海軍航空戦力の将来像がピンチという話題の続編です。なるほどこれだけの巨費をかけながら期待するような攻撃力を加えられないのなら空母は不要だ、というわけですか。短絡気味ではありますが、確かに10万トンの巨艦はかつての戦艦と同様に予算ばかり食う存在になっているのでしょうか。そこに空母=ステータスシンボルと勘違いなことを考える国があらわれているわけですが。
Aircraft Carriers Could Be Obsolete in the 2030s Even With F-35s
That is, if flattops continue to lack long-range strike capabilities
ハイエンド戦の初日にもし米海軍に空母航空隊投入するつもりがない、あるいは投入できないとしたら、納税者の130億ドルもの巨費を投じたフォード級空母の意味がなくなってしまうではないか。
- ワシントンの海軍関係アナリストたちがこう問いかけており、海軍には選択肢が多数あると強調し、ステルス長距離無人攻撃機や潜水艦部隊の増強もそのひとつだとする。
- だが現行のボーイングF/A-18ホーネット中心の航空戦力は航続距離が短く、2030年代には適応できなくなる。たとえ若干長距離のロッキード・マーティンF-35C共用打撃戦闘機が加わったとしても。
- 「開戦初日に空母がA2/AD内で有効な攻撃ミッションを実施できないのなら130億ドルで何が手に入ったと言えるのでしょうか」と新アメリカ安全保障センターのジェリー・ヘンドリックスがThe National Interest取材で述べている。
- 「こんな主張をする人がいますよ。『一日目にできる仕事はない』というのなら、値段にあった仕事ができないとことになりませんか」
- 高額な空母予算を正当化し、戦力として活用するために米海軍には空母航空隊を再編し、接近阻止領域拒否に対応できる戦力にする必要があるというのがヘンドリックスの主張だ。
- 海軍に必要なのは長距離無人攻撃機なのは明白ではないか、とヘンドリックスは問いかける。「長距離攻撃を空母から実施する機材を作らないのなら空母予算は他に使うべきではないでしょうか」
- ブライアン・マクグラス(海軍関係コンサルタンシー、フェリブリッジ専務)もヘンドリックスと同意見だ。
- 「海軍が空母航空戦力の将来に腰が重いままだと空母の存在価値が脅かされます」とThe National Interest誌にに語っており、長距離無人攻撃機の開発を提唱している。
- 「これはいつも忘れないでください。空母は浮かぶ空港です。航空機材がカギです。航空隊の構成を誤ればCVNへの投資は意味がなくなります」
- 海軍上層部はこの点は理解している。ロッキード・マーティンF-35Cの開発が長引き高額になったことで海軍は慎重になっている。
- 「F-35調達で海軍の航空調達に悪影響が出ています。UCLASSがステルス攻撃機ではなく給油機兼ISR機材になった理由を調達部門が説明するのを聞くと背筋が寒くなります」(マクグラス)
- 「空中給油やISRは確かに重要ですよ。でもあくまでも付随機能です。機材構成に欠けているのは高機動セミステルス長距離攻撃能力です。全く不足しています
- 「ISR/給油機の方が技術課題の垣根が低いのは事実で、調達部門には高い目標に挑戦する意欲というか食欲という何かが欠けています」
- F-35で海軍は無人攻撃機開発の意欲が萎えてしまっただけではくF/A-XXも構想が後退し今や「スーパーな」スーパーホーネットという存在になっている。
- 「F-35でこりごりしてF-35の再来はもうごめん、というのでしょう。でもこれではF-35から誤った教訓を得ることになってしまいます」(マクグラス)
- 「F-35で学ぶべきは『一つで全部』の解決方法でミッションすべてを全条件でこなす機体は実現できないことです。だからこそ無人セミステルス長距離艦載機は空母航空部隊専用に作るべきなのです」
- ただし、もし海軍が長距離侵攻攻撃機の開発に乗り出さないと言うのなら最低でも新型空中発射式巡航ミサイル(最終段階で超音速とするのが望ましい)で有効射程500カイリ以上の開発が必要となる。
- このミサイルはスーパーホーネットあるいはF-35Cに搭載し、600マイル以上飛行してから発射する。
- ヘンドリックス、マクグラスの両名は空母にはどうしても給油機で攻撃隊を支援する必要があるという。
- 「3万ポンドの給油能力が必要ですが、少なくともKA-6(26千ポンド)と同等の給油が必要です」とヘンドリックスは言う。
- 米海軍が米国と同等の戦力を有する国を相手にした開戦初日に空母を投入しないのなら、130億ドルを投じたフォード級空母の意味がなくなるというのがヘンドリックスの主張だ。
- 代替策としてフォード級の建造を中止し、安価なニミッツ級空母建造の再開すればよいとし、ヘンドリックスの試算ではニミッツ級最終艦のUSSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)は建造費が最高規模だったがそれでもUSSジェラルド・R・フォード(CVN-78)の半分程度だという。
- 別の代替策は60,000トンのフォレスタル級並みの小型艦としカタパルト数や高額な装備をあきらめることだ。
- 「空母を70機搭載とすれば設計もかわるはずです」とヘンドリックスは指摘し、10万トン級のニミッツやフォード級は90機以上搭載を前提にしていると指摘する。
- 選択肢はまだある。空母建造そのものを取りやめ、潜水艦建造に集中すればステルスで妨害をうけない運用能力が増強できるとヘンドリックスは言う。
- フォード級空母の予算でオハイオ級後継(ORP)弾道ミサイル潜水艦二隻あるいはヴァージニア級攻撃潜水艦四隻が調達できる。
- こうすれば海軍が必要とするオハイオ級弾道ミサイル潜水艦の後継艦作りにはずみがつき、攻撃潜水艦不足も迅速かつ予算的に無理なく解消できる。
- さらに攻撃潜水艦がヴァージニア・ペイロードモジュールでトマホーク巡航ミサイル40発を搭載すれば相当の攻撃力となる。
- ただし、ヘンドリックスはOPR潜水艦をまとめ買いで倍増し、半分はSSGN(巡航ミサイル搭載潜水艦)にし、トマホーク112発を各艦が搭載できる案を提唱している。
- 「空母航空隊で開戦初日に精密攻撃できないのならSSGN部隊が代わりを務めればよい」とヘンドリックスは述べた。■
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