我々が知らない間に新たな歴史が作られていたようです。無人機に無人機をさしむけることから、次は無人機が有人機を狩る時代が来るでしょう。現在は遠隔操縦機ですがそのうちに自律運用の完全ロボット機が出現するのでは。
Heat-Seeking Missile-Armed MQ-9 Reaper Shot Down Target Drone During Exercise MQ-9リーパーがミサイルで無人機標的の撃墜に成功
The late 2017 drill was another step toward giving the unmanned aircraft their own air-to-air capabilities. 2017年末実施の演習は無人機の空対空性能が新たな一歩を刻んだ
BY JOSEPH TREVITHICKSEPTEMBER 19, 2018
米空軍関係者からMQ-9リーパー無人機が空対空戦演習で初の撃墜記録を達成したと明らかにした。ほぼ一年前の出来事だ。空軍は無人機に空中の脅威に対応させる案を検討中と先に述べていた。
Military.comがジュリアン・チーター大佐(432飛行隊司令、ネヴァダ州クリーチ空軍基地駐留)への取材でこれを真っ先に伝えていた。War Zoneでもタイラー・ロゴウェイが同じ概略を2018年3月に伝えていたが、空軍ライフサイクル管理センター(オハイオ州ライト・パターソン空軍基地内)がジェネラルアトミックスにMQ-9にリーパー空対空ミサイル (RAAM) 搭載能力を付与する契約交付を発表した時点のことだった。
チーター大佐は「機密解除されたが2017年11月に空対空ミサイルを標的に発射し直撃した」とMilitary.comに語り、「MQ-9が熱追尾指揮空対空ミサイルを試験発射し、無人機に直撃した」と述べていた。
チーター大佐は演習名を明らかにしておらず標的機の機種、リーパーが発射した兵器名も不明だ。「熱追尾式空対空ミサイル」がAIM-9Xサイドワインダーだった可能性が高い。MQ-9の通常の搭載装備は精密誘導空対地ミサイルや爆弾、燃料タンクやセンサーポッドだ。
USN
AIM-9Xサイドワインダー空対空ミサイルを搭載した MQ-9
2016年11月に米海軍のジェイムズ・ストーンマン大佐(空対空ミサイル開発事業室)が公表したのが上の写真でMQ-9がAIM-9Xを搭載しているのがわかる。サイドワインダー開発は海軍が中心となっている。
報道によれば空軍は空対空装備の追加をリーパーに2003年の時点で検討していた。当時の空軍は今は退役したMQ-1プレデターに熱追尾式スティンガーミサイルを搭載しイラク軍ジェット機からの防御を狙っていた。
「戦術を作り、技術や手順を整備して機体残存を目指し、正しく整備すれば通常機材でも生き残りが可能となります」とチーターはMilitary.comに説明している。「世界各地でハイブリッド戦の様相を示しており...MQ-9リーパーが大きな役割を期待されています。そこで同機に正しい装備を与えれば残存性を十分期待できます」
USAF
米空軍MQ-9リーパーがAGM-114ヘルファイア空対地ミサイルや燃料タンクを搭載している
スティンガー搭載のプレデターとAIM-9X搭載のリーパーを比較すれば性能の違いは歴然だ。このサイドワインダーは相当の威力があり、特に最新ブロックII仕様ではデータリンクを使い発射後のロックオン機能が実現した。
リーパーが搭載するLink 16データリンクと組み合わせればサードパーティ製の標的情報を遠隔操縦にあたる地上パイロットに送り、ミサイルにも送れる。無人機クルーの状況把握能力が高まり、空対空戦では裸眼で認識できる距離を超えた範囲に対応できる装備になる。
さらにレーダー波受信警告機ほかのセンサー類で接近する脅威を探知し、感知回避技術で付近を飛行するその他機体を見つけることも可能で無人機パイロットの大きな助けとなり敵探知と交戦が円滑になる。AIM-9Xは地上や水上目標との交戦は限定されるが、低空を飛ぶ巡航ミサイルへの対応も限定付きながら実現するといわれる。そうなればMQ-9で多様な任務をこなせるようになるかもしれない。
USN
米海軍ジェイムズ・ストーンマン大佐が2016年に使ったスライドではAIM-9X搭載の各種機体で可能な交戦形態が示されていた。
もちろんこれでリーパーが高度の脅威空域で安全に運用できるようになるわけではない。だが低リスク空域なら運用可能で突然現れる脅威にも対応しながらミッションを実施できるのではないか。こうした状況をハイブリッド環境あるいは「グレイゾーン」と呼ぶ。
シリアでこの状況が生まれるのではとの見解は前からあり、現にロシア軍用機が偵察飛行中のリーパーにつきまとう事態が発生している。ロシア機が米有人機にシリア各地でいやがらせしていることもあり、このままでは誤解から危険な状況に繋がりかねない。
イランもペルシア湾上空の国際空域で米無人機の妨害を目指しており、空軍は有人機を随行させざるを得なくなっている。イランは自国無人機の運用を拡大しており空中あるいは海上の米軍を脅かしている。
リーパーにAIM-9Xを搭載すれば敵勢力への抑止効果が生まれる。攻撃側は無人機から反撃されるとなればこれまでのやり方を変更せざるを得なくなる。
リーパーがAIM-9Xを搭載すれば敵有人機や無人機で米国あるいは同盟国を遠隔地で脅かす存在を撃破できる。2017年に米空軍のF-15Eストライクイーグルが別々の機械でイラン軍無人機を撃墜したが、無人機は米軍ほかの拠点を攻撃してきた。空対空ミサイル搭載のMQ-9をこうした拠点上空に待機させ短距離防空任務につかせるのだ。
将来特にハイエンド戦でロシアや中国を想定した戦いでリーパーが作戦中に突如として脅威空域に突入する場合も発生するはずだ。空軍にはMQ-9を戦闘空域に迅速展開する構想があり各機の自衛能力の確保にも迫られれている。
「大陸をまたがって運用することも可能」とチーター大佐はMilitary.comに語っている。「最近も9機をある作戦空域から別の空域に移動させ機動性を発揮しています。柔軟でもあり、現地司令官に選択の幅が生まれます」
AIM-9Xをリーパーの武装に加えることでその柔軟性が更に広がり無人機でも十分に機動力が発揮できること、高リスク空域でも同様だと証明できるはずだ。■
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