米空軍は次期戦闘機材の姿を未来から考えていますね。目的は航空優勢の確立であり、ドッグファイトは目的ではないと分析し、宇宙やサイバーも含めた多様なシステム構造の一貫として次期機材を捉えております。また、アジア太平洋での作戦をにらみ足の長い機体となると現在の戦闘機と相当形状が異なってくるとし、現状の姿の延長線上に次期機材を想定する勢力の生み出す結果と全く異なる結果を生み出そうとしています。改めて空軍の構成、運用がシステムで成り立っていることを痛感させられる内容です。
Air Force Prepares to Hash Out Future Fighter Requirements
By: Valerie Insinna, August 28, 2016 (Photo Credit: Northrop Grumman)
WASHINGTON — 一年をかけて将来の制空任務に必要な戦術や技術を検討した米空軍が次期戦闘機を実現する第一歩を踏もうとしている。
- 2017年予定の代替策検討(AOA)に先立ち、空軍は予備作業を開始している。AOAはF-35に続く機体の要求条件、調達戦略に焦点をあてる。空軍は次期戦闘機をNGAD次世代航空優勢とかPCA侵攻制空用機材と呼んでいる。
- だがアレクサス・グリンケウィッチ准将はAir Superiority 2030による戦力連携チーム(ECCT)を率い、NGADは従来の戦闘ジェット機と大きな違いが2つあると強調する。ひとつめが調達期間を比較的短くすることだ。
- 「2020年代末までに何らかの形が必要です」と准将はDefense News取材で発言している。「現実的な日程として2028年頃に中心的な技術分野で大幅な投資があれば侵攻制空性能で初期作戦能力が実現します
- 第二の相違点に関係するのがこのたびまとめられたAir Superiority 2030研究で将来の米空軍の航空優勢で決め手になるのは単一機種としての第六世代戦闘機のような機体ではなく、統合ネットワーク化された一連のシステムの集合だとする。この組み合わせの中に侵攻能力やスタンドオフ能力の手段としての戦闘機もあるが、同時に宇宙、サイバー、電子戦の各分野の装備も入ってくる。
- 将来の戦闘機はドッグファイター機というよりもセンサー母体の様相を示すとグリンケウィッチ准将は語る。空軍はAOA前作業としてライト・パターソン空軍基地(オハイオ)で今後登場する技術内容を睨みつつNGADの要求性能を定義づけようとしている。
- 「検討作業では各分野を全側面で比較検討しています」と准将は戦力、残存性、航続距離、ペイロードがそ上に上がっていると述べた。
- 検討チームは要求内容の迅速な実現方法も検討している。Air Superiority 2030のECCTは空軍が通常の調達手続きを取れば第六世代戦闘機の配備は2040年以降になると認識している。迅速調達方法とあわせ並列開発を採用して初期作戦能力獲得をそれより10年以上前倒しできるとグリンケウィッチ准将は期待している。
並行開発とは高性能エンジン、センサーや兵装の進歩を別個進めながらその後ジェット戦闘機に統合搭載していくことを意味し、中核的な要素だと准将は指摘する。技術が初期段階で成熟化を示せば、モデリング技術シミュレーション技術を駆使しシステムとして期待する効果が生まれるのかを吟味する。
- 各種システムを大型機材に統合するのが最も困難かつリスクが高い要素とはいえ、リスクは試作機の制作で最小化できるとグリンケウィッチ准将は考える。
- 「試作機とはいえ運用上は限りなく現実的で意味のある機体にします。そのまま運用可能なほどの水準の試作機という表現がいいでしょう。そこまでの内容にできるかは検討次第です」と准将は語り、「極力成熟化を目指し、試作機を飛ばし、試験も十分行います」
- 「これができれば途中での要求内容変更は必要ありませんし、応用をめざす技術の成熟化が時間通りに進むはずです」
侵攻制空戦闘機とは
- 空軍は「第六世代戦闘機」を用語集から消そうとしているとグリンケウィッチ准将は述べている。F-35後継機には当初次世代航空優勢機材の名称がついたが現在は「侵攻制空」機の名称の前で影が薄くなっている。
- 「『第六世代』の意味するでは議論があるでしょう。レーザー光線を搭載するのか。どんな形になるのか等々ですが、為になる話題にはなりません。もっと実のある会話は2030年に航空優勢を確立、維持するために必要な要素を考えることでしょう」
- 空軍は最先端技術要素として指向性エネルギー初期装備を侵攻制空機(PCA)またはその先の改修時に装備する検討に入った。だが最終的には求めるセンサーや兵装の成熟化が遅れるからといって機材を諦めるわけにはいかない。
- その結果で姿を表す機体は従来のジェット戦闘機とは似ても似つかぬ物になるかもしれないとグリンケウィッチ准将は言う。
- 「戦闘機パイロットとこの話になると大変なことになりますよ、なんといってもこちらが『戦闘機らしい形状にはならないかも』と言うものですから」とし、それでも戦闘機を意味するF呼称がつきそうだという。「典型的な戦闘機パイロットは制空任務には9G、双尾翼、機銃が必要で短距離でいいという。それが戦闘機というものだということです。ですが、いま頭の中にあるのはこれとは違う形で違う属性の機体です」
- 要求性能はまだ固まっておらずAOA過程で変更もありうるが、グリンケウィッチ准将はペイロードと航続距離が最重要な二大要素とする。NGADもその他ジェット戦闘機同様に敵空域に侵入し、防空網に飛び込む必要があるが、現行機材より長い距離で作戦行動を取る能力が必要になると准将は述べる。
- 「では操縦性はどうなるのか。加速は、最高速度はと聞かれるだろうが、確保したい機体容積の前に諦める要素も出てくる。どこまでどれを犠牲にするべきなのか、また古典的なドッグファイトができる機体がほんとうに必要なのか。個人としてはこの取捨選択で方向性が見えてくると思う」
- 空軍は幸先良い出発をしようとしているが性能内容で何を優先するかでまだ多くの作業が残っていると語るのがマーク・ガンジンガー(戦略予算評価センター主任研究員)だ。グリンケウィッチ准将同様にガンジンガーもペイロードと航続距離が二大重要性能だと述べる。
- 「将来の戦闘航空機材が運用される地理条件を考えると西太平洋のように距離が制約となるので機体の飛行距離は今より長くする必要がある」(ガンジンガー) ペイロードの大きさも同じシナリオで重要な要素となる。なぜなら機体は交戦地域で長時間滞空し十分な兵装を敵地へ投下する必要があるからだ。
- この2つの要素は機体価格と迅速な調達に対してはかりにかけられることになるだろう。
- 「完璧な解決方法でないと役に立たないでしょうが、機体は高価格となり多数調達できないはず」とガンジンガーは語る。「空軍は迅速に新型機を導入する必要があり、将来の侵攻制空機と言うか次期戦闘機は2030年代中頃にならないと運用が始まらないはずなので当面役に立たないわけです。だから2030年代までに納入できる、経済的な価格の機体にできるかが重要な要素になります」
試作による効果
- 今年5月にAir Superiority 2030の一貫で性能要求検討チームが公開・非公開の形で未来図を示し、求められる技術の詳細、必要な資金手当ての予測、考えられる作戦概念を明らかにした。ECCTは全空軍参謀総長マーク・ウェルシュ大将が5月に予算をうちきり解散したが、未来行動案の実施部門は引き続き空軍長官他上層部に進捗状況を説明しているとグリンケウィッチ准将は述べる。
- 研究内容から将来の実現に繋がりそうな実験的な試みが生まれている。その中に意思決定データData to Decisionがあり、今春スタートしこれから三年から五年結果次第で続くという。各種センサーや通信機器から取り入れるデータをどう評価して、どう処理し、分析し、共有しリアルタイムで作戦にどう役立てるかを希求する。
- 「データをクラウドのような機器構成に放り込みます。このアプリケーションレイヤーを最上層にもってきて、そこにアプリをつけます。これはiPhoneと同じですが、F-22では『標的情報が欲しい』といえばアプリがクラウドから関連情報を抜き出してきてくれます」
- 第一段階でモデリングとシミュレーションを実施するという。「実際にセンサーを空で動かし、データリンクを見て、通信リンクも見て、ネットワークが各機で共有できるかを確認することになるでしょう」
- 二番目の実験事業にディフィートアジャイルとインテリジェント標的Defeat Agile and Intelligent targetsがあり、数ヶ月以内に始まる見込みだ。この一環で空軍は高度な操縦特性があり威力の高い標的をどう撃破するかを追求する。
- 「難易度の高い標的を統合防空網の中で識別するため、モデリングとシムをするでしょう」とし、予算がつけば実機実験も可能だという。
- 仮に性能ギャップが実験事業で把握されれば、将来機の要求内容に反映され、Air Superiority 2030の将来像で掲げた技術内容にも反映されるとグリンケウィッチ准将は説明した。■
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