女王まで異例の発言をするなど、分離独立を食い止めようとする勢力は必死になってきました。それだけ可決の可能性が高いということでしょう。記事が取り上げている内容どおりなら英国の国防計画は破たんしてしまいそうですね。東アジアのこちらは中央集権国家タイプですので、今回の騒動もなかなか理解できないでしょうね。
Scottish ‘Yes’ Vote Could Have Major Impact On U.K. Defense
Narrowing polls in Scottish independence referendum prompt U.K. defense concerns
Sources: Google Maps and AW&ST Art Dept.
9月18日にせまったスコットランド有権者4百万人による住民投票結果次第で英国の国防は大きく影響を受けそうだ。選挙運動の最終段階で賛成票が多数を占める可能性が現実味を帯びてきた。
- 独立反対の結果でもスコットランドには現在より大きな裁量権が与えられ、英国全体に影響する政策方針の変更は避けられないだろう。.
- ただし政治指導層が最も恐れているのが独立賛成の結果であるのは間違いない。独立となれば300年にわたる統合が崩壊し、国防分野がまっさきに影響を受ける。英国議会もこの投票の動向を意識しイラク国内でのイスラム勢力向け空爆への参加議決を見合わせている。
- 2010年の戦略国防安全保障検証 Strategic Defense and Security Review (SDSR) によりスコットランド駐留部隊は大幅縮小したが、スコットランドは英海軍のトライデント戦略ミサイル原潜の母港で、核抑止力のかなめであることにかわりない。
- 戦闘機や陸上部隊なら簡単に南部へ駐留地を移動できるが、核抑止力はそうもいかず国防関係者にとって頭の痛いところだ。さらにスコットランドが英国に潜水艦の即時撤去を求めるかもしれない。そうなると国内には潜水艦の運用に必要なインフラは他になく、NATO、EUそれぞれの加盟国にとっても核抑止力の空白は悪い結果となる。なおスコットランドは両組織へ加盟を希望している。
- それでもスコットランド国民党 the Scottish National Party (SNP) のトライデントへの見解は明白だ。独立を目指す白書の中で同党は「無差別かつ非人道的な破壊力であり、人類への侮辱」とまで言い切っている。
- SNPの主張では独立を実現すればトライデント後継ミサイル開発から自由になれるという。開発は1,000億ポンドで20年から30年かかるとみられる。
- 国民党は同時にスコットランドは英国防予算340億ポンドの1割を支払っているのにその半分しか恩恵を受けていないと主張。またスコットランドが拠出をやめれば国防省が今後10年でめざす1,600億ポンドの装備調達計画で130億ポンド不足が生じると説明。
- 2010年度SDSRにより空軍基地が二か所閉鎖されている。英海軍は水上艦基地をスコットランドには一か所も有していないが、基地閉鎖がスコットランド選挙区では暗い材料になったのは確かだ。
- 独立賛成票によりスコットランドの小規模ながら重要な国防産業も域外脱出を加速化するかもしれない。もっともリスクが高いのが造船で5,000名の雇用がかかっており、海軍艦艇や潜水艦は国内建造するのが現在の方針だ。エアクラフト・キャリア・アライアンス Aircraft Carrier Alliance がエジンバラ近郊のローサイスRosyth で英国の新型空母2隻を建造中だ。造船各社は南方への移動を模索するだろう。
- SNPは英軍装備を引き継ぎ自国防衛を図ると綱領で発表している。人口比からスコットランドは78億ポンド相当の装備を所有すべきで、防空用にユーロファイター・タイフーン12機ないし16機、ロッキード・マーティンC-130Jは6機を委譲を希望する。ただしこの交渉は難航するだろう。
- 住民投票で独立が否決されれば国防関係者は安堵するだろうが、スコットランド議会への権限委譲がさらにすすめばスコットランドから隣接する各地域へ発言権が増しても、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの各地方はスコットランドへ口出しできない。この問題は「西ロージアン問題」“West Lothian question” と呼ばれ、残る地方への権限移譲につながるかもしれない。
- 住民投票で可決されればSNPは独自の憲法制定に動き、2016年3月までに完全独立を目指す。■
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