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もし戦わば⑨ ロシア巡洋戦艦キーロフ対米最新鋭駆逐艦ズムワルト


もし戦わばシリーズです。⑨回目になりました。しかし、これはどうなんでしょう。あくまでも単艦での一騎打ちということなのですが、キーロフの重装備攻撃手段の方がどう見ても有利な気がしますが、望むらくは実戦で両艦の性能を実証する機会が訪れないことを祈りますがどうなるかわかりませんね。


The National Interest


Russia's Super Battlecruiser Kirov vs. America's Stealth Destroyer Zumwalt: Who Wins?

January 27, 2017

ここに来てロシアと西側の関係悪化で水上艦同士の戦闘が再び真剣に想定されている。中東や中央アジアの地上戦の支援に十年以上も回っていた米海軍が敵艦を沈めるという本来の任務に注力しつつある。米海軍は新型誘導ミサイル駆逐艦USSズムワルトも導入しているが、同艦の主任務な地上砲撃の想定だ。
  1. 一方のロシアはキーロフ級巡洋戦艦を今も供用中だ。艦齢ほぼ30年の巨大艦で老朽化も目立つが今でも強力な武装を誇り、主任務たる敵大型艦の撃沈、特に航空母艦を狙う存在だ。
  2. ではこの二艦が直接対決したらどうなるだろうか。
  3. ズムワルト級は米海軍の最新誘導ミサイル駆逐艦で三隻の陣容となる。アドミラル・エルモ・ズムワルト、マイケル・マンソー、リンドン・B・ジョンソンで艦砲射撃に最適化している。海軍で初の「ステルス」艦で独特の艦形はレーダー反射を抑えるための工夫だ。
  4. ズムワルト級は排水量14千トンで米海軍最大の駆逐艦だ。艦の大きさと重量はステルス性と関連があり、ほぼすべての搭載装備を艦内に収容している。全長610フィートのズムワルトはレーダー上では小漁船にしか映らず、最高速度は30ノットだ。
  5. 重量増の原因には搭載兵装とセンサーがある。AN/SPY-3隊機能レーダーで中高度の探索能力が以前より向上しており、スタンダードSM-2対空ミサイルを運用する。垂直発射サイロが80基あり、SM-2や発展型シースパローミサイル、トマホーク対地攻撃ミサイル、ASROC対潜ロケットを発射できる。
  6. ズムワルト単艦では広面積の対空防御はできない(そのためSM-2搭載も決まったようだが)が、個艦防御は十分可能だ。海軍はSM-2AURミサイルを追加発注しており、射程は短いが発展型シースパローミサイル(ESSM)も各サイロに4発搭載し理論上はESSMが320発まで搭載できる。
  7. 米海軍の対艦攻撃能力が減衰していること、21世紀初頭では地上戦が中心になっていることを考えると、ズムワルトが対艦攻撃能力に劣ることは驚くべきことではない。ハープーン対艦ミサイルはサイロに入らないため搭載しておらず、どうしても搭載するなら主甲板上に斜め発射管をつけるしかない。
  8. 155ミリ高性能艦砲二門は最大射程83マイルで一分間10発の射撃が可能で、対空戦にも投入できる他、水上艦を相手に相当の損傷を与えられるはずだ。
  9. ズムワルトの対戦相手は巡洋戦艦キーロフで過去の遺物といってよい。建造は1980年代末で米空母への攻撃を主眼に攻撃力重視の設計だ。同時に相当の対空能力も有している。
  10. キーロフ級は空母以外では戦後最大級の水上艦である。全長826フィートというのは第二次大戦時の戦艦ビスマルクやアイオワに匹敵するが排水量は24千トンしかない。その理由に原子力推進を採用し、ボイラー含む補機を省いたことがある。最高速度は32ノットだ。
  11. 別の理由もある。アイオワ級戦艦の16インチ砲塔は1,075トンだったがキーロフはミサイルを代わりに搭載している。攻撃手段としてキーロフはP-700グラニット対艦ミサイル20発を搭載する。グラニットは全長33フィートで15千ポンドの無人機の格好をしている。
  12. グラニットの射程は300マイルで速度マッハ2.5で1,653ポンドの弾頭を運ぶ。初期目標情報はキーロフ自体、キーロフの艦載ヘリあるいは地上運用のTu-95ベア含む偵察機から入手する。レジェンダ衛星も活用し、標的情報をキーロフ経由でグラニットに入力する。
  13. キーロフは防空能力も考慮し十分な数の対空ミサイルを搭載し、グラニット攻撃ミサイルを打ち尽くすまで艦を防御できる。S-300F長距離対空ミサイルは96発が外側の防御にあたり、3K95短距離ミサイルと4K33短距離ミサイルがそれぞれ192発、40発で内側防御網を形成する.さらに最後の手段としてAK-630近接防御装備が30ミリガトリング砲で待機する。
  14. ではこの2艦が対峙する想定でどちらが勝つだろうか。公海を両艦が航行中で対艦ミサイルの最大射程としてキーロフのグラニットミサイルの300マイル離れた地点にあると想定しよう。これまでのシナリオとは異なり、それぞれ相手の位置は把握していない想定で始めその後に把握するとする。キーロフはレジェンダ衛星を活用できるが、これはレーダー衛星だ。ズムワルトはステルス駆逐艦で小漁船ほどのレーダー反射しかない。
  15. 両艦は必死になって相手を探知しようとし、ヘリコプターで水平線の向こうを探知させる。この状況でステルスのズムワルトは非ステルスながら堂々たる威容を誇るキーロフ巡洋戦艦より大きく有利だ。ズムワルトのヘリコプターがキーロフを先ず発見し、データ送信してくる。キーロフはこのヘリコプターを発見するがズムワルトの正確な位置はわからない。
  16. ズムワルトのステルス性がそのままなら理論上は同艦はキーロフの対艦攻撃射程内に侵入できる。一方でロシア巡洋戦艦は長距離からズムワルトを一掃したいはずだ。キーロフの搭載システムすべてが衛星目標捕捉からミサイル誘導までレーダー誘導方式であることが悲劇だ。キーロフはズムワルトの推定位置にミサイルを発射するが、グラニットのアクティブホーミングレーダーは米艦の小さなレーダー反射を捉える必要があるのだ。
  17. 仮にグラニットがズムワルトを捕捉してもズムワルトの対空装備は十分対抗できる。SM-2中距離対空ミサイルが少なくとも18発あり、それ以外にも高性能シースパロー短距離ミサイルがあり、ズムワルトはおそらくグラニットの大部分は迎撃できるだろう。
  18. ズムワルトが砲撃をする可能性はあるだろうか。状況次第としかいいようがない。最大射程の83マイルから長距離陸上攻撃弾を高性能主砲システム(AGS)から発射すると161.89秒で目標に到達する。ズムワルトがキーロフの正確な位置を把握していても移動する砲弾が移動する巡洋戦艦に到達するのに時間がかかりすぎる。AGSはGPS誘導能力があるが大して役に立たない。キーロフの移動速度が均一で正確な方位がわかっていれば砲弾の微調整は可能だが初弾のみに有効だ。一旦キーロフがジグザグ航行をはじめれば照準を合わせるのは不可能になる。
  19. シナリオの結末はこうだ。互角に終わる。ともに正確な照準を得られない。ズムワルトは目標に接近できず、キーロフはレーダー誘導兵装を運用できず、ともに決着を別の機会につけることになる。将来、新型長距離対艦ミサイルが導入されればズムワルトが有利になる。また155ミリ砲弾へ最終誘導を無人機が与えるのも有益だろう。
This first appeared in August 2016 and is being reposted due to reader interest.

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