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日本の防衛力の要となる人員を人口減高齢化社会の日本で確保するには思考の転換が必要だ

日本でも遅ればせながら無人装備の開発に拍車がかかってきたのは良い傾向でしょう。日本の防衛力維持にどれだけの人員が必要なのか。不足するなら技術でカバーできるのか。いや、やはり一定の人員数が必要なのか。いずれにせよ日本が今までとは違う社会になっているからこそ新しい思考、過去の延長線を断ち切れるたくましい思考が必要なのですが。

How to Make Japan's Military Great Againこの方法で日本の軍事力は再興する

Can the Self-Defense Forces’ (SDF) force level and structure sufficiently cope with the increased defense capability?自衛隊の戦力水準、構造は防衛力増強のニーズに応えられるのか
August 25, 2018  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: JapanSelf-Defense ForceChinaIndo-PacificU.S.-Japan Alliance
2017年12月15日、安倍晋三首相は共同通信編集者会議の席上でスピーチし、総選挙での勝利、アベノミクス、社会保障問題、北朝鮮、中国と多様な話題を取り上げた。その中で特に取り上げたのが防衛大綱(NDPG)の2018年内改訂で、日本の防衛装備調達を中期防(MTDP)として次の5年間に渡り定める内容となる。
スピーチで安倍首相が強調したのが改訂方針で「専守防衛を所与の条件としつつ国民の安全にとって真の意味で寄与する防衛能力を確認していきたい。既存装備をそのまま維持することはしない。日本を取り巻く安全保障環境の現実を重視する」とし、いよいよ今年は安全保障上で大きな変革の年になることを予感させた。
だが本質的な疑問はこの十年以上答えがないままでNDPG策定で解答が求められる。現在の自衛隊の戦力水準と構造で防衛能力の向上が十分可能だろうか。
2014年度防衛大綱、中期防での防衛力増強
現行の2014年版大綱では自衛隊の抑止力および即応力を数と質の両面で強調している。例として自衛隊は能力整備で海と空での優越性確保を重視しており、これを有効な抑止力ならびに即応体制の基本とし南西部における防衛力整備が含まれている。
この目標達成に向け2014年版NDPGおよびMTDPでは以下の主要対策を想定した。(A)駆逐艦を47隻体制(うちイージス駆逐艦6隻)から54隻(イージス駆逐艦8隻含む)に拡充 (B)潜水艦を16隻から22隻体制にする (C)戦闘機を260機から280機へ増強する (D)空輸飛行隊を1個飛行隊から3飛行隊へ増強する (E)水陸即応旅団1個の整備 を掲げていた。
2018年度執行が4月から始まったが現行MTDPで23あった調達項目のうち13で予算化され、駆逐艦5隻(うちイージス艦2隻)、潜水艦5隻、F-35A(23機)、水陸両用車両52台が対象だ。日本の防衛力整備は想定どおりに進んでおり、2018年版のNDPGとMTDPがこの12月に内容を更新する。
現在の自衛隊戦力構造はどうなっているのか
2017年3月31日時点で自衛隊の総人員は224,422名でうち6割が陸上自衛隊(GSDF)、19パーセントが海上自衛隊(MSDF)、また19パーセントが航空自衛隊(ASDF)、統合幕僚部(JSC)が2パーセントだった。充足率(実際の人数と必要人員数の比率)はGSDFが9割、MSDFで93パーセント、ASDFが92%、JSCが91パーセントで自衛隊全体としては91パーセントだった。各隊で人員不足とはいえ当面は十分と言える。では何が問題なのか。
深刻なのが一般隊員での不足がめだつことだ。MSDFの一般隊員には運用要員見習い、運用要員で構成されるが、幹部、上級隊員、一般隊員の各部門は2017年度で93-99パーセントの間だったが、一般隊員では69.5パーセントにとどまっていた。詳細は不明だが戦闘部隊での一般隊員が想定の7割程度になっていると想像できる。
自衛隊ではこの問題に長年に渡り対応策を模索してきた。これまでの防衛白書によれば充足比率は2008年から2017年の間に69から76パーセントの間を推移している。ただし艦船は100%の人員を確保してこそ所与の機能を発揮できることに留意する必要がある。
こうした状況で自衛隊は各隊を完全な形で機能する部隊にすべく考えられるすべての対策をとっている。2008年から海上自衛隊はソマリア沖海賊対策の国際協力に部隊派遣しており、現在も駆逐艦一隻が活動中だ。2011年5月19日の国会議事録によれば駆逐艦二隻を海外派遣するにあたってMSDFは各艦の人員充足率を最低でも9割とすると確約している。このため残る自衛艦で充足率が7割から8割に落ち込んでいる。つまり日本本土近くで活動する艦艇で人員が不足したままなので作業ロードが高くなっていることになる。
防衛力増強と隊員数の関係は
2015年以降にMSDFはいずも級ヘリコプター駆逐艦(乗員定数470名)二隻、あさひ級駆逐艦(同上230名)一隻、そうりゅう級潜水艦(同上65名)を就役させた。約1,430名の隊員が合計で必要だ。もちろん新規就役艦の裏には退役艦があることがわかる。ただ新規建造艦は大型化する傾向があり、いずも級が交代したしらね級ヘリコプター駆逐艦は乗員定数350名だったので単純に120名追加する必要がある。
今後就役する駆逐艦潜水艦はすでに予算手当がついていることに注意が必要だ。まや級イージス駆逐艦(350名)二隻、新型30DX水上艦(100名)二隻、そうりゅう級潜水艦(65名)3隻がある。これだけで995名が必要となる。
では海上自衛隊の隊員数は2014年から増えているのか。防衛白書を見るとそうではないとわかる。2014年度末の42,209名が2016年度末に42,136名に微増しているだけだ。そのため疑問は残ったままだ。海上自衛隊更に自衛隊全体は本当に機能できるのだろうか。
大幅な人口減がやってくる
2012年度を見ると自衛隊全体で平均毎年14千名が入隊し10千名が退官あるいは任期満了で去っている。このため毎年4千名が残り、自衛隊合計で224千名が227千名になった。ただし近年の経済回復傾向とあいまって出生率の低下傾向ならびに高学歴化のため自衛隊隊員募集の環境はきわめて厳しい。2017年度でいうと自衛隊は一般隊員として陸自に5,400名、海自1,100名、空自1,660名の募集目標を立てたがそれぞれ8割、6割、8割しか集めていない
更に大幅な人口減がやってくるのは確実であり、このため現在以上に隊員確保が困難になるのは避けられない。日本が超高齢社会に入っているとの指摘は出ており、人口減社会は現実のものだ。自衛隊入隊年齢の18歳から24歳人口のピークは1994年の17百万人だったが2016年度ではこれが6百万人35%減となった。2030年には適正年齢層は9百万人になりそうだ。
防衛省も各種対策を展開し、女性隊員の入隊を増やす(2016年度現在で6.1パーセント相当になった)ほか、今年10月より入隊可能年齢を延長する。だが日本には定年年齢の延長措置の検討が必要であり、元自衛官の再採用や女性隊員をさらに増やす必要もある。
今こそ自衛隊の人員構造を見直すべきだ
では将来の隊員不足に対応しつつ望ましい防衛力を自衛隊は確保できるのだろうか。スウェーデンがロシアの脅威に対応し徴兵制を復活させた。日本も同じ方法をとれないのか。答えは否である。理由は「憲法違反」だからだ。日本国憲法第18条では「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」とあり、現行政府の解釈では徴兵制は「服従の強制」とされている。安倍総理も2016年3月の国会でこの見解を認めた。
新技術はどうか。超高齢化社会、人口減少社会の日本では無人装備の研究開発が必要だ。防衛装備庁が防衛技術戦略構想を2016年8月発表しており、まさしくこの方向で今後20年間進むと示されている。今後の有望案件は無人水上艇(USV)と無人水中機(UUV)でそれぞれ一ヶ月以上連続投入可能という想定だ。このうちUUVは対艦ミサイルと魚雷を搭載する。米国も同様の研究をしており、日米共同体制のうえで大きな意味を持つことになるかもしれない。
こうした技術の開発は相当の長期間が必要だし簡単に運用可能に進めない。そのため今利用できる高性能兵器装備の調達が早道だろう。イージス・アショアを二箇所に導入する決定で日本本土全体をカバーできるとともに弾道ミサイル防衛運用での海上自衛隊の負担を軽減できる。イージス・アショアは陸上自衛隊が運用し、最初の施設は2023年に運用開始となる。
中国の海空軍事力の整備に直面する日本だが自衛隊員の数が現在も将来も不足する中で独自の海空防衛力増強が必要だ。新防衛大綱ではこの課題に取り組み解決策の提示が求められる。陸自6海自2空自2という現行の人員配置は1980年代中頃から変わっていないことが毎年の防衛白書からわかる。これを今変えるべきで、自衛隊員の比率変更こそ政策の柱とすべきだ。
各種報道によれば日本では陸海空の枠を超えた隊員勤務を検討しているという。現在、海上自衛隊には481箇所、航空自衛隊には392箇所の基地施設がありそれぞれの人員で警備保安をしている。これが検討中の新体制なら陸上自衛隊に海自、空自の基地を警備させ、その分で浮いた隊員が重要任務に割り当てられる。これはよいスタートとなり今後は各隊の枠を超えた運用が必須となろう。その例として陸上輸送、ISR、ミサイル防衛、サイバー、宇宙、電子戦がある。
インド太平洋を睨む米戦略への影響は
中国の軍事力拡大に同対応するかで米国では議論が盛んになっている。おもに3つの考え方がある。(1)米国の軍事力増強 (2)米軍のアジア撤退 (3)中国周辺国の軍事力増強 である。では日本が自衛隊隊員の再調整に成功するかがここで大きな意味を有する。仮に人口構造変化への対応に日本が失敗した場合、日本は防衛力増強ができない事態に直面し安全保障面で米国依存をさらに強める結果となるかもしれない。だが米軍にも独自のミスマッチ問題が人員数とふえるばかりの需要の間にあり、インド太平洋地区では事故が複数発生している。日本が自衛隊隊員構成の調整に失敗した場合に米国はどう対応すべきだろうか。新防衛大綱は12月に発表され、米国の政策決定層が注視するのは確実だ。
Dr. Aki Nakai is an adjunct faculty in the Pardee School of Global Studies at Boston University and the Political Science Program at Lesley University. His research interests lie in the intersection of international security and politics of the Indo-Pacific region.
Image: Wikipedia

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