スキップしてメイン コンテンツに移動

AI搭載無人機に手も足も出ない戦闘機パイロット:シミュレーターの世界は現実になるのか

記事にあるPSIBERNETIX(サイバーネティックスと呼ぶんでしょうね)はシンシナティ大卒業生のようです。オハイオ州は空軍との関係も深いのでしょう。AIが進化すれば養成に何億円もかかるパイロットが失業するとの恐れで米海軍の現職パイロットは一致団結して無人機の導入を阻止したのでしょうが、空軍はどうなのでしょうか。さらに航空自衛隊は?日本ではまだヒトの優位性を信じる向きが多いのでしょうね。

By COLIN CLARK on August 08, 2016 at 4:01 AM

Gene Lee in flight simulator. Gene Lee in flight simulator
退役米空軍大佐ジーン・リーがフライトシミュレーターで人工知能と対戦している民間企業米空軍シンシナティ大学が連携してAIを開発した写真 UCMagazine

ペンタゴン関係者の興味を引くこと必至のペーパーで一民間会社が人工知能を使った無人機が有人操縦機を繰り返し、かつ確実に「打ち負かす」結果を空軍研究所 (AFRL)のシミュレーションで得たと発表している。

  1. 豊かな経験を持つ元空軍のジーン・リーが何度も試したが一度も撃墜できず、「毎回敵軍に撃墜された」という。ミサイル交戦は視程外距離で行われた。
  2. 「こちらの意図は読まれていたようで飛行中の変化やミサイルに即座に反応していました。こちらの発射したミサイルをどうかわすかを理解してました」と2011年まで航空戦闘軍団でF-35A、F-22、グローバルホークを担当していたリーはシンシナティ大学学内誌に述べている。
  3. ソフトウェアALPHAを開発したPSIBERNETIXは小企業で、ソフトウェアの性能のカギはアクションの速さだという。同社はヒトの意思決定サイクルに対抗する際の人工知能の従来の限界を克服したようだ。つまり膨大な量のデータを各種センサーから受け取り、処理の上、すばやく決定することだ。同社CEOのニコラス・アーンストが開発した「ファジーロジック」がこの課題を克服したと見える。
  4. 発表ペーパーによればALPHAは今のところ150個以上のインプットを処理でき、「位置、速度、加速状況、ミサイル推定射程範囲、両機の視認性、相手機への命中弾数すべて」が含まれる。同システムで「両機の動きと発射能力」を制御でき、「将来はもっと複雑なセンサーを制御できるはず」という。
  5. アーンストは記者に次の段階でソフトウェアは有人機無人機の同時操縦も実現すると語った。米空軍がF-35ですでにこの作業を開始している。
  6. 記者はテスト結果をデイヴ・デプチュラに見てもらった。無人機からの武器使用を初めて行った司令官で空軍無人機の初期段階で指導力を発揮した人物だ。
  7. 「ここに書いてある性能では実戦にはまだ使えませんが、技術の例にもれずこれも現在の水準を超える進歩を見せるでしょう」とデプチュラは電子メールで回答してきた。「自律運用の信頼度はまだないが、次の可能性がある。1)インプット、アドバイスを操縦者へ提供する 2)UAVの決定ツールとして状況の変化や通信不能時に利用する 3)UCAV一挙大量導入を統括する人員のリアルタイム処理能力を超えた際に代理させ、ヒトは大まかなインプットでUCAVの大群を誘導するが、必要な動作ではコンピューター能力を信頼するはずだ」
  8. ALPHAのファジーロジックで主な優位性は安全性だとアーンストは述べ、学習能力のあるAIとは違うという。「AIが悪さをしないことは数学的に証明可能です」と記者に話した。
  9. ファジーロジックが関心を呼ぶが、ソフトウェアでどこまでのことができるようになったのか、今後どこまで期待できるかを考えておくのは意味がある。
  10. 「今でもコンピューターのアルゴリズムが人間以上の働きをしている事例はたくさんあります。基本的に不安定なF-16やB-2ではフライバイワイヤのアルゴリズムが微調整を毎秒数千回しており手動操縦は到底無理ですね」とデプチュラは述べている。「ただしコンピュータも人間にかなわない分野があります。脳外科手術、芸術、外交政策などです。この技術は一部の仕事なら見事に行い、人間より効果、効率が高いでしょうが、だからと言ってヒトの脳より高性能、あるいは劣るとは言えないでしょう。全く違う存在だからです」
  11. 国防長官アシュ・カーターの選んだ技術革新の責任者である戦略能力開発室長ウィリアム・ローパーはヒトひとりずつが一つのマシンを直接操作するのではなく自律運用戦闘マシンの「指揮命令」の仕方を学ぶべきと発言している。
  12. 「考えると恐ろしくなるのは処理時間に対して反応時間の方は人間の反応速度以上の短縮はできないことです」とローパーは述べている。米国は強力な兵器の制御はヒトが行い、たとえ反応速度を犠牲にしてもこれは変わらないとするが、他国は違う。「人間の知覚が理解する前に紛争が大規模戦になる可能性がある」
  13. PSIBERNETIXソフトウェアについてのジーン・リーのコメントにはローパーが速度について語った内容と恐ろしいほど類似性がある。
  14. デプチュラの懸念はマシンの決定速度でなくヒトの意思決定、特に調達業務についてだ。「答えが出ていない課題がある。時代遅れで工業中心時代のままの国家安全保障のしくみには技術革新を取り込む賢明さは期待できない」■

コメント

  1. AIの軍事利用については世界各国で研究が進んでおり、日本も例外ではない。
    見本としてP-3Cでは哨戒活動時の情報処理においてコンピューターの比重が大きい。
    そのためP-1では状況判断にAIを活用している。

    記事のような攻撃判断までAIが担うには残念ながら倫理的・政治的を乗り越えなければならず、責任の所在を含め当面は遠隔操作に頼ることになる。
    それでも確かにAIは人的資源に限界のある日本にとっても非常に有用な技術で、海自が米海軍と共同開発中の無人潜水艇等にも活用されるだろう。
    コストが許す限りでは、だが。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...