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ISIS戦略方針をオバマ大統領演説から読み解く


ISISとの戦いはこれまでのアルカイダ等イラク、アフガニスタンの戦いと様相がちがうものになりそうです。先日のオバマ大統領演説をメッセージ面で分析したのが下にご紹介する論文ですが、筆者は現役海軍大尉とのことで論旨の展開ぶりから今後が楽しみな人のようです。時々マハンはじめとする論客があらわれるのは米海軍のおもしろいところですね。ところでISIS包囲網に日本も加わっており、今後政治面で日本の役割を真正面から論じざるを得なくなるでしょうね。なお、トヨタにはIsisという車種がありますが、早晩車名変更せざるを得ないのでは。あまり関係ありませんが。









Opinion: The Strategic Communication Goals Behind Obama’s ISIS Speech
By: Lt. Matthew Hipple, USN
Published: September 11, 2014 8:18 PM
Updated: September 11, 2014 8:18 PM

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アメリカは13年前に長期戦に突入している。9月10日にバラク・オバマ大統領は戦闘が継続中で、今度はイラク・シリアイスラム国(ISISまたはISIL)に立ち向かう旨演説したのは時期にかなうものである。

  1. 大統領演説を要約すれば、長期戦ということだ。

  1. 大統領の意図はISISの脅威を説明し、ISISを打破しアメリカがこれまでの13年間地上戦にくぎ付けとなった事態を回避することだ。アメリカはISISを滅亡させるが、アメリカ単独では実施しない。アラブ圏の友好国、イラク軍、シリア反対勢力を巻き込み、アメリカ軍事顧問団と空軍力で実施する。

  1. では今回の演説の中身から、政策そのものではなく、戦略的なメッセージ、その対象、意図する効果を論評してみたい。

全員へ:ISISとは脅威そのものであり、破壊されなければならない。


  1. 「本土では陰謀の実例はみつかっていませんが、ISIS指導部はアメリカおよび同盟国を脅かしています。情報機関によればヨーロッパ各国とアメリカ出身数千名がシリアとイラク国内で戦闘員として加わっており、訓練と実戦経験を踏んだこれら戦闘員が母国にもどり、攻撃を加える可能性があります。」

  1. とくにアメリカ国民向けに明確にISISの脅威が理解できるよう大統領は機会、能力、意図を組み合わせて説明している。ISISの残虐性は証明済みでだが、彼らの主張する目的には悪意ある人々をひきつける効果がある。これはヨーロッパの聴衆にも同じく受け止めれる。

  1. 「我が国を脅かすテロリストはどこにいようと一人残らず駆り立てると明言してきました。これは当政権の信条の中心であり、アメリカを脅かすものには安全な場所などありません」

  1. この内容に特に説明は不要だろう。

中東各国へ: 拳を、でも硬くせず

  1. 「これは我が国だけの戦いではありません。アメリカの力は決定的な結果を生みますが、イラクにかわってイラク国民が自分ですべきことを我が国が行うことはありません。同じようにアラブ各国の友好国にはすべきことがあります。対テロ作戦は一貫して休むことなく続け、ISISを除去すべく、我が国の空軍力および同盟国の地上軍を支援します。」

  1. 敵の敵と連携する事態が生まれるのを待つのか、挙国一致体制のイラク新政権が発足するのを待つのか、とはいえ大統領演説は周辺国に合衆国だけでこの事態を囲い込むつもりはなく、継続中の代理戦争は周辺国すべてを疲弊させてしまう可能性を示しているものだろう。合衆国が「飛び込んで」こないとわかれば、今回の対決中でもっとも憂慮すべき事態を引き起こすかもしれないのだ。
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  1. 演説ではイラク政府、クルド人部隊、あいまいにシリア反乱勢力へ言及があったが、個別名でのシリア反乱勢力、イラン、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアおよび湾岸諸国もこの戦いに加わろうとしているのにもかかわらず言及されていない。何らかの意図があるのだろう。

  1. イラク政府軍とクルド戦闘部隊間に分裂があることがうかがえるが、別個に戦闘を実施する中でクルド人の功績が大なのが政治的に微妙な作用を及ぼしていることを理解すべきだ。

議会へ: しっかりと一貫性を


  1. 「総合的かつ一貫したい対テロ戦略でISISを追い詰め破壊する」

  1. 合衆国はISISを明確に相手とし、地上兵力除く多くの資源を投入していくだろう。これに驚く人はいないはずだ。だが大統領は議会に二点を伝えている。議会の承認を都度必要とせず交戦すること、およびシリアへの拡大だ。

  1. 「我が国は最強国家であり大統領と議会はともに手を携える。そのため議会の支援により世界に対してアメリカが団結して危機に対処していることを示したい。....かつてはアルカイダ支部だったものがイラクの部族間対立とともにシリア内戦も利用して支配地域を両国にまたがって拡大している」

  1. これはわかりやすい。大統領が議会の承認を求める発言をすると観測していたものがあるが、そもそも議会承認が必要なのかはっきりしない中で承認を取っているのと同じといってよい。同様にこれがISISはアルカイダと同類だと発言した理由でもある。

  1. 「追加的権限と資源を与え、ISISと対決する戦闘員の訓練および装備調達を可能とするよう議会に再度求めたい。自国民を残虐に扱うアサド政権には信頼を置くことができず、同政権は一度失った正当性を回復することはできないだろう」

  1. ここで大統領は以前からのシリアの関与についての議論を続ける格好だ。この部分はその他戦略部門の言及の中に埋もれているが、ISISの残虐性について言及してから、シリア大統領バシル・アル・アサドとの同盟関係はありえないとし、アサドも残虐性では同一だとする。現実主義者の立場ではこの点に違和感があるだろうが、大統領が演説中で示しているのはソフトパワー soft power とイデオロギー超越counter-ideologyの二点だ。これは今後も訴求される内容だろう。

アメリカ国民へ過去の「引き返せない点」は避けつつ、期待を実現せよ
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  1. 大統領は基本ルールを作って国民各層の支持を保持しようとしている。

  1. 「以前も述べたように米軍部隊は戦闘任務に投入しない。イラク地上戦へ再度引きづり込まれない。...アメリカ国民には今回はこれまでのイラク、アフガニスタンと違う戦いにしようとしている点をご理解いただきたい。米軍戦闘部隊が海外の地で交戦に巻き込まれることはない」

  1. 第一に合衆国は今回の紛争に全面参入せず、過去10年間の状況に「回帰」あるいは「巻き込まれる」ことはない。これがシリアを巡る議論の背景にある最大の懸念事項で、オバマも回避したい点だ。これには軍事作戦が知らぬ間に拡大しないかとの懸念を事前に防ぐ意味があり、議論そのものを遅らせる意図もあり、否定的な反応が起こる前に先手を打ったのだろう。

  1. 「世界にある邪悪な力をすべて消去することはできず、殺人集団は小規模とはいえ大きな害を及ぼす力を有しています....ISISのような悪性がんを根絶するには時間がかかります」

  1. 第二に、現実に即した形で期待を維持することだ。示された戦略は長期にわたるもので、「世界からすべての悪を消去できない」というのは同様の脅威がこれからも発生するとの布石だろう。大統領は簡単に勝利を収められるとの期待や勝利への確信を回避したいようで、期待が裏切られ支持がなくなることを恐れているようだ。

  1. 「軍事行動には危険がつきもので、とくに軍に身を投じる男女が任務を実施する際には危険がつきまといます」

  1. 三番目に危険対応を予め準備させることだ。現場で任務に就く兵員や上空を飛ぶ航空機ではISISによる殺害あるいは誘拐あるいは撃墜の恐れという「低リスク」があるというだけで任務達成が困難になるできなる。紛争が長期化するという現実直視をすれば当初こそ支持に盛り上がりをかくことになりそうだが、一方でより堅実かつ現実的な理解を生み、作戦維持ができることになる。

中東各国および西側出身でISISへの「転向者」へ

  1. 演説を通じ合衆国が同地区を重要視しているのがわかるが、「空軍力」、遠隔地からの「対テロ作戦」、軍事顧問団という言葉遣いから合衆国には同地区を再占領する意図がないことがわかる。そうなるとISISに対しまだどっちつかずの国や「西側諸国の帝国主義」を心配する向きとも意思を疎通させなければならない。「帝国主義」や「聖戦」を否定することで合衆国はISISは「イスラム」にあらず、イスラムとの戦闘を展開するのではないと説明できる。ただしこのメッセージが戦闘地区内に届くことはないだろう。
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  1. ただし西側諸国や比較的安定している隣接諸国にいるものにとってはISISがソーシャルメディアを駆使して聖戦を訴えていることは要注意だ。

総括:


  1. 一部で戦略案そのものに異議をとなえるものや、ソマリアやイエメンの価値を引用する部分の正確さに違和感を覚えるものがあろうが、今回の演説は今後の戦略的な意思疎通を前面に出したことでは極めて率直なものだった。

  1. なぜ合衆国がISISを相手にしなければならないのか、我が国の安全そのものがかかっていること、さらに地域内の同盟国も自国の安全を目指して努力していることがはっきりと説明された。

  1. 公職最高位にあるものでここまで意思疎通を「戦略的に」行った事例は少ない。同時にその好例だろう。
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  1. 示された方針が合衆国にとって正しい選択なのかは我ら国民が議論することであり、時間の経過ではっきりしてくるだろう。■

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