投稿したロビン・レアードは著名な軍事安全保障アナリストです。表題だけ見るとまた米装備を各国に買わせるつもりかと誤解してしまいましたが、本家の米国が40年だ、60年だと機材を使いまわしている間に各国の装備が更新され、米国より高い性能を実現しているので米国も利用したいというお話ですね。その背後に米国内の諸制度が時代にそぐわなくなっているという指摘です。時代の変化についていけないのであれば新しい思考を取り入れるべきでしょう。
F-35 とタイフーン
Allies Can Help US Lower Weapons Costs, Build New Force 同盟諸国が米防衛装備費用の低下、新しい軍組織の構築に役立つ
By ROBBIN LAIRD on April 26, 2017 at 3:17 PM
- 15年間を対ゲリラ戦に費やしてきた米国と同盟国は再び大国との対決と言う課題に軸足を移しつつある。
- その一貫で米国と同盟国が中核装備を共通化する意義を再確認する必要が生まれている。
- F-35、P-8、トライトン、グラウラーを米国以外に全部導入する同盟国があり筆頭がオーストラリアだ。
- 米F-35AがRAFレイクンヒース基地に向かうのを見た我々は同基地からわずか30マイルも離れていないRAFマーハム基地を失念しているが英軍初のF-35飛行隊がここに編成される。2つの基地が共通機種を運用することで米国は大きなシナジー効果を今後期待できる。
- オーストラリアが運用するウェッジテイル指揮統制機、KC-30給油機はともに米軍にはない機材だ。
- 主要同盟国がCONOPS作戦行動構想を米国より進んだ形で構築している。皮肉にもその動きを米防衛産業が製造した装備で現実化している。英、豪両国に第五世代機への移行に反対を唱える向きはないのに、米国には過去に縛られた考え方をする向きが多く議論の決着が付かない有様である。
- これまでのように戦略方針や新装備をまず整備するのが米国で、その後に同盟国に売り込めばよいという問題ではない。いまや米国は同盟国とともに変革を進めながら戦略を組み直すべき段階に入っている。
- 米国の問題は旧来の国防装備調達のしくみが生む障壁や文化の壁、政治の壁なのだ。
- オーストラリア空軍所属のウェッジテイルが21世紀の選択肢として有効性を実証しているのに、米国はAWACS近代化改装を目指している。世界でエアバスA330MRTT給油機を導入する国がオーストラリア、サウジアラビア、UAE、英国、シンガポール、フランスと増えているのに米空軍には新型給油機が皆無という状況だ。
- 同盟国が保有する新型装備を米国も利用し、新時代にふさわしい作戦構想を形作ることが米国の死活問題だ。だが米国の調達制度と長年しみついた発想による性能要求制度で可能性を自ら狭めているのが現状だ。どうしてこうなったのか。
- オーストラリア訪問で筆者はウィリアムズ財団のセミナーに参加し、統合共同作戦部隊を一から作る方法の議論に参加した。
- AWACS近代化改修を2030年までに実現しようとし、スーパーホーネット対F-35の比較議論に花が咲き、40年前のA-10対戦車攻撃機を温存しようとする国では大胆な軍事変革は困難だ。
- セミナーが終わりこの課題を退役空軍司令官ジョフ・ブラウンにぶつけてみた。「抜本的な変革の必要があることはわかっています。だがこれまでのやりかたが大木のように太陽を隠して正確な狙いがつけにくくなっています」
- ブラウンにはAWACS改修構想は「驚くべき話に聞こえる。AWACSをウェッジテイルに置き換えれば燃料費節約分だけで数年間で元がとれるのに」「しかし米国のやり方では旧型機運用を続けるのと退役させることの交換条件がなかなか成立しません。新型機を投入して戦力化を短期間で実現できません。新装備には維持管理でも新発想が必要なんです」
- ブラウンに米国式調達・維持管理方式で一番耳の痛い点をつかれた。「F-35にはこれまでと大幅に違う維持管理方法が必要なのに議会が政府補給処の維持を求めており、産業界と政府の共同歩調に大きな成約が横たわっているのです」
- トランプ政権は軍再構築をめざすが、「500億600億ドルを追加投入しても米軍が直面する兵站面の不足を解消できないでしょう。米軍が今後弱体化するのではと不安で仕方がない。追加予算が手に入れば従来型構造の軍を運用できるのにと願望するだけでは何も解決しない。現在の予算問題や議会の干渉がつづけば米軍は空洞化していくでしょう」とブランは述べた。
- ブラウンの見るところ、C-17の運用支援モデル例は新しい兵站活動の取り組みであり、新発想を広げる好機だという。「全米で活気を取り戻す動きがある。米国は世界で一番革新的な国のはずだ」
- 「そのひとつがC-17運用支援モデルです。運用面で画期的な産業界の協力を得ることで支援経費は下がり、上がることはありません。この方式を今後導入すべきではないですか」
- 「今の関心はP-8とF-35です。米国式の支援方式と議会からの要求で政府直営の補給処を保護する動きになっていることで軍の活動に足かせとなっており、今後の即応体制にも悪影響が広くでそうだ」
- では制度を刷新するため何をすべきだろうか。「新装備に投資をしながら、優先度を高くし、一方で意味のない事業は廃棄するのです」とブラウンは述べる。「イラク、アフガニスタンでの支出は半分で済んだはずです。同等の戦力を有する国相手には役に立たない装備ですからね」
- 他の同盟国にもブラウンの論点は理解できる。レッドフラッグ17-1に参加したRAF高官は「ウェッジテイルがあればAWACSはいらない。AWACSは足手まといだ。ウェッジテイルは第五世代部隊の支援にぴったりだ」とまで述べている。
- オーストラリア給油機は現行の米空軍給油機との比較で稼働率や性能面で高い実績を示している。
- ミッチェル研究所の所長デイヴィッド・デプチュラは空軍を中将で退役しており、ブラウンの言い分は正しいという。「戦闘の様相を一変するほどの手段が揃っているので、過去のしがらみにとらわれない新しい方法を適用すべきなのです」
- 米軍事力を再び偉大にする道は皮肉にも最先端装備を有する同盟諸国との相互交流にあるのかもしれない。■を
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