スキップしてメイン コンテンツに移動

★もし戦わば(11)F-15対Su-35



元原稿が昨年のため、F-15C/Dの早期退役案はまだ発表されていなかったのです。サイレントイーグルもイスラエルが採用するのかはっきりしていません。日本もまだイーグルを使いまわす必要があり延命対策が必要ですね。

The National Interest

Air War: What If Russia's Lethal Su-35 Battled America's F-15?

March 29, 2017


  1. 米F-15イーグルとロシアから新登場の第四世代機の進化形Su-35S「フランカーE」の比較を尋ねられたことがある。
  2. 前者は第四世代機を定義した機体で、1970年代の登場以来大幅改修で時代に適合してきた。また今後も数百機が第一線に残るはずだ。
  3. 後者はソ連時代に登場したF-15相当のSu-27フランカーを改修し近代的なエイビオニクスや武装を搭載し、推力偏向エンジンを搭載し、レーダー吸収塗装を施している。
  4. Su-35Sについては以前も詳しく伝えており、National Interestのディヴ・マジュンダーも両機対決の場合を想定した記事を寄稿していた。その結論は両機ほぼ互角になるというものだった。技術面で差がないと優劣を決するのは支援体制やパイロット技量になる。
  5. そこで今回は両機の強みと弱みを詳述し各種ミッションで想定してみたい。
センサーとステルス性能
  1. Su-35Sには強力なイルビスEパッシブ電子スキャンアレイレーダーがあり、400キロまで有効だ。地上目標にも使える。ただしF-15搭載のAPG-63 V3アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)レーダーは優秀で妨害に強く、高解像度で追尾されにくい。
  2. Su-35には赤外線探知追尾装備(IRST)があり50キロ以内の敵機の大まかな位置をつかめる。ただしステルス機相手では有効半径は縮まる。F-15にIRSTはない。
  3. ただし新型追加ポッドの供用が始まっている。タロンHATEでIRST能力がF-15に追加され、僚機や地上センサーとのデータ融合を実現し、F-22ラプターともネットワークでつながる。F-22が使うデータリンクが通常形式と違うためだ。これでラプターを先頭に飛ばし敵目標を識別しミサイルを搭載したF-15に標的情報を送り、F-15は安全な地点からミサイルを発射する。
  4. F-15はステルス性能はなく、レーダー断面積は5平方メートルだ。Su-35はステルスを意識し、レーダー断面積は1ないし3平方メートルといわれる。そうなるとSu-35がレーダーに現れるのに時間がかかりそうだが、レーダー断面積が1平方メートルでも高性能レーダーなら相当の距離で探知できるし、長距離ミサイルの目標から逃れることはできない。
視界外戦闘の場合
  1. 最新の空対空ミサイルは100キロ超から発射できる。米空軍は視界外(BVR) 戦闘が21世紀の空戦の行方を決めると確信し遠距離ミサイル発射を目指している。ロシアはこの構想に懐疑的で電子対抗措置や回避行動で50から70パーセントとされる命中率を下げることは可能と考えている。ロシアもBVR戦を想定しているがBVRの撃ち合いのあとは短距離戦になると見ている。
  2. 兵装搭載面ではSu-35はハードポイントが12点以上あり、F-15Cがミサイル8発しか搭載出来ないのより優れている。Su-35はこの利点を活かし種類の違うミサイルを搭載し命中率を上げるだろう。ただしこの利点は短期間に終わりそうだ。ボーイングのF-15改修案ではミサイル搭載量16発と一気に倍増させる。後方を飛ぶF-15は「ミサイル艇」となりF-22が提供する標的情報を活用する。ただし当面はF-15のミサイル搭載量は少ないままだ。
  3. F-15、Su-35ともに長距離レーダー誘導方式空対空ミサイルを運用する。AIM-120D(射程160キロ)とK-77M(同200キロ)だ。両ミサイルは基本的に同じ種類だが、シーカー性能は不明だ。最大射程未満で発射し撃墜をめざすだろう。
  4. Su-35には超長距離(300から400キロ)のR-37Mミサイルもあり、米給油機やAWACSのような支援機材を排除するのが目的だろう。
  5. Su-35にはもう一つ有利な点がある。L175Mキビニ・レーダー妨害装置だ。米AESAレーダーはジャミングに強いと言われるが、AIM-120の搭載レーダーは別だ。キビニで防御された機体に空対空ミサイルは命中がむずかしくなる。これに対してイーグルの戦術電子戦セット対抗措置は1970年代製でイーグル2040C改修パッケージでは新装備が提案されている。
視界範囲内戦闘ではどうか
  1. イーグルの機体制御は俊敏で、これだけの重戦闘機が急旋回したり上昇中の加速が優れているのは設計の優秀さを示している。高推力重量比と翼面荷重が低いことの恩恵だ。
  2. これに対しSu-35は別格の存在だ。推力偏向型ターボファンエンジン双発でエンジンノズルを別々に動かし急旋回や高い迎え角を維持できる。(つまり機首を機体の飛行方向とは違う方向に向けられる)これは普通の機体では実現できない。Su-35は低速ドッグファイトならF-15を翻弄できるはずだ。
  3. 兵装面ではF-15とSu-35はそれぞれのAIM-9X、R-73ミサイルで優劣が付けにくい。両ミサイルとも敵が機首方向にいなくてもヘルメット搭載画像により照準外発射ができる。命中率はともに70から80パーセントといわれる。
  4. こうした短距離空対空ミサイルの威力は機体が敵機方向を向いていなくても発射できることで機体操縦性の利点が将来の近接交戦では消えることにつながる。
対地攻撃はどうか
  1. Su-35Sは17千ポンドの弾薬類を搭載し、対地攻撃には14点のハードポイントを使える。
  2. F-15Cの場合はゼロだ。純粋な航空優勢戦闘機だからだ。(正確にいうと対地攻撃用への改修は不可能ではない。イスラエルが改修を行い、イラク原子炉を攻撃した)
  3. F-15Eストライクイーグルなら23千ポンドの兵装を搭載できる。ストライクイーグルはF-15C並の速度で空対空兵装を搭載するが視界内交戦では機体重量が大きいことから操縦性敏捷性は落ちる。
  4. ロシア軍は精密誘導兵器は米軍ほど多用していない。また種類も限られている。ただしSu-35はイルビスEレーダーを地上攻撃モードに切り替えてうまく運用できる。
保守整備性
  1. 米国は高価格機体を長期間供用する傾向がある。ソ連からロシアには逆に低価格機体を調達し短期間供用しながら整備を重点的に行う傾向がある。Su-30フランカー初期型では信頼性が大きな問題だった。
  2. Su-35はこの差を縮めそうだ。6千飛行時間の供用に耐える設計となっている。F-15CおよびEでは8千、16千時間になっている。C型は寿命延長改修を受けるだろう。ただし、Su-35はすべて生産直後だがF-15は1970年代80年代の製造だ。
次世代F-15
  1. ボーイングはステルス版のF-15をサイレントイーグルとして売りこみ中でイスラエルが導入しそうだ。さらに同社はF-15Cの改修パッケージをイーグル2040Cとして提案しており、2040年代まで同機の供用を続けるとする。
  2. ではサイレントイーグルやイーグル2040Cで現行F-15の弱点を克服できるだろうか。
  3. まずSu-35の操縦性での利点は揺るがないだろう。サイレントイーグルはレーダー断面積が前方では0.1平方メートルになりSu-35の十分の一だと喧伝している。ただし後方および側面はステルス性がない。正面対決の場合にステルス性能がものをいうだろう。
  4. イーグル2040CパッケージにはIRSTとF-22とのデータリンク性能がタロンHATEポッドを介して実現し、電子対抗装置を搭載しミサイル運用を倍増する。
結語
  1. 将来の航空戦闘能力を決定するのはミサイルと電子対抗措置の能力であり、機体性能ではない。これはとくに非ステルス機の場合にあてはまる。
  2. それでもSu-35がドッグファイターとして最優秀機の座につき、対空対地双方でミサイル運用能力の高さを誇示する。AESAレーダーがなくてもだ。
  3. 現行のF-15各型も航空優勢戦闘機として十分な性能のある機体として残る。F-15Eは十分な対地攻撃兵装を搭載できる。性能向上型F-15は空対空装備の搭載量が売りでデータ融合も他にない機能になる。サイレントイーグルは前面だけとは言えステルス性能を実現する。Su-35Sは100機未満しかなく、ロシア、中国、マレーシア、アルジェリアで供用されるが、今後発注が増える可能性はある。米空軍のF-15Eは200機以上あり、F-15CおよびD型もやや少ない機数だが今後も供用される。さらに400機超がサウジアラビア、イスラエル、韓国、シンガポール、日本の各国空軍部隊で活躍中である。■

Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
This first appeared in the Summer of 2016 and is being reposted due to reader interest.



コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...