なるほど民間の宇宙利用がいかに軍事利用に依存しているかを伺い知らされるお話ですね。スペースXはNASA技術陣が多数入社していますが、これだけの構想を現実に移したのはマスクの存在のおかげでしょう。マスクは本当に世界を変える存在になってきましたね。
SpaceX reuses Falcon 9 rocket, but long road ahead for military adoption スペースXの再利用可能ファルコン9ロケットの軍事転用はまだ先の話か
WASHINGTON — 民間企業スペースXが3月30日に歴史を作った。ファルコン9ロケットの再利用に成功し、打ち上げ済みロケットを宇宙に再度送れると実証した。
- スペースXの国家安全保障関連ペイロードは2018年のGPSIII衛星打ち上げまで予定がないが今回の打ち上げで国防総省にも従来より安価な宇宙ミッション実施の可能性が開けてきた。ただし専門家は軍事宇宙で普通に使うまで数年から十年程度かかると見ている。
- ファルコン9はNASAケネディ宇宙センターから東部標準時間6:27 p.m.に打ち上げられ、第一段第二段切り離しに成功し、打ち上げ9分後にスペースXは同社所有の自律運用無人船「Of Course I Still Love You」上に着艦回収したとツイッターで発表した。
- 「Forecast International」の航空宇宙アナリスト、ビル・オストローヴだ。「国防総省は自分たちの打ち上げ業務には非常に慎重です」と3月31日に「Defense News」に語っている。「打ち上げは非常に高額なのでひとつの衛星に機能をたくさん詰め込み打ち上げ効果を最大にしてきました。それで打ち上げ信頼性をいかに高めるかに関心が集まり、自然に打ち上げ単価が高額になったのです」
- スペースXは今後も再利用可能ロケットのテストを続けるが、ペンタゴンは当面静観するようだ、とブライアン・ウィーデン「Space World」財団の事業企画部長は語る。
- 軍が再利用可能ロケットを当面採用しなくても、国防総省は民間部門での利用から財務効果を期待できる立場だ。スペースX創設者イーロン・マスクは現在一回62百万ドルのファルコン9打ち上げ費用は相当下がると見ており、ロケットが民間機並にに何回も利用できれば「100分の一」になるという。
- 「スペースXがどこまで料金を下げるつもりなのか見えてきません」とオストローヴは言う。「論理的にみれば、打ち上げ機を10回15回使用すれば総費用をそれだけ全体に薄める効果が期待できます。現在は使い捨てで利用企業が全額を払っていますが、今後は利用者負担が下がります」(ウィーデン)
- この方式では国防総省が一回目打ち上げ費用を負担し、民間各社は次回以降の打ち上げを利用することになる。
- だがウィーデンの指摘ではスペースXの軍事打ち上げ費用は民間向けより相当高くなる。国防総省の求める監理業務で費用が余分にかかり、システムのチェックも追加されるためだ。
- 「スペースXは今回のGPS衛星のように今後も空軍入札に加わるでしょう。理論上は今後の費用は下がっていくはずです。ただそこで節約できても大きな影響にならないのでは。つまりDoDが今と同じ追加要求をすれば節約効果を打ち消してしまいます」(ウィーデン)
- さらにファルコン9打ち上げ機は大型かつ重量級の軍事ペイロード多数に対応できない、という。「ファルコンヘヴィーが登場するまでスペースXは最大級の国家安全保障関連ペイロードの打ち上げはできません。実現は相当先で、その再利用可能性も先の話です」
- 空軍が機能を絞った小型衛星に切替えれば話は別だ。衛星の残存性をめぐりこの方向の議論があるのは事実で、同時に打ち上げ失敗のリスクから予算リスクも減ることになる。
- だが今後の方向性は不明とウィーデンは付け加える。ファルコン9は国家安全保障用に認証済みだが、ペンタゴンに再利用可能打ち上げシステムの有効性証明の前例はない。「現時点では国防総省がどこまでの利用を考えているのかわかりませんし、ゼロから認証するのか追加型として扱うのか不明です。後者なら工程は短縮されるでしょうね」
- 再利用の可能性を模索しているのはスペースX以外にもあるが、同社が一番進んでいるのは確かだ。ブルーオリジンは衛星軌道打ち上げ機を「New Glenn」の名称で開発中で第一段を再利用可能とする点でファルコン9と同じだ。ロッキード・マーティンとボーイングの共同事業体ユナイテッドローンチアライアンスはヴァルカンの第一段エンジンを再利用可能にする企画を温めている。ただし初回打ち上げは2019年で同機能の実用化はさらに先になる。■
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