。
  2. F-22が戦闘に投入されてこなかった理由に機数が少ないこともあった。当初ペンタゴンは同機を大量導入する予定だったが、当時のロバート・ゲイツ国防長官が生産終了を強硬に求めたため小規模調達になった経緯がある。最終機が生産ラインを離れたのは2011年12月で187機が調達された。

  1. ペンタゴンの報道会見ではウィリアム・メイヴィル陸軍中将Army Lt. Gen. William Mayville(統合参謀本部作戦部長)からF-22がISの指揮命令施設(場所ラカーRaqqah )に精密誘導爆弾攻撃を加えたと確認した。

  1. F-22はAIM-120高性能中距離空対空ミサイル6発またはAIM-120を2発とGBU-32共用直接攻撃爆弾2発の組み合わせで空対地攻撃が可能。機体内部には20 mm機関砲とAIM-9サイドワインダーミサイルを搭載している。

  1. メイヴィル中将は空爆は今後も続くと発表しているのでラプターが再度投入される可能性は高い。バラク・オバマ大統領も軍事行動は数日から数週間程度続くとの見通しを発言している。

  1. ISISへの米空軍の作戦内容開示は小規模で、その理由として運用基地を抱える各国が同じイスラム教徒に対する攻撃へ基地を提供していることに神経質になっている。反対に米海軍は空母運用でもあり、イラク上空での作戦の映像を多数公開している。またトマホークミサイル発射の映像も公開している。

  1. F-22運用にも各国は神経質になっている。2013年に一般公開された地図データではF-22部隊がアラブ首長国連邦内のアル・ダフラ基地に駐留していると判明してしまった。このこと自体がイランに対する脅威と受け止められている。米空軍はF-22がイランF-4を迎撃した事実を確認している。

  1. だが空軍が同機を第一回目の攻撃に投入した理由は不明だ。メイヴィル中将はラプター投入を「目標に対して求めた効果から、また稼働可能な機体から最適選択を考えた」とし、「攻撃目標は多岐にわたり、機体よりも効果を優先し、そのあとで機材を選択した」という。ではその効果とは何を意味するのか。

  1. 一つの可能性は攻撃に参加した米軍機や同盟国軍機の護衛だ。シリアのバシャル・アル・アサド大統領の指揮下にある空軍が迎撃に向かうことも想定されていた。
.
  1. 二番目にISIS支配地域も対象とするシリアの防空体制に侵入、脱出するのにF-22が必要だったのかもしれない。ペンタゴンはシリア防空網は高水準と評価しており、シリア内戦時に米軍がアサド政権側を攻撃できない理由とされていた。

  1. あるいは主力攻撃隊の到着前にF-22が電子戦を.実施した可能性がある。これもシリア防空体制と関連している。

  1. 国防総省関係者からF-22の能力は情報収集監視偵察(ISR)機材として認識しているとの発言があった。「エイビオニクス統合化とセンサー類一式でISR機材にもなり、単なる攻撃機ではありません」と同関係者は発言。「戦闘を正確に理解できるとともに僚機へ情報提供が可能です。進行中の事態を明確に把握できます」

  1. 「F-22には優れた戦闘時ISR能力があり、レーダーやセンサーで戦闘がどんな状況にあるのか情報収集を豊富におこなうことができます」とレベッカ・グラントRebecca Grant 現IRIS研究所所長、前ペンタゴン勤務も言う。

  1. グラントが注目するのは合成開口レーダーで高解像度画像を集め、地上の動きを動画撮影するのは今回のような作戦では重宝されるはずという。データ収集以外に目標確認、さらに同じ空域の僚機に伝えることが可能。

  1. F-22の性能には目を見張るものがあるが、ラプター初陣は同機をシリア方面に展開した航空機材の一つとして使っただけのようだと同上関係者は語る。

  1. もっと簡単に言えば、ペンタゴンがF-22を世界有数の戦略地点に配備したのには理由があり、これまで投入してこなかったが、今は考え方に変化が生じたということだ。

  1. F-22を実戦に投入し知見を得る機会ができたので空軍は疑いなく満足なはずだ。だが空軍はラプター後継機開発準備に入っており、正式開発開始は2018年といわれる。

  1. 「今のうちに後継機に必要な性能水準を検討する必要があります。20年後にF-22も機齢30年になりますから」と航空戦闘軍団で航空優勢基本性能検討チーム長をつとめるトム・コグリトア大佐 Col. Tom Coglitore, air superiority core function team chief at Air Combat Command がDefense Newsに語っている。「各機に連日何回も8から9Gをかけていますから、相当のストレスになっているはずです」■

F-22開発のあしどり

1991年8月23日: ロッキード・マーティンにF-22契約交付
1997年9月7日: 初飛行実施
2005年12月15日: 初期作戦能力獲得
2006年1月21日: 初の作戦運用で Operation Noble Eagleに参加.
2011年12月13日: F-22最終号機が生産ラインを離れる
2013年5月13日: UAEのアルダフラ空軍F-22の駐機が衛星画像で確認された。イランから飛行距離6分の地点。
2013年9月17日: 空軍協会総会で参謀総長マーク・ウェルシュ大将からF-22がイランF-4迎撃した事実を発表。
在籍機数: 187



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...