★★F-22はなぜ途中で生産中止になったのか、判断は正しかったのか



F-22については今でも一種の郷愁があるようですが、今更の感もありますね。ただし、F-22を犠牲にしてF-35を重視する決定が結果として予期した効果を上げていないということではないでしょうか。かつてのような大量の機材を惜しげもなく投入する戦争はありえないのでしょう。(少なくとも有人機について)今後数十年間に渡り虎の子のF-22はかつてないほどの保守点検、性能向上を受けながら使い続けられるのでしょうね。

The National Interest

Why Did America Stop Building the Best Fighter Jet Ever?


January 8, 2017


1990年代末の米国空軍力は冷戦後で最頂状態だった。世界最大規模の作戦機材数に加え第五世代機の生産に入っていたのは米国だけだった。その機体がF-22ラプターだ。だが2009年に米政府は同機を途中で不要と言い出し、生産はわずか187機で終了した。いったいF-22に何が起こったのか。生産中止の理由は何だったのか。
  1. F-22が登場当時では世界最優秀の航空優勢戦闘機であったことは疑う余地がない。問題は開発があまりにも長引くうちに主要相手に想定したソ連空軍が崩壊したことだった。
  2. 時局も悪い材料だった。イラク、アフガニスタンの戦役で経済事情が変わり、同程度の実力を有する相手が不在となったことで一機3億ドルの同機は高すぎて維持出来ないと当時の政府は判断した。そして2008年には経済不況というより恐慌そのものがはじまり、2010年には終結したものの、これがとどめを刺したと言える。
ラプターの興亡
  1. F-22ラプターの物語は1980年台初頭に始まった。航空優勢戦闘機の主導権を維持すべく、米空軍はF-15Cイーグルの後継機を模索し始めた。1990年には飛行実証でノースロップYF-23とロッキード・マーティンYF-22が比較され、後者を空軍は選択した。その後F-22ラプターと名称がつき、米空軍の主力機として期待された。
  2. その時点では空軍は750機で262億ドル(機体単価35百万ドル)と試算していた。1990年に冷戦が実質的に終焉を迎えるとジョージ・H・W・ブッシュ政権は648機購入に変更。1997年には339機に削減され、2003年に277機になった。さらに2009年に187機に減り、生産ラインは閉鎖された。
  3. 実戦配備の道も長いものになった。高性能戦術戦闘機事業として1981年に開始され、ラプター初飛行は1990年、初期作戦能力獲得が2005年だった。比較するとF-15イーグルの場合は設計案採用から初飛行まで7年、その後4年で初期作戦能力を獲得している。
  4. F-22の開発完了にはF-15の時間が二倍かかっていることになる。その間にソ連は超大国から没落し1991年に崩壊してしまった。かつて強力だったソ連空軍は各共和国に分散し、戦闘機開発は既存機の改修にとどまり、MiG-29やSu-30となった。F-22開発を急ぐ理由がなくなってしまった。同時にF-22に対地攻撃能力を追加して機材の有益性をふやそうとした。
  5. F-22はイラク・アフガニスタン戦争の犠牲とも言える。低密度武力衝突とはいえ両戦役の経費は膨大となり、当時は存在しなかった大国との戦闘想定への備えは理由付が困難となった。F-22はイラク、アフガニスタンのどちらにも展開されないものの、予算を巡る戦いの中で当時米国が展開中の作戦に必要な装備だとされていた。F-22は即席爆発装置の脅威から地上兵員を守る特別設計車両を犠牲にして予算がついた機体と言われてきた。
  6. 開発期間が長引いたためF-22はF-35とも間接的な競合関係を迎えた。もともと違う役割を想定した別の機材とはいうもののF-35は安価ながらF-22と同じような性能があり、場合によってはF-22を上回る。このことがロバート・ゲイツ国防長官がF-22の生産取りやめを提起した根拠になったのは明らかだ。ゲイツは代わりにF-35開発の加速化を提言した。ゲイツの予見では米国は2025年までにF-35を1,700機配備するはずだったが、費用超過と開発の遅れでこの目標の達成はほぼ無理になっている。
  7. 2008年になり米国は大恐慌以来最悪の経済危機に入り、GDPが2009年には8%も減少してしまう。この年にF-22生産中止が決定された。不況は2010年まで続き、現在も回復途上だ。これにより現実の戦況への対応が一層強調され、超大国相手の装備整備は二の次とされた。今からみれば2009年の判断は見当違いだったとわかる。
アメリカはとんでもない間違いをしたのだろうか
  1. F-22中止から8年が経過した今、歴史の審判は別れている。同機取りやめで特別装甲車の製造に道が開き地上部隊隊員の生命が救われたのは疑う余地が無い。
  2. 一方で世界は再び変貌している。中国、ロシアはそれぞれ大幅な空軍力近代化に入っており、両国とも強硬な姿勢を隠そうとしていない。第五世代機も現時点で三機種増え、中国のJ-20、FC-31とロシアがインドと共同開発を進めるT-50はそれぞれ米空軍力に真っ向から挑戦する機体だ。F-22生産中止を非難する向きは国防総省の戦術判断ミスだとして超大国間の戦いに抑止効果のある装備を犠牲にて結果的に戦争の可能性が高まったと主張している。
  3. なんといっても開発が長引く間に時局変化でリスクが増えてしまったのが痛い。開発10年で57ミリ砲一門を搭載するに過ぎない沿海戦闘艦事業も同じコースに向かっていないか。F-22は夢の兵器といわれつつ意外に早く終焉を迎えたが、同じ事例は他にも出てくるだろう。■
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.



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