スキップしてメイン コンテンツに移動

2021年の米海兵隊 大規模構造改革の一歩を踏み出す。西太平洋作戦を重視し中国に照準を合わせる。

 

シンクタンクCSISのシリーズものをご紹介。今回は海兵隊編で、筆者も元海兵隊大佐であり、内部情報をかなり反映しているようです。気になるのは沖縄関連で辺野古移転は実現困難と悲観的評価なのは海兵隊内部の意見を反映しているのでしょうか。戦車全廃や高性能火砲の話題は前からお伝えしておりましたが、海兵隊廃止の議論もある中で、組織存続をかけ、新しい海兵隊像の実現に懸命な姿がうかがえますね。

 

要約)米海兵隊が大規模構造改革を開始する。これは大国同士の対決に備え、これまで二十年にわたった対戦闘員対策からの決別を意味する。部隊や人員の削減で浮いた予算を新規装備品調達にまわす。ただし、外部には構造改革では海兵隊の想定があまりにも狭すぎると懸念を示す向きもある。

  • バーガー大将の新指針は海兵隊を二十年にわたる地上戦から再び海軍につながるルーツに戻し、太平洋での超大国間戦を想定した装備を整備し、不要な装備部隊を整理することにある。
  • そのため海兵隊現役部隊は総勢172千名とイラク、アフガニスタン作戦以前の水準に戻す.
  • ひきつづき高ペース展開されている中、装備近代化も課題だ.
  • 歩兵三個大隊、戦車全数、一部対テロ作戦能力を廃止し、火砲部隊も大部分をミサイル部隊に転換する
  • UAVは増勢となるが、海兵隊のUAV整備は空軍にはるかに及ばず、苦しい状況にある。
  • 揚陸部隊には小型揚陸艦(LAWs)を多数導入し、分散戦力とするが、海兵隊は敵防衛陣の内部に残り作戦展開する「スタンドイン」をめざす。LAWsの規模ではグローバル展開は期待できず、揚陸能力は劣化していく。
  • 再整備には西太平洋に重点を置きすぎ、他地域の紛争を無視している、未実証の作戦構想を重視しすぎとの批判が出ている。

2021年度予算は海兵隊にとって大規模構造改革に向かう途中経過に過ぎない。改革で対テロ活動や陸上作戦の長期支援などは切り捨てて海兵隊全体で新たな戦力整備を進める。構造改革は2021年度から全面実施となり、2022年度さらに5か年整備計画に進む。

 

2021年度の海兵隊兵力は現役部隊で2,100名の削減となる。海兵隊が進める構造改革の中でまず出現する大きな変化だ。

 

海兵隊予備役は38,500名でここ数年変化がない。ただ、隊員の採用、再任務は容易ではない。他方で予備役を大規模に維持するねらいがあり、縮小の話は出ていない。バーガー大将は将来にわたり変化がありうると示している。「予備役部隊を正規部隊に統合する可能性を模索しており、他にも選択肢がある」というが、答えは出ていない。

海兵隊内の文官は微増となる。国防総省(DoD)でも同じ傾向で、即応体制の向上をめざし、支援部門で文官を代わりに登用していることがあり、第一線部隊が縮小となっても文官規模は減らない。

そんなに前ではないが海兵隊で現役部隊を194千名まで増勢する話が出たことがあるが、予算環境のため実現しなかった。

 

2021年度予算の動向をみると2020年度より微減となっている。ただし、バーガー大将は昨年に「部隊構成の変化を犠牲にしても装備近代化予算がもう少し手に入るのであれば躊躇なく選択する」と述べていた。同大将の改革案では現役部隊を「12千名程度」削減して、想定する新装備品を調達することとしていた。つまり海兵現役部隊を172千名にする案が2022年度予算に盛り込まれそうだ。

 

ただし、そのレベルでもイラク、アフガニスタン戦へ投入された当時の172,600名体制と大差はない。

 

2013年のマッケンジーグループ(座長のケネス・F・マッケンジー中将にちなむ。なお、マッケンジー大将は現在CENTCOM司令官)は海兵隊の主要任務は前方配備により危機対応にあたることとし、現地配備が長引き各面でストレスが生まれていると指摘。この背景に10年にわたり高頻度で部隊が展開しているOPTEMPOが念頭にあった。

 

いずれにせよ議論は終わっている。バーガー大将はOPTEMPOの高さも個人レベルのストレスについても言及していない。2016年以前では司令官各自が配備の連続でストレスが高まっていると発言していた。

 

新戦力構造

 

バーガー大将が海兵隊総監に就任するや、方針ガイドとして以下の四点を発表した。①海兵隊の海軍とのルーツを再認識し、イラク、アフガニスタンの地上展開と一線を画すこと。②超大国間戦闘とくに太平洋での作戦に適した部隊構成、装備品の整備に向かうこと。③新構想にふさわしくない旧式装備を整理すること。④各自の戦闘能力を高く維持すること。各内容は国家防衛戦略(NDS)に合致しており、海兵隊が以前公表した遠征前線基地作戦構想や敵優勢環境での沿海域作戦Littoral Operations in a Contested Environmentにも通じる。こうした海兵隊構想では分散作戦形態への移行ならびに海兵隊による制海任務を沿岸配備の航空機や火力で実現するとあり、単なる沿岸部兵力投射と一線を画している。

 

20203月に海兵隊は2030年を想定した変革内容を公表した。以下そこから将来の姿を見てみよう。

 

海軍にも構造改革の提言があるが、海兵隊では、「追加投資は必要ない」とバーガー大将は発言している。つまり構造改革で現有部隊の多くを廃止し浮いた予算で新装備品を調達する考え方だ。実施は10年間かかると想定し、戦車部隊の全廃など即実施に移す内容もなる。公表された構想やバーガー大将の発言から改革は時間をかけて継続実施し試行しつつ演習で効果を試すとある。

 

改革案では現役部隊による海兵遠征部隊(MEFs)三個体制は維持するとある。二個部隊は米本国(カリフォーニア、ノースカロライナ)にあり、第三部隊はハワイ、沖縄、日本本土に展開している。MEF各部隊はほぼ同じ編制になっているが、第三部隊はやや規模が小さく海外配備であることが理由だ。ただし、2030年構想では各MEFは特色を持たせ、均等な兵力ではなくなるとある。

 

構造改革案では予備役による師団補助チームを維持するとあり、ニューオーリンズに司令部をおき、米本土各地に分散させる。海兵隊予備役は陸軍の州軍部隊に近く現役部隊をモデルとしている。

 

バーガー大将の指針や改革案ではサイバーや特殊作戦の言及はごくわずかで海兵隊の新体制でどう扱うのかとの疑問が出ている。ただし、サイバーや特殊作戦を充実させれば本来の海兵隊の戦力が犠牲になる。

 

構造改革すべてを実施すれば海兵隊の風土そのものに影響が生まれる。これまでは歩兵部隊こそ海兵隊の中心だった。しかし構造改革で海兵隊は長距離火力を砲兵隊、航空部隊の展開で勝利を収める構想だ。歩兵隊の役割は防御が主となり、長距離攻撃手段の防衛が任務となる。

 

地上部隊

 

海兵隊地上部隊の変化について海兵隊は実証がまだ終わっていないと強調する。補給部隊や予備役も巻き込んだ改革案はまとまっていない。

 

歩兵部隊:三個大隊の削減が大きい。報道資料では残る各大隊は「機動性」を充実させ「機動隊に近くなる」と表現している。つまり迫撃砲や対戦車ミサイルといった重装備を廃止する。他方で2030年の海兵隊像で「将来の作戦環境を適切に評価しているとは言い難い。とくにわが方の歩兵大隊の構成についてこれがあてはまる」とバーガー大将は述べており、さらに試行を続け歩兵大隊の構成そのものは今後変わる可能性がある。

 

歩兵大隊の削減で支援装備も廃止でき、航空部門、補給支援部門、火力支援部門で予算を浮かせ、これで新装備品を調達する考え方だ。

 

歩兵部隊は長く海兵隊の中心であり、このまま実行されれば兵力構成の大変化になる。現役三個師団に合計27個の歩兵大隊が完全装備で配属されている。ただし歩兵大隊の規模は縮小されており、1980年代中ごろまで1,050名体制だったが、今後は725名程度になる。このため海兵隊地上戦力は1980年代の28,350名が15,200名となり、47パーセント縮小となる。

 

火力支援:砲兵部門は改革後も規模で大きな変化はないが内容は劇的に変わる。一部部隊にはHIMARSが導入され、長距離誘導、非誘導ミサイルを発射可能となる。また戦術トマホーク対艦ミサイル運用が可能となる部隊も現れる。誘導兵器を扱うため砲兵部隊は地上目標あるいは艦船を遠距離から攻撃可能となる。ただし、歩兵部隊の火力支援は行わない。地上で接近戦は想定しないということではなく、長距離海上攻撃を主眼に置くことを意味する。

.

戦車部隊:これが最大の変化だ。戦車は海兵隊にとって第二次大戦時から一貫して装備の一部だったが、砲兵隊の変化と並び海兵隊にとって一大転換点となる。将来の海兵隊部隊はこれまでと異なり地上戦に参加しない。

 

架橋中隊:三個中隊あるが、島しょ部の戦闘では役目がなくなる。

 

法執行大隊:対テロ作戦には三個部隊を活用できるが、太平洋の海上作戦では出番がない。海兵隊がこの機能を放棄することは西太平洋シナリオに集中し、今後は対テロ作戦には加わらないことを意味する。

 

航空部隊の姿と課題

 

ティルトローター機:改革案では三個飛行隊を廃止する。歩兵部隊支援が任務のため、歩兵部隊縮小に呼応する。残る部隊にはストレスが生まれそうだ。MV-22が多用されているためだ。海兵隊はMV-22360機導入済みだが削減対象の機材の次の用途は不明だ。おそらく、訓練基地に配備される、あるいは損耗用に保管されるのではないか。

 

回転翼機(軽攻撃):海兵隊の軽攻撃ヘリコプターはAH-1Zで敵の装甲部隊、歩兵部隊に大きな威力を発揮する。ヘリコプターも制海任務に投入可能だが、長距離スタンドオフ兵器の運用ができず、敵に接近する必要がある。海兵隊では上記機種の導入を完了しており、当面は保管され将来の使用に備えるのだろう。攻撃ヘリ部隊の縮小により米陸軍が進める将来型攻撃偵察航空機事業に海兵隊が参加するか疑問となる。

 

回転翼機(大型):削減理由として歩兵部隊削減で重量物運搬の機会も減ることがあり、大型ヘリコプターの出番が減る。ただし、バーガー大将は大型ヘリコプターの運用維持費用の高さも考慮しているはずで、CH-53K調達で生産がはじまったばかりだが規模は三分の一削減となる。

 

固定翼戦闘攻撃機材 F-3545機程度削減となり、構造改革報告書ではパイロット不足を理由に挙げている。ただし、総監指針では高価な有人固定翼機をUAVに置き換えてもよいとあるが、まだ方針にはなっていない。「F-35の性能要求が将来どうなるか見えていない」とし、F-35削減は議会内に強力な推進派があるため物議を呼ぶだろう。実際に同機の調達は毎年予算で追加手当がされている。

 

C-130輸送機:同機の増備は各地に同機の分散運用への必要を裏付けているといえる。C-130は不整地飛行場にも着陸可能なので前線展開中の部隊への補給にも投入できる。増備は貨物輸送ミッションを視野に入れており、海兵隊所属機が減る中で給油ミッションは想定していない。

 

UAV各種:海兵隊は空軍、陸軍のUAV配備から大きく後れをとっており、有人機のF-35等の導入に注力してきた結果といえる。詳しくは以下を参照されたい。

海兵隊の航空機各種はここ数年で増加している。回転翼機部門はMV-22UH/AH-1の調達が中心で結果として機材は新型機が多くなっている。機材整備はCH-53K事業で完結する。固定翼機部門ではF-35導入が中心のため、調達費用の負担が大きくなっているが、海兵隊航空部門は極めて良好な状態にあり、空軍と対照的だ。

 

海兵隊2030年構想の航空部門への影響はまだ不明だ。回転翼、ティルトローター、固定翼戦闘攻撃機が削減されるものの、UAVC-130は増やす。支援対象の部隊が縮小されるため、機材数も同様に縮小されるはずだ。

 

UAVs導入の遅れ

 

UAV導入が遅れている

海兵隊は1980年代にはUAV導入の先陣を切っていたが、今やその他軍に大きく後れをとっている。バーガー大将はこれを打破し、「海兵隊はこれまでより幅広い無人装備の開発に進む」と述べている。

 

海兵隊はMQ-9リーパーをつなぎ装備として導入する検討をしていた。2020年度に二機、2021年度に3機導入する予定だったが今は中止している。かわって海兵隊独自に開発する大型UAV(名称MUX)の完成を待っている。これは艦載運用を想定したものであるが、事業は要求内容が多岐すぎてとん挫し、再構築中である。海兵隊は2023年度にファミリー構成の装備品として配備開始を期待するが、まだ解決策は出ていない。

 

完ぺきな製品(MUX)をめざすあまり、良品(MQ-9)を無視していいのかだろうか。

海兵隊のRQ-21ブラックジャックの今後は不明だ。四個飛行隊に配備完了しており、開発期間中は困難な課題に直面したが運用機材数を21機にまで減らす予定だ。連隊あるいはMEU単位に配備し、陸上あるいはL級艦船での運用を狙う。偵察監視任務に投入し、攻撃機能はない。

 

ただし2030年構想ではMQ-21の今後が明確でないことがわかる。「現有のUAS機材に艦船での運用能力、陸上での運用を可能とし、情報収集とともに攻撃能力も付与する必要がある」とのくだりがある。

 

海兵隊では小型UAV各種(RQ-11-12-20)を戦術偵察用に供用しており、目標照準用にも使っているが、各種能力を小規模部隊の作戦にも提供する実証を熱心に進めている。ただし、いずれも攻撃機能は有していない。

 

海兵隊も海軍同様に有人機に注力し、陸軍、空軍のUAV供用からはるかに遅れている。バーガー大将はこれまでの方向を変えたいと考えているが、MUX事業は悲惨な状況にあり、有人機中心の組織内価値観の長年の積み重ねに直面している格好だ。

 

海兵隊2030年構想への対応

 

今回提案の構造改革案には支持疑念双方の反応が出ている。支持派は中国を主要な脅威ととらえる向きで国防の中心を中国への対応に向けるべきと考えている。新技術や新しい作戦構想を支持する層でもある。

 

これに対し疑念を感じる向きは次の五点に集約できる。

  • 中国を主眼にとらえるあまり、その他地域での武力衝突の可能性を軽視している。第二次大戦終結後の米国は地域内衝突に多数対応してきたが大国相手の戦闘は皆無だ。そのためジェイムズ・ウェブ前上院議員で前海軍長官にして元海兵隊隊員は中国への焦点の当て方が狭すぎると批判する。「戦闘の歴史から学ぶものがあるとすれば想定したような戦闘は実際とは大きく異なることがある、ということだろう。構造改革では世界規模での即応体制が永久に失われてしまう。これまで一世紀にわたり海兵隊の存続意義がそこにあったのだ」と述べている。
  • 新戦術は実証が住んでおらず、改革案では中国との戦闘を想定し、海兵隊部隊が中国の防衛バブル内に展開する想定なのだろう。その構想通りには進展しないだろう。兵站機能もたえず移動することになるし、敵火力が孤立した海兵隊拠点を次々に粉砕するのではないか。
  • 作戦構想を一種類想定すると実際には別の構想の成功につながる。そのため海兵隊が中国相手に西太平洋で島しょ戦を想定すれば、他の場所での体制が犠牲になる。これは朝鮮半島や中東を想定する。米陸軍が1960年代にソ連とドイツ平野で対決を想定したが、そのため東南アジアのジャングルでゲリラとの戦いに支障をきたした。
  • 中国やロシアを相手の武力衝突はグレイゾーンでの戦いになる公算が高く、真っ向勝負の可能性は低い。新規戦力構想はこの場合に対応できる内容ではない。対ゲリラ戦対応を縮小し、ハイエンド戦想定の訓練に切り替えるためだ。
  • 実戦に近接火力支援が欠かせない。構造改革案では長距離精密火砲に重点を置いているが、近接火力支援として戦車や火砲が不要になるわけではない。

海兵隊航空地上任務部隊

 

海兵隊は任務部隊を臨機応変に編成することを自ら誇りとしてきた。既存部隊を臨時編成で目的に応じ投入することだ。海兵隊には任務部隊の編制テンプレートがあり、これを海兵航空地上任務部隊Marine Air-Ground Task Forces (MAGTFs)と呼んでいる。標準編成には四つの要素がある。指揮命令機能、地上戦闘機能、航空機能、補給機能だ。このうち最大の規模が海兵遠征部隊(46-90千名規模)は海兵師団、航空団をもとに編成する。中規模が海兵遠征旅団(4-16千名規模)で歩兵連隊と航空集団が核となる。最少が海兵遠征部隊(MEU2,200名)で歩兵大隊と混成飛行隊で編成している。

 

今回は二つの任務部隊が注目を集めている。特殊用途MAGTFs(SP-MAGTFs)と沿海部戦闘連隊だ。

 

SP-MAGTFs:新規構想ではないがSP-MAGTF部隊は海兵隊内で別の機能を有している。これまで海兵隊で最小の展開規模がMEUだったが、迅速対応かつ常時展開をAFRICOMCENTCOMで、SOUTHCOMでは定期的な展開を行っている。海兵隊はこうした陸上配備得任務部隊を編成し、MEUを下回る規模としている。それにより機敏な対応とともに展開が容易となる。

 

海兵隊はSP-MAGTF各部隊の任務内容と人員配置を再検討しているようで、展開中のMEUなど通常編成の部隊に特定の任務を果たせないか検討している。これが可能なら新たな特設部隊を編成する負担が軽減される。

 

Marine Littoral Regiment (MLR): これは新種の部隊で対地、対艦攻撃を展開しながら敵(例中国)の防衛圏内で残存可能とする。構想では第二次大戦時の海兵防衛大隊を参考にしている。これは前方基地の防衛を任務とした部隊で海上あるいは航空攻撃に対応していた。海兵隊ではハワイ駐留部隊で構想を試行している。MLRは当面戦闘チーム、防空大隊、補給部隊で構成するとあるが、正確な構成や人員数は不明だ。

 

もう一つ不明なのはMLRが常設部隊なのか、任務に特化した部隊なのかで、MLRはむしろ特化したMEUに見える。ただし、MLRMEUでは特徴が異なるのだが。

 

グアム、太平洋での部隊展開

 

オーストラリアは朗報だが、沖縄/グアム/日本ではよくないニュースだ。

沖縄/グアム/日本海兵隊は沖縄の地元負担を軽減すべく引き続き努力している。グアムへの部隊移転に加え日本本土やハワイも移転先となる。現行案では2027年までに沖縄駐留開閉部隊は半減され11,500名体制になる。

 

日本政府はグアムの施設構築の大部分を負担しており、建設工事は順調に進んでいるが、日程は数度にわたり先送りされている。9月に新設基地はキャンプ・ブラズと現地出身の海兵将官の名前にちなんで命名された。グアムへ恒久移動する海兵隊員は1.300名のみで、3700名は順番でグアムに移動する。当初は全員がグアムに恒久的に駐屯する構想であった。

 

普天間基地の代替施設建設事業では住民の少ない沖縄北部のキャンプシュワブ近郊が選ばれ、建設工事が続いているものの、困難に遭遇しており、完工時期が先送りされ、建設費は上昇し続けている。完工は期待できない感がある。

 

こうした基地移転構想の動向に注意が必要だ。戦略的な意味もあるが、実施を強行すると現地の政局に問題が発生し、域内緊張が高まり、大規模な建設工事が次々に必要となるのは不可避だ。

 

オーストラリア: 沖縄、グアムで予定が遅れ問題が深刻になっているが、対照的にオーストラリアのダーウィンへの巡回派遣は10年目に入り、問題なく半年の期間で1.200名が毎年派遣されている。巡回配備はオーストラリア米国ともに政権交代があったが影響を受けず続けられており、定着の観がある。ただし、欠点は今後何らかの紛争が発生した場合に、現場へかけつけようとしても遠距離であることで、オーストラリアから南シナ海までは2.500マイル移動する必要がある。

 

揚陸艦艇、代替手段、グローバル展開

揚陸艦艇:海軍に関する解説で揚陸艦艇部門でハイエンド艦が減少し、ヘリコプター空母(LHAs/LHDs)が最大6隻「軽空母」に改装され「スーパー空母」(CVNs)を補完する存在になると述べた。「海軍はLPDのフライトI、フライトIIを削減する。かわりに揚陸部隊には軽揚陸艦(LAWs)28隻ないし30隻追加する。LAW一隻で海兵隊員75名を運搬するが、こうした艦は現行装備より相当小さいため、今後の海兵隊の揚陸作戦の訓練や編成で変化が生まれる。また従来の揚陸艦艇と異なり航行距離が短く、A地点からB地点への移動が主眼となり、長期間配備は想定していない。

 

グローバル展開:グローバル規模の展開回数は増えるが、対応可能な艦艇数が逆に減る。新規揚陸部隊の規模では現行MEU7個体制(日本x1、米本土西海岸x3、東海岸x3)への対応は不可能となり、長期前方配備へも対応できなくなる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

US Military Forces in FY 2021: Marine Corps

November 16, 2020

 

Mark Cancian (Colonel, USMCR, ret.) is a senior adviser with the International Security Program at the Center for Strategic and International Studies in Washington, D.C.

This report is made possible by general support to CSIS. No direct sponsorship contributed to this report.

This report is produced by the Center for Strategic and International Studies (CSIS), a private, tax-exempt institution focusing on international public policy issues. Its research is nonpartisan and nonproprietary. CSIS does not take specific policy positions. Accordingly, all views, positions, and conclusions expressed in this publication should be understood to be solely those of the author(s).

© 2020 by the Center for Strategic and International Studies. All rights reserved.

Please consult the PDF for references.

コメント

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...