C-130のような汎用機でもしっかりISR任務で成果をあげられるという事例ですね。
These U.S. National Guard Spy Planes Have Flown All Over the World
Senior Scout turned C-130 cargo planes into part-time spooks
by JOSEPH TREVITHICK
2004年6月8日のこと、米スパイ機がカルシ・ハナバ航空基地(別名K2)のあるウズベキスタンを離陸しアフガニスタンを目ざした。機材は冷戦時代の象徴たるU-2ドラゴンレイディでなくRC-135V/Wリヴェットジョイントでもなく、ユタおよびネヴァダの州軍所属の特殊改装C-130貨物機だった。
- 搭載する貨物は情報収集用装備でシニアスカウトの愛称だった。輸送機は臨時スパイ機となり、地上通信傍受が役割だった。
- 「その日、乗員は第22海兵派遣部隊の支援任務についたのだった」と州軍航空隊の公式記録にある。「シニアスカウトで海兵隊部隊との連絡を確立し、120名もの反乱分子が同隊を包囲していることがわかった」
- 増援部隊が現地に向かう一方で情報分析が上空で進み、反乱分子の無線交信にタグをつけて追跡できた。乗員は情報を米軍地上部隊に逐次伝えた。
- 「シニアスカウトの乗員の支援が死活的だったのかとの質問があったが」と海兵隊は回想する。「答えは、その通り!」と海兵隊史はまとめている。
- シニアスカウトの初投入は1990年のことで、その陰には大型で知名度の高いスパイ機の存在がある。War Is Boringはこのたび情報公開法を活用し、9/11テロ攻撃以降に州軍所属の空のスパイが戦闘員、麻薬密輸業者、その他敵対勢力を世界中で狩りたてていたことを知った。
- シニアスカウトは情報収集装備そのものをさすが、空軍はC-130Eに搭載できるように設計し、H型J型でも同様で48時間以内に搭載が完了する。
- 制御ステーション及びその他をコンテナー内部に収め、ハーキュリーズの貨物室に搭載できるようにした。着陸装置扉、貨物室扉に特殊アンテナを装着する。
- このアンテナが特殊装備搭載のハーキュリーズを外観から判別する数少ない目安になる。ペンタゴンはシニアスカウト搭載機体をEC-130あるいはRC-130と呼ぶことがあるがこれらの名称は非公式のものである。
- 1989年に空軍は旧式化してきた州軍C-130機材の更新作業を開始した。2001年までにユタ州軍の第169情報飛行隊が三基の「シェルター」と関連装備を運用していた。
- 同隊は装備二組を常時展開する体制を保ち、残る一基は故障時の予備だった。初回の湾岸戦争で中東に飛んでいるがシニアスカウトの主な任務は麻薬密輸業者をラテンアメリカで追跡することだった。
- 第169飛行隊は海外任務でシニアスカウト装備を運用し、その他の正規空軍部隊や州軍航空隊がC-130機材を提供する。
- さらに「ホスト国同乗員」と呼ばれる情報活動の舞台となる国の関係者を乗せることがある。現地当局と米軍の連絡要員だ。乗員は集めた情報はこの同乗者を通じて迅速に「パートナー国の活動用に」提供すると関係筋は説明。。
- これまで20年近くシニアスカウトを搭載したC-130が各国の基地から飛んでいる。エクアドル、エルサルバドル、パナパ、コロンビアと言った国で、米軍や法執行機関、民間事業者と協力している。2011年には改装C-130が海軍のE-2レーダー機と空軍のRQ-4グローバルホークと連携してコロンビアで運用されていたことが年誌からわかる。
- 機密解除となった空軍の資料から一回の任務が10時間に及んでいたことがわかる。
- だがアメリカの対テロ戦争が世界規模に拡大する中でペンタゴンに情報活動の要請が急増し、スパイ機は引っ張りだことなる。シニアスカウトも例外ではなく、前に紹介した2004年のアフガニスタン上空のミッションは一例にすぎない。
- 2009年になるとシニアスカウトはラテンアメリカ、アフガニスタン、アフリカ(国名非公開)で活動しており、おそらく「アフリカの角」でソマリアの対テロ作戦に従事していたのだろう。アフガニスタンだけでも空軍は専用にミッションセット二基を活用していた。
- ミッション増加でシニアスカウト運用チームに負担が増えてきた。また州軍のC-130でも同様で、状況を重視して空軍も新規部隊創設を検討したほどだ。各種情報収集装備とC-130部隊を統合する司令部機能が必要と考える向きが出て保守整備と補給活動が容易になるとの期待があった。
- 「過去にはこれは問題にはならなかった」と2008年編纂の空軍公式記録は記述している。だが対テロ戦が世界規模になり、ラテンアメリカでも作戦が「C-130各機を限界まで酷使するまでになった」のだ。
- さらにペンタゴンはシニアスカウトを他の貨物機に搭載して即席スパイ機として太平洋で運用する構想に関心を示した。大型のRC-135V/Wスパイ機がフィリピンでテロリスト捜索に投入されており、北朝鮮の動きを見守り、南シナ海のパトロール他にも従事していた。
- だが空軍上層部は構想に同意せず、代わりに空軍のワシントン司令部が各チームを統合し、課題に取り組むことになったと2008年の年誌が述べている。
- 2010年までに「RC-130航空団」構想は消え去った観があった。だがシニアスカウトは太平洋にも進出した。
- その翌年に空軍は装備の性能向上を図り、情報は基地と地上部隊双方に送れるようになった。リヴェットジョイントで運用中のデータリンクソフトウェアが小型のシニアスカウトに転用されたと公式記録にある。
- 20年以上に渡り供用されてきたが2013年度には第169飛行隊は「シニアスカウトを投入する主任務が不確定になりシニアスカウト投入回数が一時停止」になったとユタ州軍がまとめている。同隊は情報要員を他のミッションの応援に派遣した。
- 各員はシニアスカウト装備の運用技量を維持し、必要なら即派遣できる体制にあった。2014年8月には公式マニュアルで同隊の乗員は空軍ジェローム・オマリー大将賞(航空偵察)の受賞資格があると記載されている。
- だが中東、アフリカ等で武力衝突が続いており、ペンタゴンは特殊装備をすぐには廃棄しないだろう。■
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